ウルトラマラソン お客様の声

川の道フットレース503km 92時間4位 半谷謙寿さんに学ぶ超長距離レースの走り方

2021年5月11日

『川の道 92時間01分36秒 4位でフィニッシュしました。』

ゴールデンウイークの真っただ中、私のスマホにこんなメッセージが飛び込んできました。

メッセージの送り主は半谷謙寿さん。
去年の夏に私の糖質制限関係のセミナーを受講してくださったのがきっかけで知り合ったランナーです。

そのセミナーで「来年の川の道ではサブ4(川の道フットレース514kmを4日以内で走ることをサブ4という)をするのが目標」と語っていた半谷さん。
綿密な計画と努力の末に見事それを達成したのでした。
*2021年の第16回大会は緊急事態宣言の影響でコース変更があり、514→503kmとなりましたが、それを差し引いてもサブ4以上の記録でした

「これはすごい!」と感動した私は早速半谷さんに返信。
今回の成功体験について取材させていただくことにしました。

以下では半谷さんに取材して教えていただいたことをまとめます。

半谷謙寿さん
普段は東京YMCA社会体育・保育専門学校の先生。フィットネスの専門家としてお仕事をされています。

川の道フットレース戦歴
2017年 13回 254km 45:18:18
2018年 14回 514km 112:45:24(18位)
2019年 15回 514km 104:47:44(14位)
2021年 16回 503km 92:01:36(4位)

以下
青字:小谷
黒字:半谷さん

250kmから500kmで競技としてどんな違いがあると思いますか?

私はこれまで48時間走、6日間走と挑戦してきましたがどちらもまだ納得のいく走りができていません。
250km(24時間)を超えてくると「痛み」がネックで走れなくなることばかりでした(特に足首、膝)。
そのため250kmと500kmは全く違った競技のように思えるのですが、半谷さんはどう捉えていますか?

私も小谷さんと同じように全く別ものだと思います。
これは他の参加者の方もおっしゃっています(今大会でご一緒した24時間走の日本代表選手も「200km以降の走り方がわからない」と)。

2018年に初めて514kmに挑戦したときは250kmを過ぎてからは体が拒否している感じでした。
380kmくらいの CP(チェックポイント)についたときは完全に脚が終わってしまったと思いました。
ひどい痛みのために下り坂では前を向いて進むことができず、後ろ向きで歩いていたくらいです。

私も初100kmを完走した直後は駅の階段を後ろ向きで下ったのを思い出しました笑

なんとかCPにたどり着いたら8時間も爆睡しました。
今思えばそこでしっかり眠って回復できたのが良かったと思います。
起きてから残りの120kmを 27時間くらいかけて歩きとおしました。

24時間走を全部歩くのでも大変なのに、疲労困憊の状態でよく完走できましたね(驚)

最初からたくさん歩くことも想定していたからよかったのだと思います。
時間をみたら全部歩いても間に合うという見込みはたっていたので頑張れました。

2021年のサブ4(96時間以内完走)を目指してどんな取り組みをされたのでしょうか?

まず走る以外の時間をいかに効率的に過ごすか、ロスタイムを減らすにはどうしたら良いかということを考えました。
具体的にはチェックポイントの休憩をどれだけ削れるかとか、コンビニにいく回数を減らすにはどうすれば良いかとか。

そんな課題意識をもって情報収集していたら偶然小谷さんの「脂肪燃焼ランニング」という理論と出会いました。
それが去年の夏ごろでしたね。

超訳 脂肪燃焼ランニングの電子書籍を読んで、セミナーにも参加して糖質を控えた食事やエネルギー補給なしのロング走を導入。順調に適応して体脂肪を使って走れる体に進化していくのがわかりました。

この肉体改造の効果もあって、今回の大会でコンビニによったのは計4回だけ。
これがロスタイムの削減に役立ちました。

ザックにはスポーツ羊羹と経口補水パウダーを詰めていました。
どちらも軽くて必要な栄養素だけがぎっしり詰まっているので荷物効率が良いです。

内臓トラブルがないので吐き気などのストレスなくずっと動き続けられたのも大きかったです。
あとは補給の量が減らせるのでトイレの心配がないのも大きな安心材料でした(お腹の調子が悪くなってトイレ回数が増えることも500kmとなると多々あります)。

脂肪燃焼ランニングの取り組みが成功してロスタイムのカット、荷物の効率化、内臓系トラブルやストレスの減少の効果があったということですね。

ちなみにCPでの休憩や仮眠はどうされていましたか?

3か所のCPの合計滞在時間は過去3回で15→11→8.5時間(今回)まで減少させることができました。(ちなみに最低6時間はルール)

最初のチェックポイントでは睡眠はとらないようにしています。
睡眠的には2つめのCP(250km)までは1つの区間として考えていて、スタートから40時間くらいは寝ないで行動しています。

CPでの過ごし方は
睡眠(2~3時間)
食事・シャワー・スタッフの方と会話などリラックス(1.5時間)
という感じです。

CP以外での場所で仮眠をとるようなことはしていません。

全体として止まっている時間が少ないのが半谷さんの特徴ですね。

計画的な歩行で歩きを武器にする

私は同じくらいの順位の人と比べると走っているときのペース自体は遅い方だと思います。
その代わりに歩行のペースを上げるようにこの1年間は準備をしてきました。

レース中の考え方としては「基本は歩行で、走れるところは走る。」というイメージです。
他の方は「走るのが基本で、走れない状態になったら仕方なく歩く。」という印象を受けます。
おそらくそのためみなさん歩くときのペースが遅くなってしまっていると思います。

たしかに疲れてきて「歩かざるを得ない」という状態では歩き自体のペースもガタガタになっていそうですね。

私の今大会での歩行スピードは平均時速6kmくらい。
他の人には「半谷さんは歩いているのに(距離を)離される」と言われました。
歩きの速さは私の武器だと思います。

歩きを速くするためにどんな取り組みをされたのでしょうか?

普段の練習でトラック練習を重視して、絶対的なスピードを高めたことに効果があったと思います。
50歳を過ぎてからトラックのスピード練習をやっていなかったのですが、昔の水準に近づけるようにトラック練を再開しました。

やり方も少し変えていて、昔はスピード練習というと全力で追い込んでいましたが、今は速いなりに少し余裕をもって走るようにしています。
感覚的には70~80%くらいの力加減で走っていて、その余裕のある状態での水準を少しずつ上げていく感じです。

普段のジョギングスピードも上げるようにしました。
結果として「頑張らないで走ったときのペース水準が上がった」と感じています。

早歩きするなどの歩き自体のトレーニングは実施していません。

お話しを聞いていて、私が参加した6日間走のことを思い出しました。
この距離になると本当に歩きが速いのって驚異的なんですよね。
その大会の優勝選手はオーストラリアのミックという選手で歩きのペースが時速7kmくらい。
まさに「歩いているのに離されていく」という感覚を私ももちました。

ミックは週1回くらいの頻度で10kmの早歩きを練習で取り入れていると言っていました。
500km級のレースでは歩きを武器にできると戦略に幅ができて面白そうですね。

川の道500kmを走るうえでのおすすめトレーニングは?

一人で100~200kmを連続的に走る(歩きもあわせてOK)練習が効果があったと思います。
「単独走」というのがポイントです。

川の道では暗い山道を誰もいない中で一人で進んでいかないといけない場面もあります。
どんな状況でも自分一人で判断していけるか。
気温・天気の変化などに柔軟に対応できるかが大事で、それが鍛えられると思います。

私はそういう一人でのロング走を月1回くらいの頻度でやっています。

そういうロング走はどのあたりのコースを走っているのですか?

私は旅番組を見るのが好きで、そこで取り上げられた面白そうなところを走ることが多いです。
地図を見て行ってみたいスポットをつなぎあわせてコースを作るのも面白いですね。

あまりトレーニングトレーニングしないで楽しみながらやることがマンネリ化せず継続するコツなのかなと思います。

あと、これはトレーニングではありませんが、川の道という大会においては経験値がとてもものをいう大会だと思います。
実際に川の道を走ったことがあるということが武器になり、そして反省を踏まえて改善していくというプロセスが今回につながったと思います。

月間400~700km 単独ロング走を除けばフルマラソンに近い練習

普段の練習メニューは「スピード練習の比重を高めにした月」と「走り込みの比重を高めにした月」を1か月ごとに交互に繰り返しています。
平日夜スピード、休日にロング走、という感じで単独ロング走を除けばフルマラソンの練習と似ているなと思います。

走る量は平均500kmくらい。
頑張って走りこんだ月は700kmでした。
スピードメインのときは350-400kmくらい。

日常の疲労回復とか、みなさんにおすすめのことはありますか?

この1年でいうと、寝るときのマットレスを変えたのは個人的にあたりでした。
トゥルースリーパーという製品を買ったのですが、朝すっと起き上がれるようになった気がします。

ストレッチは個人的に重視していて、ドクターストレッチに行って体をのばしてもらっています。

あと、Holosさんの製品でいうとスポーツネックレスのKernelを大会直前の1か月でわらにもすがる気持ちで注文してみたのですが、これがすごく気に入っています。
走っていてバランスが良いというか、以前は距離が伸びると体が曲がっていく(傾いていく)傾向があったのですが、今回はそれが解消されました。

食事面でいうと脂肪燃焼ランニングでならった糖質控えめの食事をしています。
あと、脂肪活用能力アップにCatalyst Cardio Performanceも使っています。

最後にこれから500kmを目指す人へ何かメッセージはありますか?

よく「500kmなんてどうやって走るのですか?」 と質問されるのですが、正直なところ万人に共通の答えはないと思っています。

私自身も今回で500kmは3回目。
自分なりの積み重ねをして、自分のやり方を見つけてきました。
過去の様々な経験の積み重ねがあって、今回はこの結果が出せたのだと思います。

経験や前提条件が違えばやるべきことも違うということですね。

はい、ゴールの達成感も嬉しいですが、自分なりの走り方、コツを見つけていくプロセスも楽しいので、試行錯誤していってほしいというのが私の考えです。
今回お話しさせていただいたことも正解ではなく考えるための材料として活用していただければ嬉しいなと思います。

半谷さん、とても貴重なお話をありがとうございました!
半谷さんの熱い完走レポートを読んで私も気持ちが盛り上がり、川の道を走ってみたいと思いました。

半谷さんもご利用のアイテム

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