ウルトラマラソン

ウルトラマラソンの走力を少ない負荷でチェックする方法

2020年4月30日

この記事ではウルトラマラソンの走力をレースのような高い負荷をかけずにチェックする方法を紹介します。

ウルトラマラソンを目標にしていると
「今の実力でどれくらい走れるのだろう?」
「トレーニングは順調にすすんでいるのだろうか?」
など知りたい場面があると思います。

しかし、実際に走力をチェックしようとしてウルトラの大会に出たり、それに準ずるような練習をしてはダメージが大きくなります。
実力チェックの回数が増えて疲れがたまっては練習リズムを崩してしまうリスクも高まります
そこで、この記事では「練習リズムを崩さないように、簡単に練習の成果を確認する方法」を紹介します。

お客様からの質問「24時間走の走力を確認したいです」

この記事を書くきっかけになったのはYouTubeチャンネルの登録者数が500名を突破した記念企画『質問コーナー』でこんな質問をいただいたことです。

私は24時間走をメインに練習に励んでいるランナーです。
24時間走のレースのような負荷をかけなくても、24時間走の走力を確認できるような方法または練習メニューはありますか?

質問は24時間走ということでしたが、この記事で紹介する方法なら100km以上のウルトラに対して有効だと思います。

楽なジョギングで走ったときのペースがスピードの目安に

普段のジョギングのペースでスピード面での実力を知る

多くのランナーにとってウルトラマラソンは長いので、基本的にはスタートから息の上がらないような楽なペースで走ると思います。
よってこの楽なジョギングのペースが速いほど大会でベースとなるペースが速くなります。
後半にペースダウンする程度が同程度なら、当然ペースが速い人の方が先にゴールできます。

このベースとなるペースがどれくらいなのかを知ることがウルトラの走力を知る1つの参考になります。
つまり、普段の練習で楽なジョギングをしてみたときに「それがキロ何分なの?」ということに注目しましょう。
それが速くなっているほど、大会では好記録を出せる可能性が高くなります。

ジョギングのペースが速くなるような練習がウルトラでは有効

見方をかえると、楽なジョギングのペースを速くするための練習がウルトラでは有効ということになります
それには「のんびり気持ちよく」だけでなく「気持ちよく速く」のジョギングもやると良いと思います。

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またこちらの記事ではスピード練習でウルトラに手ごたえを感じたランナーさんのことを紹介しました。
ウルトラ対策としてはスピード練習だけでは不十分だと思いますが、スピード練習が無いのも伸び悩みの原因になります。

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一定の心拍数でのペースを測るという方法も

楽に走ったときのペースといっても、毎回同じくらいの強度で走れるか不安という方は心拍数を目安にしても良いでしょう。

まずはウルトラのスタートと同じくらいのキツさで走ったとき、自分の心拍数がだいたいどれくらいなのかを何度か計測してみます。
そして、その平均値を自分のレース心拍数の目安とします。

あとはそのレース心拍数で30分くらい走ったときに、そのペースが向上しているのかどうかを走力チェックの指標にしてみてください。

実力チェックのテストはできるだけ同じ条件(コンディション・疲労感)で

主観的な運動強度でペースを測るにせよ、レース心拍数でペースを測るにせよ、同じような条件で走るように注意しましょう。

疲労や暑い日は一般的に心拍数を増加させますし、主観的に同じ強度で走ってもペースは落ちてしまいます
そういった実力以外の要素がテスト時のペースに影響を与えているということを頭の片隅におきながら練習の進捗をチェックすると良いと思います。

こちらの記事で紹介したように、"精神的な疲労"でもペースは落ちますので、心身両面の状態を考慮しましょう。

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持久力の指標はLSDでのペースダウンのタイミングと落ち幅

上記のジョギング時のペースがスピード面での指標だとしたら、持久力の面での指標はLSD時のペースダウンのタイミングと落ち幅です。

持久力のテストとなるLSDのやり方

まずベースとなる今の持久力を知るために30kmなど長い距離をジョギング感覚で走ってみましょう。
例として30kmと書きましたがこの距離は走力に応じて下記を目安に調整してください。

  • 練習リズムが狂うほどのダメージはない距離
  • スタート時と同じ感覚で走り続けていると、疲労でペースが1kmあたり10~15秒くらい落ちる距離
    「ペースを一定にしよう」と努力してはいけません。
    あくまでスタートと同じ感覚で脚を動かし続けていたら、自然とペースダウンするというのを観察してください。
  • 練習中はエネルギー補給や塩分補給などもしてOK
  • 補給時は時計を止めて、立ち止まって補給してOK
    ただし、休憩のためにストップするということは無いように
  • かなり実力のある人はペースが落ちずに50km~行ってしまうかもしれません。
    その場合はエネルギー補給はなし(塩分はOK)にするなどして条件をキツくすると短い距離でテストできます

上記のLSDをして、そのときペースがどのように変化したかを記録しましょう。

記録したペース表で注目するポイント

最初のテストが済んだら、同様のLSDをまた期間を空けてから実施してみてください(頻度は月1,2回で十分)。

2回目以降もペースを記録し
「どのタイミングでペースが落ち始めたか?」
「ペースの落ち幅はどれくらいだったか?(1kmあたり何秒くらい落ちた?)」
に注目しましょう。

ペースダウンするタイミングが遅くなったり、ペースの落ち幅が少なくなれば、持久力が高まっていると考えられます。

ジョギングペースのテストと同様に類似した条件(コンディション・疲労感)で実施する

ジョギングペースの走力チェックと同様に、LSDを使った持久力テストも毎回できるだけ同じような条件で行いましょう。
当然ですが、気候条件が悪かったり、疲労によって失速の程度は変わってきます。

もちろん毎回同じ条件というのは現実的に厳しいということもあるでしょうから、テストをしたときの記録には、結果に影響していそうなことがあればメモしておき、総合的な判断をしましょう。

テストの限界|ウルトラマラソンの結果には他のファクターも

テストの結果はあくまでフィジカル面でのポテンシャル

上記の走力チェックテストはあくまで肉体的にどれだけ成長しているのかを知る手がかりの1つにすぎません。
ウルトラマラソンの実際の結果は大会当日の補給やペース配分が上手くいったか、メンタル的に自分を上手にコントロールできたかなどが大きくかかわってきます。

練習で鍛えた肉体的な強さを本番でしっかり実力発揮できるようにレースマネジメントについてもぜひしっかり準備してください。

実力を発揮するための補給戦略

こちらの記事はフルマラソン用の補給テクニックですが、ウルトラでも基本は同じですのでご参考に。
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粘り強く再現性の高い結果を出すために必要なメンタル面

メンタル的に自分を上手くコントロールすることもウルトラマラソンでは必須です。
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まとめ

  • ウルトラでは練習リズムを崩さない低ダメージの走力チェック方法が役立つ
  • スピード面のチェックは楽なジョギングのペースが速くなっているかどうか
  • 持久力面のチェックは長く走ったときの失速タイミングやペースの落ち幅
  • 補給やメンタル管理など他のファクターも結果に影響するので情報収集しましょう

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