ウルトラマラソン

フルマラソンとウルトラマラソンのタイムの関係【調査結果】

2016年10月4日

フルマラソンとウルトラマラソンのタイムの関係

先日実施した100kmマラソンの難易度アンケートではフルマラソンのベストタイムと100kmマラソンのベストタイムについても回答していただきました。
今回はその結果をまとめます。

まず最初に持久係数という値を次のように定義します。

持久係数=100kmマラソンのタイム÷フルマラソンのタイム

この持久係数が小さいほど、フルのタイムに対して100kmが早く、ウルトラマラソンが得意ということになります。
この持久係数の目安や練習量などとの関連を分析することで、100kmの記録向上にどのようなアプローチが有効なのかを考えてみるというのが今回の記事の狙いです。
(実際の応用では100kmのタイムがコースによって変わるということに注意してください。
今回のデータではフルも100kmも「3年以内のベスト記録」を使っています。
よって、回答者の100kmのベスト記録が出た比較的走りやすい大会での持久係数と捉えた方が良いでしょう。)

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図1:フル記録と持久係数の関係

図1はフルの記録(横軸)と持久係数(縦軸)の関係を表した散布図です。
一般的な大会の制限時間が14時間とすると、フルが3時間半で持久係数が4以上の人やフルが4時間で持久係数が3.5以上の人は完走できません。
今回の回答にリタイア者のデータは含まれないので、必然的にグラフの右上のゾーン(制限時間オーバー)にはプロットが入らないことになります。
*以下の分析ではこのような回答者の偏りの影響を小さくするためにフルの記録が3時間半以下のデータに絞り込みます

図1で面白いポイントは(フルの記録が3時間半以内の範囲では)、フルの記録が良いほど持久係数が小さい傾向にあるということです。
サブスリー群の持久係数の平均値=3.131 (30名)
3~3.5時間群の持久係数の平均値=3.228 (38名)
フルの記録との関係は後で練習量とのクロス集計も合わせてより詳細に見ていきます。

次に持久係数の男女差も計算してみました。
男性の持久係数平均値=3.185 (61名)
女性の持久係数平均値=3.191 (7名)
女性の方が持久係数が小さい(ウルトラに向いている)と考えていましたが、ここでは大きな違いは見られませんでした。

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図2:練習量と持久係数の関係

次に月間走行距離と持久係数の関係を見てみます(図2)。

まず3~3.5時間群について。
走れば走るほど持久係数が小さくはなっていますが、300km以降はその変化は私が想定していたより小さめでした。
仮にフル3.5時間の人が300kmから500kmに練習量を増やして持久係数が3.188から3.154に改善されたとして7分9秒のタイム短縮。
もちろん、7分の短縮だって大きいし、この走り込みによってフルの記録が向上してもっと速くなる可能性はありますが、持久係数の改善がこれくらいであると考えて、練習によってフルも速くなっている感覚があるかはチェックした方が良いかもしれません。
この結果が出てしまっては今後は友人を超長距離のLSDに付き合わせるのが難しくなりそうです。

次に、サブスリー群について。
こちらも走行距離が増えると持久係数が小さくなる傾向があります。
(400kmはサンプル数が少ない中、1名非常に高い人がいて高めの値になっています)
そして、3~3.5時間群と違い、300km以降も距離を伸ばすと持久係数が小さくなるようです(小さくなる幅も大きい!)。
サンプル数が少なかったり、サブスリーというくくり自体が大きすぎるという批判もあると思いますが、私の個人的な感覚としてもフルをサブスリーで走れる走力をもった人の方が月間500,600kmと距離を伸ばす意義は大きいような気がします(その練習量が効果的となりうるための力が足りている)。

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図3:フルと持久係数によるランナーの分類

以上のことを整理して100km記録向上へのアプローチについて考えてみます。
まずランナーの状況を分類してみます(図3)。
図3の横軸はフルの記録、縦軸は持久係数です。

右上の赤の破線は制限時間14時間の線です。
完走を目指す人はなんとかしてこの曲線の左側に来れるように頑張りましょう。
感覚的にはフルマラソンを4時間くらいで走れることが14時間制限の大会の目安でしょうか。
「サブフォーしたらウルトラにしつこく誘われるようになった」という被害報告も耳にしますし。

下のオレンジ色の直線は持久係数2.7のラインです。
多分このあたりが持久係数の最小値でしょう。
ここに達してしまったらフルの記録を向上させないと100kmも記録更新は難しいと思います。
(2.7を大きく下回る人は伸び盛りでフルと100kmのベスト時期がずれているのではないかと思います)

サブスリーゾーンにある青の破線3つは下から順に以下の値を表しています。(統計的には四分位数という)
サブスリー群の中で持久係数が下から25%の人の値=2.898
サブスリー群の中で持久係数が下から50%の人の値=3.073
サブスリー群の中で持久係数が下から75%の人の値=3.166

同様に3~3.5時間のゾーンにある緑の破線3つは下から順に以下の値を表しています。
3~3.5時間群の中で持久係数が下から25%の人の値=3.014
3~3.5時間群の中で持久係数が下から50%の人の値=3.168
3~3.5時間群の中で持久係数が下から75%の人の値=3.353

この四分位数を参考に自分の持久係数が相対的にどこに位置するかを知り、スピードと持久力のどちらの方向の伸びしろを開拓していくか検討すると良いでしょう。
多分下から75%の値より持久係数が大きい人は補給を工夫したり、経験を積むことでもっと伸びるのではないかという気がします。
また、前述しましたが、3~3.5時間群の人はむやみに走行距離を増やすよりも、フルの記録向上と関連するような練習をする方が持久係数も改善されて効果的な可能性があるということも留意しておきましょう。
逆にでサブスリー以上の走りができる人は走行距離によって持久係数を改善できる余地がありそうでしたね。

今回のデータから示唆された「フルマラソンが速くなると持久係数も改善される」という仮説が正しいとしたら、それはどのような理由によるものなのでしょうか?
サブスリーができるということが効率性の高い走りができていることを意味するから?
ゴール時間が早いのでエネルギー補給が少なくてすむから?
よく分かりませんが、フルが速くなることは単純にスピードが速くなる以上の効果があるのかなという気が今のところはしています。

次回に続くかも。

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