この記事ではランニングを久々に再開しようという方向けにブランク明けのトレーニングのポイントについて紹介していきます。
ひとくちにブランクといっても、その長さは数週間~数年と幅広いことと思います。
また、ブランク期間にどれくらい身体活動をしていたか、もともとの走力によっても具体的な練習メニューは変わってきます。
以下の内容には私の個人的な事例も含まれますが、一人ひとり前提条件が違うということを踏まえながら、役立ちそうな内容があればご自身の事情にあわせてアレンジして活用していただければと思います。
私が3か月間のブランクから今日(再開4週間目)に至るまでに起きたこと
実はこの記事を書いている今日時点の私もブランクを経て復活しようとしているタイミングです。
5月末に弘前24時間走という大会があり、そこまでは順調にトレーニングをしていました。
(そのプロセスは『弘前24時間走への挑戦』というカテゴリにまとめています)
しかし、その後は大会で負傷したねん挫を完治させて、家庭の変化があって(2人目の娘が生まれました)、一家でコロナにかかって入院したりして、約3か月間ほとんど思うように走れていませんでした(月間走行距離で60~70kmくらい)。
2歳と0歳の子供のいる新しい生活に私と妻が少しずつ慣れてきて「またランニングを再開したい」と思って9/11に久しぶりに走りました。
そして、今日時点では再開して4週間と3日になります。
ランニングインデックスの推移
まず、この期間でどのような変化があったのかを以下にまとめます。
このグラフはポラールの腕時計で計ったランニングインデックスという数値の推移です。
ランニングインデックスはペースと心拍数からランニングのパフォーマンスを推定する指標で、数値が高いほど走力が高いことを意味します。
(私は心拍数は腕で計測しており、胸ベルトほどではありませんが、まぁまぁ正確です)
まさにランニングを再開した9/11は『54』という値でした。
それがトレーニングを継続していくことで上昇していき、ここ数日は『72』くらいまで回復してきました。
これは(あくまでポラール社のデータに基づく予測ですが)、フルマラソンのタイムでいうと3時間43分→2時間45分へと変わったくらい、成長したことを意味します。
(実際の今の私はフルマラソン向けの練習をしていないので2時間45分は絶対出せませんが、ジョギング時のペースと心拍数は着実に回復していると判断できます)
ちなみに、5月の大会直前でのランニングインデックスは『74』くらい。
そのときは週5日の糖質制限をしていたり(ランニングインデックスは低く出やすい)、練習の平均ペースが速かったり(私の場合、速い練習ほどランニングインデックスが低く出やすい)したので、正確な比較にはなりませんが、少なくとも3か月のブランクがあって、それを4週間の練習でここまで戻せたことは、予想以上に順調だったといえます。
3週間も走れば、再開を決意した自分に感謝する日が来る
「また走り始めたいけど、低下した体力を直視したくない」
そんな気持ちから再開するタイミング(チャンス)をつかめないでいる人もいるかもしれません。
でも、そんな方にこそ知ってほしいことがあります。
私の経験上、3週間も走れば、ランニングの喜びを思い出すことができ「あの日に走り始めることを決意して良かった」と過去の自分に感謝することになるでしょう。
今回の私もそうでした。
初日はジョギングのつもりなのに心拍数がどんどん上がり、3kmジョグしただけで時計が『心拍ゾーン4(スピード練習の域)』を示したときには、予想はしていたものの自分の衰えにショックを受けました。
ジョギングの感覚で動いているのに、心拍数を抑えることができない。
毎日平気で20~30km走っていたのに、5kmくらいから疲れを感じ、10kmの練習が長く感じました。
しかし、ショック(ネガティブ)な感情になったのはその最初の1日だけでした。
映画『SING/シング』では逆境の中で主人公が『どん底に落ちるのも悪くないだろ?残る行き先は一つ。上に、上がるだけ!』と語るシーンがあります。
まさしくその通り、一度現状の自分を直視したら、過去の自分がどれだけ速かったかなんて関係なく、あとは今日からの努力で成長していく自分をまた好きになることができたのです。
今回の私の場合
- 再開して4回目の練習でジョギング時の心拍数をある程度コントロールできるようになり
- 3週間目の週末にスローペースのジョギングで20kmを快適に走ることができ自信を更に取り戻し
- 4週間目には自分の体に力強さを感じ、トレーニングすることの喜びがますます高まった
というように心境が変化していきました。
だから、この記事を読んでいる方にぜひ伝えたいことがあります。
それは
ショックを受けるのは最初の1回目の練習だけ。
そこから先はあなたが思っている以上に楽しいランニングライフが戻ってきます。
3週間後には、再開を決意した自分に感謝する日が必ずやってくるでしょう。
ということです。
勇気を出して現実を直視することは、その後にやってくる充実感に満ちた日々を取り戻すための頭金なのです。
安全かつ早く体力を取り戻すためのポイント
ブランクから復活するとき、私が意識しているポイントは3つあります。
- 低下したモチベーションをどのように高めて、維持していくか
- 故障による停滞を防ぐ
- 効果的なトレーニングを行う
モチベーションを高めて維持していく方法
最初の一歩が最大の壁
走る習慣を取り戻し、喜びに満ちたランナーとして復活するためには、モチベーションが欠かせません。
恐らく最大の壁は、最初の一歩を踏み出すことです。
「ランニングを再開したい」と思い、実際に1回目の練習をすることです。
この記事を読んでいる方は少なくとも「再開したい」という思いはあるでしょうから、1回目の練習をすることが大切です。
先述した下記のコメントに騙されたと思って、ぜひ1回走ってみてください。
行動すれば全てが変わり始めます。
ショックを受けるのは最初の1回目の練習だけ。
そこから先はあなたが思っている以上に楽しいランニングライフがすぐに戻ってきます。
3週間後には、再開を決意した自分に感謝する日が必ずやってくるでしょう。
過去との比較ではなく、再開してからの成長に目を向ける
心構えとしては、過去の自分の走力と比較せず、再開してからの自分の成長に目を向けることが勇気づけになります。
「30分を最初と比べて長いと感じなくなった」
「心拍数をコントロールできるようになってきた」
「ランニングに出かけることに前向きになってきた」
など。
走力的な側面だけでなく、自分の心理的な成長・変化にも気づくよう心がけると良いと思います。
日常のあらゆる行動をランナーとして意図的に選択する
私たちの1日は24時間ですが、そのうちトレーニングしている時間は多い人でもその10%程度だと思います。
私は表面上はトレーニングをしていない残りの90%の時間を「自分が理想とする姿(=熱中した市民ランナー)だったら、どのように行動するか」と考え、意識的に過ごすようにしています。
例えば
- 今日のランチのメニューはどれを選ぶのがより体に良いだろうか?
- ここはエスカレーターではなく階段を使うべきだろう?
- 睡眠時間を長くし、グッスリ眠れるように、今からこの仕事にとりかかるのは辞めよう
などです。
歯を磨くという当たり前の行動でさえ「ランナーとして健康を維持し、歯医者に行って時間を無駄にするリスクを軽減しよう」と意識して行動すれば、心は変わっていきます。
私は本命レースに向けて最も高いモチベーションを維持していたとき
ランナーとして食べ、眠り、歩き、立ち、座り、思考し、言葉を選んでいました。
ぜひ、みなさんもご自身に無理のない楽しめる範囲で『走る以外の時間も意図的に選択する』を実行してみてください。
故障による停滞を防ぐ
やる気に満ちてランニングを再開しても、負荷と回復のバランスがとれずに故障して後戻りしてしまうことがあります。
ブランクの理由が故障だった人は、表面上は痛みは完治していても、故障を引き起こしていた根本的な原因は解決していないことも多いので特に注意が必要です。
故障の原因は個別に全然違いますので、本記事で具体的なアドバイスは致しかねますが、ある程度普遍的に活用できる考え方をシェアしたいと思います。
故障でブランクだった人は根本解決の手立てを探る
故障して走れていなかった方は、炎症などは完治して痛みが無くなっているかもしれませんが、そもそもなぜそこが炎症してしまったのか(局所的に負担がかかってしまったのか)を考えなくては、再開して運動量が増えていったら同じような症状に悩まされるリスクが高くなります。
ランニングフォームの問題か、体の問題か(姿勢、機能不全の筋肉があるなど)、メニューの問題かはわかりませんが、自分なりに仮説で良いので考えて、必要なら書籍や専門家の知恵を借りて根本解決の手立てを探りましょう。
トレーニング日誌を書き、負荷と回復のバランスを崩さないようメニューを修正していく
「早く体力を取り戻したい」と一気に練習の負荷を上げてしまい、故障してしまうこともよくある失敗です。
トレーニング効果が得られるのは『トレーニングによる負荷』と『回復』のバランスが取れているときです。
よって、トレーニング日誌に体の調子を記録して負荷と回復のバランスをモニターし、練習計画を修正していく必要があります。
日誌には起床時の
- 練習へのモチベーション
- 筋肉痛、筋肉のハリの状態
- 全身の疲労感
- 精神的な疲労感(ストレスのレベル)
- 上記を全て加味した総合的な調子
を7段階で評価して記録しています。
トレーニングと数値の推移をチェックして、練習メニューの一貫性は維持しながら負荷を調整していきます。
(ブランク明けは体の成長速度が通常時より早いので、この臨機応変な調整がより重要になります)
例えば今回の私のケースでいうと、再開して最初の1週間は「週間6時間の有酸素運動」を仮で計画していました。
しかし、実際にやってみたところ余裕があり、7時間まで時間を延ばせました。
その次の週は8時間半まで増やしたのですが、少し疲労の抜けの悪さを感じ、さらにその次の週は8時間に減らしました。
日誌があることで落ち着いて負荷と回復のバランスを考えてメニューを修正できるようになります。
逆にこれが無いと体調を無視して計画に固執してしまいやすくなります。
最初は無理が効いても、その積み重ねが故障へとつながってしまうリスクを高めます。
上記で紹介した7段階評価は主観的な記録ですが、それがまとまったトレーニング日誌を見返しながら次週のメニューを考えるとき、それは客観的なデータとなってみえるのです。
クロストレーニングで有酸素運動の時間を稼ぐ
ブランク明けの練習は(ブランク期間の長さにもよりますが)多くの方にとって「ゆっくりペースのジョギング」をして有酸素運動の基礎的な持久力を取り戻すことから始めるのが良いでしょう。
心拍数が上がりすぎない練習を回復とのバランスがとれる範囲で時間を長く伸ばしていくことが効果的と考えられています。
このゆっくり長くのトレーニングによって
- 毛細血管の発達
- 心臓の肥大
- 筋肉のエネルギー代謝酵素の活性化
- 筋肉や腱の結合組織が強くなる
- ミトコンドリアの新生
- 運動神経の復活
などの生理的な変化が体に生じます。
有酸素運動の時間を伸ばそうとしたとき、ランニングは水泳やサイクリングなど他のスポーツと比較して衝撃が大きく、故障リスクが高いと考えられます。
繰り返し同じ動作をすることで体が歪みやすかったり、同じ部位のダメージが蓄積しやすくなるというデメリットもあります。
順調にトレーニングを再開して、体力がついてくれば競技に特化したランニングの比率を増やした方が良いですが、ブランク明けでこれから基礎から作り直そうという段階では、クロストレーニングを導入して安全に有酸素運動の時間を稼ぐという方法もあります。
私の場合は部屋にスピンバイクがあるので、それをクロストレーニングとして使っています。
(ランナーのクロストレーニングの種類としては同じ下半身の筋肉を使うサイクリングがおすすめです)
トレーニングを再開した9/11の週では、全7時間のうち32%(134分)がスピンバイクでした。
その後3週間はスピンバイクを活用して、4週間目からランニングのみに切り替えました。
(目安としては3~8週間の期間、有酸素運動の15~30%くらいの時間をクロストレーニングにあて、徐々にランニングの比率を増やして行くという方針で行うと良いかと思います)
クロストレーニングを行うことで、ランニングだけの練習よりも体力の戻りが早かったし、故障リスクもおさえられて、変化があるのでモチベーションの維持にも効果的だったと思います。
効果的なトレーニングを行う
2部練習+昼寝で1日に4回の成長ホルモンを出す
再開して最初の3週間、私は意識的に2部練習(朝と夕方のように1日2回練習すること)を導入しました。
そして、可能な限り昼寝する時間を確保しました。
(最高に時間があるときは1時間半とり、そうでないときは20~27分とりました)
こうすることで、①朝練②昼寝③夕方練④就寝の4回も1日のうちに成長ホルモンを出す機会が得られるからです。
この「2部練+昼寝」はブランク明けでなくても活用できるテクニックですが、特にブランク明けで体力を取り戻すときに効果が大きいと個人的な経験から感じています。
あとは、月間走行距離500km~のような量の走り込みをするときにも、故障リスクを抑え、集中して走る時間を増やせるというメリットを感じます。
一方でデメリットとして
- 時間がかかること(準備時間やシャワー、洗濯の手間など)
- 体力がある程度復活してくると、2部練それぞれの負荷が不十分になり、成長スイッチが入らないリスクがあること
は留意しておく必要があります。
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ウォームアップとクールダウンを真面目にやる
ブランク明けはちょっとの練習でも体が疲れやすく、いかにダメージを少なくして練習を継続するかが大事になります。
私この4週間でウォームアップとクールダウンをきちんとすることが、いかに疲労を貯めこまずに練習量を増やすのに役立つのかを改めて実感しました。
具体的なやり方としては
「走り始めの15~20分」と「走り終わりの7~10分」を「罪悪感を感じるくらいゆっくりのペースで走る」
ということをしています。
ペースや心拍数は人それぞれですが、今の私の場合は6:30~7:00/km・110~125bpmくらいです。
ウォームアップは単に体温を上げるだけでなく、ホルモン分泌や酵素の活性などを通じて体が運動する準備を整えるための時間です。
この準備ができると、その後の本練習のときに脂肪をエネルギーとして活用しやすくなり、持久力を高めるトレーニング効果が更に高まります。
以前は「ウォームアップとクールダウンに時間をとられると、本練習の時間が短くなるので非効率ではないか」と思っていた時期もありました。
しかし、今では
「回復力が高まり、より長時間の練習ができるようになる」
「本練習のトレーニング効果も高まるので効率的」
「ウォームアップとクールダウンの時間自体も練習効果としてきちんと効いている」
と直感するようになりました。
心拍数を計測し、低い心拍数で長く走る練習をする
これまでにも書きましたが、ブランク明けのトレーニングは「ゆっくり長く」が基本です。
しかし、これが頭でわかっていてもできないことがあります。
その理由はブランク明けは「主観的な強度と実際の心拍数にギャップが生じやすい」からです。
今回の私も、最初は心拍数が自分の感覚以上に高くなっており、ジョギング時の心拍数を自分でコントロールすることが上手くできませんでした。
ちょっとの上りでも、今までの経験とは違うスピードで心拍数が上がっていき、上がった心拍数が下がるのにも時間がかかります。
(というか、ブランク明けは走りながらでは全然下がらない)
このことに気づくためにも、可能なら心拍数を計測できるツールを用意した方が良いと思います。
(正確性を考えると手首計測よりも胸ベルトか腕での計測がおすすめです)
この3週間で私も驚いたのですが、心拍数を低いところできちんとコントロールできると、そうでないときと比べて、翌日からのダメージが全然違います。
私の場合は135bpmまでに抑えて走るのと、少し上がってしまって142bpmの時間帯が多くなってしまうのでは、全く違う疲労感です。
(体力があるときはここまで違いを感じませんが、体力が低下している時期には大きな違いに感じます。
そして、そのダメージの違いが週間での有酸素運動の時間に影響し、体力を戻すスピードの違いになります)
ランニング再開でのトレーニングは「どうしたらより長い時間の有酸素運動を継続できるか」という視点で考えると間違いが起こりにくいように思います。
そして、そのためには心拍数を正確に測定して、自分にとって疲労がたまりにくい心拍域はどこまでかを理解して練習することが大いに役立つと私は考えています。
実際に行った4週間の練習メニュー
最後に私が今回行った4週間のランニング再開メニューを掲載します。
掲載するのはあくまで具体例があった方がわかりやすいと思うからです。
みなさんそれぞれ前提条件が違うと思いますので、ご自身にあったように活用してみてください。
(自転車のマークは室内スピンバイクの時間です)
注)ゾーン4の時間帯が10%とありますが、心拍数をコントロールできなかっただけです。
ブランク明けの期間はゾーン1~3までで走れば良いと思います。
最後に
長文をご覧いただき、ありがとうございました。
色々と書きましたが、本記事で私が一番お伝えしたかったことは、ただ1つ
さぁ、今日からまた走り始めましょう!