この記事ではウルトラマラソンの補給方法についてまとめます。
ウルトラマラソンはレース中の補給が上手にできるか否かで結果が大きく左右されます。
練習の成果を100%発揮できるようにぜひこの記事をお役立てください。
この記事では100kmマラソンをベースに考えていますが、24時間走や250km級のレースでも基本は変わりません。
一番大切なのは優先順位が高い「糖質・水分・電解質」をきちんと摂取すること
あれもこれも摂取しなきゃという不安を乗り越えること
ウルトラマラソンの補給で以前の私がしていた最も大きな失敗は
「あれもこれも摂取をしないと不安になり、重要な栄養素をおろそかにしてしまっていたこと」
でした。
スポーツショップにいくとアミノ酸、クエン酸、色とりどりのジェル...と多くの商品が並んでいます。
それぞれの商品に「マラソン完走に必須!」なんてポップに書かれていると、どれも必要そうな気がしてきました。
そして、成分の働き方や使うべきタイミングもあまり考えず、「サプリをケチって本番で失敗したくない」という気持ちで多くの商品を使っていました。
しかし、ウルトラマラソン経験者の多くが語るように、レースの後半などでは内臓も疲れてきて、サプリやエイドの食事をするのも大変です。
その結果、あまり重要でないサプリを飲むために、本当は重要なエネルギー補給などがおろそかになり、苦しい走りになってしまうこともありました。
長時間走りながら食べ物を消化吸収するのは体にとって大変な負担です。
ウルトラの補給で大事なのは優先順位をきちんとつけて、大事でないものは摂取しないという勇気を持つことだと思います。
糖質・水分・電解質。それで100点満点中の80点は確保できる
では何が優先順位の高い栄養素なのか?
それは、糖質、水分、電解質の3つだと私は考えています。
▼優先順位の高い栄養素
- 糖質(ジェルやおにぎりなどの炭水化物の多い食品に含まれる。糖質+食物繊維=炭水化物)
- 水分
- 電解質(塩分補給のようなもの。厳密にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リンなどの汗に溶けている成分のことをまとめて電解質といいます)
これは過去に実施したセミナーで経験豊富なウルトラランナー達が語った声を集計することから判断しました。
例えば、アミノ酸なら効果を感じる人もいれば感じない人もいます。
しかし、エネルギー補給無しや水分補給無しで走り続けられる人はいません。
補給しないとほぼ必ず欠乏症状が出て、それもリタイアや大幅なペースダウンにつながる要素。
それが糖質・水分・電解質の3つです。
まずはこの3つをきちんと摂取して、余力があれば下記で紹介するプラスαの成分を使うことをお勧めします。
糖質補給の方法
糖質が不足するとどんな問題が生じるか
糖質が不足するといわゆる
・ガス欠(筋肉中のエネルギーが枯渇した状態)
・低血糖(血液中の糖質が減った状態)
に陥ります。
ガス欠は脚が重くて体が思うように動かせない状態(「脚が売り切れた」という感覚)。
低血糖は「集中力が切れる」「空腹感」「不安感(「完走できないかも...」というような思いが湧いてくる)」などに通じます。
補給量の目安。多くの人が糖質不足で苦しい思いをしている。
レース中に摂取したい糖質の量は下記の条件によって変わってきます。
・レースの距離
・体重(体の重い人ほどエネルギーが必要)
・脂肪活用能力(エネルギー源として糖質への依存度が少なく、体脂肪を使って走れる能力が高いほど糖質補給は少なくて済む)
多少変動はありますが、簡単のためにザックリと目安を紹介すると下記の表が1つの目安となります。
体重[kg] | 糖質摂取量[g] |
50kg | 27g |
60kg | 33g |
70kg | 39g |
80kg | 45g |
(表の糖質摂取量は5kmごとの摂取量の目安です)
ちなみに糖質の量は
・バナナ1本 22g
・ジェル(アスリチューン)26g
・スポーツドリンク1杯 5g
くらいです。
なので、体重60kgくらいのランナーの方の場合
「5kmごとにジェル1本+スポーツドリンク」
で糖質の収支としてトントンになるくらいと考えられます。
この量は多くのランナーにとって
「そんなに食べないといけないの?」
と驚かれる量です。
実は多くのランナーが糖質の補給不足で苦しい走りを強いられていることが推測されます。
ちなみに、上記の目安は理論的な計算から導いています。
計算過程も詳しく知りたい方はこちらの動画をご覧ください。
自分がストレスなく「食べやすい」「食べたい」と思えるものを摂取する
糖質補給の量の目安がわかったろところで、次に「具体的に何を食べれば良いか?」を考えましょう。
私がウルトラマラソンにおける補給食で大切だと思うのは
「内臓疲労のあるようなレース後半でも食べること自体にストレスが少なく、食べる楽しみを感じられるような食品(ジェルもOK)を選ぶこと」
です。
ウルトラマラソンあるあるの一つに「準備の段階では食べられると思って用意したものが、実際のレース中では全く食べる気が湧いてこず使えなかった」というものがあります。
どれだけ栄養成分が優れた食品でも食べられなければ意味がありません。
私は何度も24時間走の日本人トップ選手の補給食を見てきましたが、人それぞれ食べているものは違います。
ジェルだけの人、逆にジェルはダメで普通の食品が多い人、お菓子だらけの人など。
その多様性を見ていると「糖質補給の正解はコレ」という絶対の補給食はなく、自分がストレス下でも「食べられる」ものを選ぶのが大切なのかなと思います。
また、好物は精神的なリフレッシュ効果があります。
疲れは精神面からくるところも大きいので、好きなものを食べるというリフレッシュ効果は過小評価できません。
ウルトラは食べ続けること自体が難しい。胃腸障害の対策方法。
糖質をしっかり補給するのが大事と頭でわかっていても、実際には吐き気や内臓疲労で食べられないという悩みを抱えるランナーが多いようです。
しっかり食べてレースの最後まで力強い走りができるようになるための胃腸障害対策はこちらの記事で紹介しています。
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水分・電解質の補給の方法
汗で喪失したものを補給するイメージで
次に水分と電解質の補給について考えましょう。
基本となる考えは「走っている最中に体から消費されてしまった分を補給すること」です。
水分と電解質は主に汗、尿によって体外に排出されていきます。
汗や尿で喪失してしまった分の水分や電解質を補給するイメージでいきましょう。
喪失量が多いと脱水や低ナトリウム血症に
水分や電解質の補給が不十分だと
・脱水
・低ナトリウム血症
のトラブルになりやすいです。
▼脱水の症状
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
- 筋肉痛
- 集中力の低下
- 体温や脈の上昇
▼低ナトリウム血症の症状
- 運動能力の障害
- 手足のむくみ
- めまい
- 嘔気、嘔吐
- 頭痛
- 意識が遠のく
- 怒りっぽくなる、混乱する
- けいれん
- 尿が出なくなる
- 眠気
水分補給はこまめに少し早めに摂取する
私は水分補給は
「こまめに」
「のどが渇くより前に少し早めに」
を意識して行うようにしています。
ただし、後者については「飲みすぎのリスクがあるので、のどが渇いてから飲んだ方が良い」という説もあります。
私はどちらかというと「喪失が多くて不足してしまうリスクの方が避けたい」という考えから早めの摂取を意識しています。
飲む量は汗の量に応じてなので、気温やペースで臨機応変にしています。
過去に同じような環境で走ったとき、どれくらいの量を飲んだら調子が良かったかが参考になります。
電解質の補給には経口補水パウダーがおすすめ
私は電解質の補給は経口補水パウダーを使っています。
・エブリサポート
・経口補水パウダーダブルエイド
の2つがおすすめです。
これらのサプリは
・携帯性が高く
・十分な量が入っており
・塩分以外にもカリウムやマグネシウムなど大事な電解質がまとめてとれる
というところが良いですね。
給水ポイントで水やスポーツドリンクと一緒に摂取するようにしています。
下記の動画で使用上の注意点なども紹介していますので興味のある方はご参照ください。
おすすめのプラスαの成分
最後に糖質・水分・電解質以外で私が利用しているおすすめの成分をご紹介します。
ビタミン・水素
ビタミンは
- 糖質や体脂肪を分解してエネルギーを作り出す
- 神経や筋肉などの正常な機能をサポートする
という働きがあります。
レース中は喪失量が多いにも関わらず、エイドの食事などではほぼ摂取できないのでサプリを使っています。
また水素は運動で発生する活性酸素(疲労の原因の1つと考えられている物質)を除去する働きが知られています。
ビタミン・水素が入ったCatalyst Recoveryを3時間毎に3粒ずつを目安に摂取するのがおすすめです。
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Catalyst Recovery
「昔と比べて練習後の疲労がとれにくくなってきた」と感じたことはありませんか? 本商品は水素に加えて、エネルギー産生、組織修復、免疫などに重要なビタミン類を含有。「リカバリーを早くしたい」「いつまでも元気にスポーツをしたい」という方におすすめ。
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ガラナ抽出物
ガラナはその栄養価の高さからスーパーフードとして注目されている食品です。
そのガラナの栄養成分をギュッと濃縮したのがガラナ抽出物です。
▼ウルトラに役立つガラナの成分
- ガラニン(ガラナ由来のカフェイン)
ガラナに含まれるカフェインはガラニンとよばれ、ゆっくり吸収され長く効果が持続するといわれています。
長時間レースのマラソンにピッタリです。 - テオブロミン
血管を拡張させて血流量を上げる働きがあると言われています。
ランニング中は血液を通じて酸素や栄養をスピーディに運ぶ必要があるので、パフォーマンスアップに効果的です。 - タンニン
抗酸化作用=運動中に生じる活性酸素のダメージから体を守る働きをします。
パフォーマンス維持や疲労感の軽減に役立ちます。
Catalyst Natural Caffeineをスタート30分前に4粒、以降4時間ごとに4粒を目安に摂取しています。
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Catalyst Natural Caffeine
「ここぞ!」の力が欲しいとき、もうひと踏ん張りを強烈サポート。勝負レースで100%実力を発揮するためのサプリメントです。5kmからウルトラまで幅広い距離で使えます。ナイトランの眠気対策としても人気。
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まとめ
- 「あれもこれも摂取しなきゃ」と不安にならず、まずは基本の糖質・水分・電解質を抑えることを優先する
- 多くのランナーが糖質補給の不足で苦しい思いをしている。
胃腸障害などで食べ続けることが困難になるケースが多いので、ストレスなく食べられる補給食を用意する。 - 水分と電解質の補給は汗で喪失した分を補うイメージで。
給水は「こまめに」「早めに」を意識して、経口補水パウダーも利用すると便利。 - プラスαの成分としてはビタミン、水素、ガラナ抽出物がおすすめ。
ウルトラマラソン攻略のための関連記事
最後にウルトラマラソン攻略のために役立ちそうな関連記事をまとめておきます。
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