体脂肪を1kg減らしたときにどれだけフルマラソンの記録が伸びるかを理論的に計算してみました。
よく「1kg痩せると3分速くなる」なんて言われますが、実際には元のタイムと体重によって、減量の影響は変わってきます。
というのも、フルを3時間で走る人と4時間で走る人では"1分の重み"が違いますし。
また、体重が50kgの人が1kgやせるのと、80kgの人が1kgやせるのでも"1kgの重み"が違います。
下記に記すように、体重が軽いほど、タイムが遅い人ほど、1kg痩せたときのタイムの更新幅は大きくなります。
▼現在のフルマラソンの記録と体重別の体脂肪1kg減でのタイム短縮幅(分)
フル記録 | 体重 | |||||
45kg | 50kg | 55kg | 60kg | 65kg | 70kg | |
4:30 | 6.7 | 6.0 | 5.4 | 5.0 | 4.6 | 4.3 |
4:00 | 5.9 | 5.3 | 4.8 | 4.4 | 4.1 | 3.8 |
3:30 | 5.1 | 4.6 | 4.1 | 3.8 | 3.5 | 3.3 |
3:00 | 4.3 | 3.9 | 3.5 | 3.2 | 3.0 | 2.8 |
2:30 | 3.5 | 3.2 | 2.9 | 2.7 | 2.4 | 2.3 |
例えば、現在のフルマラソンの記録が4:00で体重が60kgの人がいたとします。
その人がダイエットをして無駄な体脂肪を1kg減らせたとすると、4分24秒(4.4分)ほどタイムを短縮することができるという意味です。
この推定はあくまで理論的な計算に基づくものです。
減量後もパワーや心肺機能などの能力が低下しないことが前提です。
「1kg痩せたけど、実はそのほとんどが筋肉の分解で、筋力が低下していた」というようなケースではあてはまりません。
純粋に無駄な体脂肪がなくなって、軽くなったことのメリットのみ受けていると想定してください。
計算の方法
アメリカスポーツ医学会で示される計算式を用いて生理学的な面から推定を行うと、体重1kgあたり1分間の酸素摂取量(y)、分速あたりのスピード(x)の関係性は【y=0.2x+3.5】で求められる。
『2020年版 スポーツ栄養学 最新理論(寺田新 著)』より引用
*小谷注)x,yそれぞれの単位は[m/分],[ml/kg・分]
今回の計算は上記書籍にある数式モデルを利用しました。
減量後も全体の酸素摂取量は変わらないという条件を使えば上記の一覧表を作ることができます。
例題として
『体重60kg、フルマラソン4時間の人が1kg痩せた場合に記録がどう変わるのか』
を計算してみましょう。
(式が理解できなくても実際上は全く問題ないので気楽に読み流してOKです)
---読み流しOKゾーン ここから---
フルマラソン4時間(240分)で走るときの速度xは42195÷240=175.8 m/分です。
関係式【y=0.2x+3.5】から体重1kgあたりの酸素摂取量yを求めるとy=0.2×175.8+3.5=38.7 ml/kg/分 です。
この人は体重が60kgだったので、単位体重あたりでなく、体全体での酸素摂取量は60×38.7=2319.8 ml/分となります。
つまり、1分で2320mlの酸素を取り込むことができる(そして、その強度ならフルマラソンを走り切れる)ということです。
さて、この人の体重が1kg減って59kgになったとき、単位体重あたりの酸素摂取量は2319.8÷59=39.3 ml/kg/分になります(減量前の38.7より改善する)。
この39.3という新しい酸素摂取量にまた関係式【y=0.2x+3.5】を利用して速度を計算すると
39.3=0.2x+3.5 → x=179.1m/分 となります。
この速度でフルマラソンを走ると、そのタイムは42195÷179.1=235.6分となり、240分より4.4分速くなることがわかります(表の値と一致)。
---読み流しOKゾーン ここまで---
記録を目指すなら体重管理も頑張ろう
この記事はより多くの方の体重管理のモチベーションを上げられればという気持ちで投稿しました。
人は本能に従って行動したらどうしても食べすぎてしまうもの。
私のランナー友達の投稿をみても「まずは体重をなんとかしたい」というのが結構あります。
上記の一覧表を参考にしていただいて、頑張って減量に成功したときのイメージが少しでも具体的になれば良いなと思います。
イメージが具体的になるほど自制心を発揮して成功できる可能性が高まると思いますから。
トレーニングの時間が限られている市民ランナーはどうしても高いレベルを求めるときに"時間"がネックになってきます。
その点、ダイエットは食べすぎを控える、食事バランスを変えるというのがメインなので、更に時間を投資する必要があまりありません(初めのころは勉強などに時間を使う可能性はありますが)。
また、軽い体は着地の衝撃も軽減できるので故障リスクを減らすことにも役立ちます。
無駄な脂肪をそぎおとした引き締まった体になって、健康的で本能的な自信を手に入れましょう!
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