マラソンのトレーニングにおいて、1日に2回にわけてトレーニングをすることを2部練習と呼ぶことがあります。
この記事ではこの2部練習について、どのような効果があって、私がどんなタイミングで使っているのかをまとめようと思います。
2部練習の効果
2部練習にすることでトレーニングとして次のような特徴が出てきます。
筋肉や関節への刺激が弱くなる
例えば同じ40kmを走るとき、1日で走るより4日にわけて走る方が楽ですよね。
同様に1日の練習でも同じ距離を走るなら2回にわけた方が筋肉へのダメージや故障リスクは軽減されます。
これは
同じ距離を走ったとき、2部練習の方が筋肉への負荷が少ないので、強くなりにくい(トレーニングは適度にストレスであることが大事なので)
とも考えられますし
トレーニングの効果が『トレーニングの継続時間に依存する要素(例えば毛細血管の発達などはこれにあたる)』については、2部練習にすることで故障リスクをおさえながら主観的にも楽に高めることができる
という見方もできます。
エネルギー、水分・電解質などの内部環境をリフレッシュできるので主観的に楽
例えば夏に1回でまとめて20kmを走るのはのどが渇いて大変(集中力も切れてしまう)ですが、10kmを朝と夕方に2回ならまだ走れるというようなケースが想像できますね。
集中が切れた状態であまり長く走るのは故障や悪いフォームを覚えてしまうリスクがあるので、そういったリスクを避けながら走行距離を伸ばしていくのに2部練習は使えそうです。
エネルギーについても同様に2部練にすることで回復できるので、質の高い練習を行うことができます。
ただし、エネルギー補給については、『低エネルギー状態で走ること』で鍛えられるものもあります。
フルマラソンやウルトラマラソンのガス欠対策で重要な脂肪を使って走る能力や筋グリコーゲン(筋肉中のエネルギー源)をより多く体に蓄える能力はまさにそれです。
よって「ガス欠に強くなりたい」という場合は10km×2より20km×1の方が優れているといえます。
練習の頻度(回数)が増えるので練習することが習慣化されやすい
これはちょっとトレーニングとは違った視点になるのですが
「物事を習慣化するにあたっては、実施時間よりも実施頻度の方が大事である」
ということがわかってきています。
例えば、ある人が資格勉強を習慣化したいと思っているとします。
1週間に3時間勉強時間をとれるとして『1日1時間を3日』と『1日30分を6日』では後者の方が習慣化されて継続しやすいということです。
(つまり1回あたりの継続時間はそれほど重要ではない)
ランニングを習慣化するのも同様で、頻度を増やすほどトレーニングをサボりにくくなります。
これは2部練習が
- 走るのがまだ習慣化されていない初心者の方
- 故障明けやオフシーズンからの復帰でしばらく走らない生活に慣れてしまった方
が行動を変えるうえで役に立つということを意味しています。
着替えやシャワーなどの時間を考慮すると時間がかかる
2部練習にすると、着替えや走った後のシャワーなどの時間が2回分かかります。
よって、同じ距離を走ろうとするときの時間的コストは大きくなってしまうというデメリットはあります。
特徴のまとめ
ここまででお話しした2部練習の特徴をまとめるとこうなります。
同じ距離を走る場合を考えたとき、2部練習は1回でまとめて走るのと比べて以下のようになりやすい。
- 筋肉や関節へのダメージ:低下
- 故障リスク:低下
- 運動継続時間に左右される能力(毛細血管の発達など):同じ ← ただし、その他の特徴を加味すると、時間がボトルネックの人は2部練で低下しやすく、体力がボトルネックの人は向上させやすい
- 練習全体の量:同じ ← ただし、その他の特徴を加味すると時間がボトルネックの人は2部練で低下しやすく、体力がボトルネックの人は向上させやすい
- 練習全体の質:向上
- 脂肪活用能力、筋グリコーゲン貯蔵能力:低下
- 習慣化のしやすさ:向上
- 時間コスト:悪化
私が2部練習を取り入れるとき
以上の特徴を踏まえて私があえて2部練習をするのはどんなタイミングかをまとめます。
故障からの復帰や長期間サボり(ブランク)からの復活のとき
この時期は2部練習にした方が安全に練習量を早く元の水準に戻しやすくなると実感しています。
久々に走ることになるので、ランニングのある生活を思い出す(習慣化)という意味でも2部練習にして頻度を高めるのは良いと思います。
ちなみにこのときは、スピンバイクをゆっくりこいだり、ウォーキングを2部練習の1つにしてしまうこともあります。
どちらも故障リスクをおさえつつ有酸素運動の時間を増やすことができますから。
夏の暑い時期
夏はどうしても暑くて集中力が切れやすいので、頑張って走りこみたいというときは早朝と夜の2部練習にしています。
例えば、それまでの1日の平均的な練習量が20kmだったとして、それくらいの負荷をキープしたかったとします。
感覚的には12km、10kmのような2回の分け方をすると1回で20kmと同じくらい強くなれる感じがあります。
(同じ距離だとやや刺激が少ないので筋肉系に対しての負荷のキープはできないイメージ。
時間がかかるというネックはありますが、そこをなんとかやりくりして達成することが多いです。
夏はそもそもキツイので練習量を落とすのが普通という大人な考えもそろそろできるようになりたいものです)
月間1000km以上を目指していたとき(本気で走りこむとき)
これは最近はやっていないのですが、学生時代に本気で走りこんでいたときは1000kmというのが大きな目標の月もありました。
1日の平均が33kmですが、1回で33kmはきつくても18km+15kmのように2回にわければまだ走れました。
月間走行距離は全てではありませんが、やはり長時間走ることは当時の私にとっては大切なトレーニングだったと振り返ってみて思います。
感覚的には同じ努力量の場合、2部練ありなしで月間走行距離は
2部練無し:810km
2部練有り:1000km
くらいだったかなと。
そして、(当時の感覚では)後者の方がより安全で、少しだけ強くなれる気がしていたので後者を選択していました。
(当然時間はかかりましたが、それで1秒でも記録を伸ばしたかった)
今思い出しても走ってばかりの夏休みでしたね笑
以上が私の2部練習に関する考えでした。
読者のみなさんも2部練習の特徴を考えて、便利そうなタイミングがあったら試してみてください。
ps
こちらの記事で紹介したスリープローという食事法は2部練習を前提として食事のタイミングと内容を調整したものです。
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