ノウハウ

運動前に脳を疲弊させたときの持久性パフォーマンスの変化

今日は最近知った面白い実験を紹介します。

これは『限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学』という本で紹介されていました。
精神的な疲労が持久的パフォーマンスにどれくらい影響を与えるのかを調査した研究です。

この研究では16人の被験者にバイクで TTEテストを行いました 。
TTE テストとは
「一定の速度に設定されたトレッドミルでどのくらい長く走れるか」
「エクササイズバイクで一定のパワーをどのくらい出し続けられるか」
などを調べるテストです。
被験者に厳しい・・・

実験では被験者を次のような2つのグループに分けます。

  • 片方のグループではテスト開始前に90分間コンピューターで精神的に疲労させる課題をこなさせます。
    画面に出てくる文字を見てそれに応じたボタンをできるだけ早く押すという単純作業です(これが脳にとっては負荷になる)。
    被験者に厳しい・・・
  • もう片方のグループには中立的な感情を保てるようにドキュメンタリーを見て過ごしてもらいました。

TTEテストの結果は事前に精神的に疲れていたグループはそうでないグループよりも15.1%早く自転車こぎを諦めてしまいました
(時間的にはドキュメンタリーグループが12分34秒コンピューターグループは10分40秒が平均でした)

興味深いことに実験中の
心拍数、血圧、酸素摂取量、乳酸値
などの測定値は同じだったことです。

しかしコンピューターの課題を与えられたグループの方が最初から主観的な運動強度を高く申告しました。
つまり心拍数などが同じでも事前に心を消耗したグループの方が「きつい」と感じていたということです。
*「いつもと同じ心拍数なのになんだか今日はキツい」なんてことも、私たちランナーは感じることがありますよね

書籍では「脳が疲れていると自転車をこぐのが単純にきつく感じられるのだ」とまとめています。

これまで「人間の自制心には限りがある」ということは私も知っていました。
自制心とは苦痛に耐える心の力のことです。

なのでいつもより仕事で疲れた後などはトレーニングをサボりがちになったり、いつもより追い込むことができなかったり。
そんな経験、みなさんもありませんか?

最近の私の事例でいうと、今私は車の免許を取りに教習所に通っているのですが、授業や技能でみっちり勉強した後はトレーニングがきつく感じました。
慣れていない運転をするとやはり精神的に疲労するのでしょう。

さて、この研究結果から私たちはどのように自分の行動を改善できるのでしょうか?

ストレスは単純に耐える力を減らしてしまいます。
ということは、例えば大会の前はできるだけストレスがかからないように工夫をしたいですね。

関連してつい先日大田原マラソンでサブ3.5を達成したお客様からのお礼メールにはこのような文面がありました。

小谷さんが作った冊子に習って、今回は初めて持ち物チェックリストを作成しました。
当日のタイムスケジュールも作成し、朝食を食べる時間やカフェインを飲む時間も管理しました。

事前に綿密に準備をして不安をなくし、レース当日も考えるストレスなく淡々と計画通りに行動していく。
これだけでもストレスは軽減できると思いませんか。

あともう一つこの実験から考えたいこと。
それは「なんか調子が悪いな」というときの気持ちの切り替えです。

「しっかり練習を積めているはずなのに、最近なんだか調子が悪く感じる」というような日ってありませんか?
こういう時に焦って「もっと頑張らないと」と判断してしまうこともあるでしょう。

ただ、もしかしたら精神的に一時的に消耗していて、それで運動に耐えることができなくなっているのかもしれません。
もしそうであれば、精神的な気晴らしをすることが解決につながるでしょう。
「今はそういうときなんだ」と思ってその時の自分に適したやや強度を落とした練習に切り替えれば充実したトレーニングを行えるでしょう。

ストレスで持久的パフォーマンスが簡単に15%くらい低下してしまうこともある。

このことを頭の片隅に置いて楽しくゆとりを持ってランニングを継続できるといいですね。

まとめると

  • ストレスで持久的パフォーマンスは低下することがある
  • 大会ではスタート前からできるだけストレスが少なくなるような工夫をする
  • 一時的なパフォーマンスの低下を体力の低下だと決めつけて焦らない。
    その時の自分に合ったトレーニングに調整することが長期的には上手くいくポイントかも。

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