ウルトラマラソン

ウルトラマラソンの練習・トレーニング方法まとめ

2020年5月23日

この記事ではウルトラマラソンの練習方法についてご紹介します。

ウルトラマラソン(フルマラソン以上)といっても範囲が広いのですが、今回の内容は100km~250kmまで対応できるであろう、長い距離を走り続けるためのベーシックな内容になっています。

走力によって練習量やスピードは変わってくると思いますが、基本的なメニューの組み方や考え方はどのステージにある方でもある程度参考になるかと思います。

ウルトラマラソンの完走や記録向上のためにぜひお役立てください。

100km完走に必要なフルマラソンの記録は?

まずはざっくりと100kmマラソンを完走するための走力の目安を把握しましょう。
それにはフルマラソンの記録がとても参考になります。

ウルトラマラソンは大会によってコースの難易度や制限時間に違いがあります。
よって、「フルマラソンのタイムで○○を達成したら完走できる」というほど単純ではありません。
しかし、挑戦するにあたってある程度の参考値があった方が便利かと思いますのでデータをご紹介します。

私が以前実施した調査によると
100kmのタイム÷フルマラソンのタイム=3.25
くらいが平均値のようです。
*月間走行距離200~400kmくらいが対象
*比較的平坦で走りやすいコースでの値

よって、例えば制限時間が14時間の大会なら
14時間÷3.25=4:18
でフルマラソンを走れるくらいが完走の目安となります。

ペース配分や補給が成功して上手く走れれば、これより遅いタイムの人でも完走は可能です。

アンケートの性質上、3.25は走りやすい大会での平均に近いと思われますので、起伏の多い・暑い大会などはさらに高い走力があった方が良いと考えられます

このときのアンケートの記事↓

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ざっくりとまとめるとフルマラソンが
サブ4.5くらい→サロマ湖などの平坦で走りやすいコースの大会に挑戦
サブ4くらい→概ねすべての大会に挑戦
という感覚でしょうか。

練習量と練習期間の目安

完走を目指す場合、上記フルマラソンの記録に近い走力があれば、3か月くらいの練習期間があれば100kmマラソンにも対応できると思います

練習量としては月間の走行距離が200km以上が感覚的な目安です。
個人的には300km走れれば完走がぐっと近づく印象があります
(3か月で200→250→300kmのように段階的に増やして、最後の1か月くらいで300kmを消化できれば良いかと)

もちろん目標や練習の質によるので一概に何キロ走れば良いとは言い切れません。
(完走は可能でタイムを求める段階になると、質の重要性が増してくるでしょう)

ただ、初心者に近い方や完走が目標であれば、まずはしっかり量を意識するのがベターかと思います
(量をこなして頭打ちしたら練習の質を変えるタイミングです。
トレーニングは変化が重要。)

ウルトラマラソンに求められる身体的な要素

長く失速なく走り続けるために特に重要な能力は次の3つです。
(各能力は以下で紹介するおすすめ練習で高めることができます)

  • 体脂肪をスピーディにエネルギーに変換する能力(脂肪活用能力)
  • 筋持久力
  • リラックスしていてかつ故障リスクの少ないランニングフォーム

なぜ体脂肪で走る能力が必要か

走り続けるということは筋肉が収縮するエネルギーを作り続けるということでもあります。
ウルトラマラソンは膨大なエネルギーを消費しますので、いかにゴールまでエネルギーが枯渇しないようにするのかが重要なポイントとなります

人が走るときのエネルギー源は主に2つにわけられます。
「筋グリコーゲン」と「体脂肪」です。

*筋グリコーゲン:筋肉中に蓄えられた主に炭水化物由来のエネルギー源

このうち筋グリコーゲンの方は貯蔵量が少なく、フルマラソンですら枯渇してしまう量しかありません。
よくいわれる30kmの壁の原因の1つはこの筋グリコーゲンが枯渇してエネルギーを作りにくくなっているからと考えられています。

一方で体脂肪は100kmはおろか200km以上のウルトラマラソンでも走れるほど貯蔵されている人がほとんどです。

よって、体脂肪を使って走れる体作りができれば、筋グリコーゲンを温存でき、より長い距離を失速なく走ることが可能となります

おすすめのウルトラ対策トレーニング

ロング走

ウルトラマラソンの基本はやはり長い時間体を動かす練習です。
ロング走は筋持久力を高め、脂肪活用能力も向上させるベーシックなトレーニングです。

何キロ以上からが「ロング」と感じるかは人それぞれです。
ゆっくり長く走ることを意識して、脚が重くなってきたなと疲労感を感じるくらいまで走ればロング走と考えましょう。

一応の距離の目安としては26~40kmくらいでしょうか。
月に2~4回くらいの頻度で取り入れると良いでしょう。

ダメージが大きくなりすぎて練習全体のリズムを崩さないようには注意しましょう。

大会までに1,2回は実践練習として本番を想定したかなり長めのロング走を入れるのも役立ちます
かなり長めという距離も人それぞれですが、50~70kmくらいが目安かと思います。

この実践的な超ロング走は疲れがたまりますので、大会まで3週間未満には実施しない方が良いでしょう。

空腹ランニング

エネルギーが少ない状態で、エネルギー補給もしないで走ることで、体脂肪を活用する能力が高まると考えられます。

例えば平日の朝練として朝食前に30~90分ジョギングなどは取り入れやすいと思います。
空腹で走ることに慣れてきたら休日に朝食抜きでそのまま90~150分くらいジョギングなども良いでしょう(適応に2~3か月はかかるかもしれません)。

普段から糖質の摂取量が多く、エネルギー源として糖質に依存している方はこの練習は最初はかなりキツイと思います。
ゆっくりのペースで、無理のない距離で地道に継続して体を慣らすようにしましょう。

普段の食事で糖質の量を減らしたり、砂糖や加工食品を減らすのも役立ちます。

ちなみに私は糖質制限をしているので、60kmくらいでも空腹ランニングで楽に走ることができます。
下の動画は私の空腹ランニングの様子を動画にしたものです。

起伏走

起伏のあるコースを走れば平地とは違う刺激を体に与えることができます。
特に筋力・筋持久力が効果的に高まると思われます。

ウルトラマラソンは起伏の多いコースもたくさんありますので、大会によっては起伏を走る練習をしておいた方が耐性がついて良いでしょう。

ペースは練習の目的にもよりますが、ウルトラ対策の起伏走なら息がゼエハアするほど追い込まずに軽く息が弾むくらいのペースで長めに走ることを心がけると良いでしょう。

目安は90~150分くらいでしょうか。

環境的に近くに起伏のあるコースがある方はぜひ意識的に起伏も走るようにしてみてください。
頻度は月2~4回程度で良いでしょう。

休日にロング走(平地)と起伏走を隔週で交互にやるのなどおすすめです。

スピード練習

ウルトラマラソンは基本はゆっくり長く練習が大事ですが、目標やその人の状態によってはスピード練習を取り入れた方が効果的になる場合があります
というのも、先述のデータでもありましたが100kmタイムの予測値はフルマラソン×3.25くらいでした(走りやすい大会で)。

つまり、フルマラソンが速い方がウルトラも速くなる関係が強いのです。
フルマラソンを速くするのにもスピード練習は役立ちますので、ウルトラでもスピード練習は効果があるでしょう。

スピード練習の優先度が低いのは持久力がまだ目標距離に対してかなり低いときです。
大会の半分以上が歩きになってしまうような段階の方ならロング走などで持久力を優先的に高めた方が良いと思います

スピード練習の内容としては30~40分をキツめのペースで走る練習(このブログではT練習と呼んでいます)がおすすめです

T練習のやり方

T練習は30~40分を全力ではないけどキツイと感じるペースで走る練習です。

感覚的には

  • 走り始めの10分くらいでは「キツいけど、まだ快適なキツさ」
  • 20分経過くらいから「キツい。ただ、限界ギリギリではないやりがいあるキツさ」

というイメージ。

タイムトライアルのように限界に挑む練習ではありません。
「本気で頑張ればあと5~10分くらいは継続できる」という感覚で終わるようにしましょう。

スピード練習の頻度は週1~2回が目安です。

3か月のトレーニング期間の場合、最初の1か月はなくても良いかもしれません。
2か月目以降に徐々にスピードの比率を高めるイメージです(2か月目は週1回、3か月目は週1.5回など)。

セット練習

強度の高いポイント練習を2日連続で行うことをセット練習と呼んだりします。
2日連続にすることで体への刺激を高めることができます。

セット練習は1日の練習では負荷が足りないような走力の高いランナーにおすすめです

ロング走を2日連続(30~40km×2とか)あたりは100kmにおすすめです。

200km級の場合はさらに長く50~70km×2なども良いでしょう。

ただし、負荷が高いので故障には注意して、セット練習後は栄養補給や筋肉をほぐすこと(マッサージとか)を意識しましょう。

リラックスしてきれいなフォームを意識

上記の練習を組み合わせることでウルトラに重要な筋持久力と脂肪活用能力は高まっていきます。

ランニングフォームについても長い距離の練習をリラックスして楽に走り切ろうとすることで徐々に上手くなります。
(本格的な改善は専門知識が必要なので、今回は割愛します)

普段からリラックスして走ることを意識して、あまりにも疲れて集中力を欠いた走りで悪い動きを学習しないようにだけ注意しましょう

練習メニューのサンプル

上記のメニューを組み合わせた1週間の練習の例をいくつかのバリエーションで紹介します(土日休みケース)。
練習量やペースは人それぞれなので、ご自身の感覚で調整してください。

良い練習なら適度な充実感と「なんとなく上手くいっている感覚」が得られると思います。
ご自身の体と心の状態をチェックしつつアレンジしてください。

パターン1
平日を空腹ランニングで脂肪燃焼アップ。
休日にロング走や起伏走で持久力もアップ。

空腹ラン 空腹ラン 空腹ラン ロング走
(起伏走)
ジョグ
60分 60分 60分 150分
(90~120分)
90分

パターン2
平日忙しめのとき、週末セット練で負荷アップ

空腹ラン 空腹ラン 空腹ラン ロング走
(起伏走)
ロング走
30分 30分 30分 120分
(90~120分)
120分

パターン3
スピード練習を入れた場合

T練習 ジョグ 空腹ラン ロング走 空腹ラン
40分 30分 60分 120分 90分

上記ベースに実践練習を1,2回

例えば上記の表のメニューをベースに適宜量を自分にあわせて調整してみてください。

ロング走の項目で述べましたが、大会までに1,2回は本番を想定したかなり長めのロング走(実践練習)があると良いでしょう。
忘れないように計画の段階でカレンダーに予定を入れましょう。

実践練習はダメージが大きいので、そのあと3~5日くらいは練習量をおさえるなど、ご自身の体調変化にとくに注意しましょう。

まとめ

  • ウルトラマラソンに必要な筋力・持久力はロング走、空腹ランニング、起伏走、セット練習で鍛える
  • 完走からタイムを狙う段階や、走り込みだけでは伸び悩んだらスピード練習(例えばT練習)も取り入れる
  • 普段のランニングから「ウルトラのレースを走っているような気持ち」でリラックスしたフォームを意識する
  • レース前に実践的なかなり長いロング走(50~70km)をする
  • ウルトラの練習はダメージが大きいので睡眠、栄養、ケアも大事にして継続していけるように。自分の心身の状態をよく把握しましょう。

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