走るだけでなく筋トレや体幹トレーニングを取り入れているランナーは多いですよね。
私もその時々の課題に合わせて様々な補助トレーニングを試してきました。
*補助トレーニング=走る以外のトレーニング
補助トレーニングは上手に使いこなせればマラソンの記録向上に役立ちます。
しかし、使い方を間違えるとかえってパフォーマンスを悪化させてしまう可能性もあります。
今日はその失敗をしないために補助トレーニングについての勉強をしましょう!
マラソンに補助トレーニングは有効か?
そもそも筋トレ、体幹トレーニング、ファンクショナルトレーニングなどの補助トレーニングは効果的なのでしょうか?
私の個人的な経験、友人ランナーの体験談、著名なコーチの発言から
「補助トレーニングは正しく行えば効果的である」
と思っています。
私は2014年の神宮外苑24時間走の反省文でこう語っていました。
「高負荷な筋トレがウルトラマラソン後半のペースダウンを抑制する強い脚を作るのに役立った」
この年はレッグプレスというジムに設置してあるマシンで太ももとお尻の筋力をつけていました。
(160kgで25~30回を3セット、インターバル45秒とかでやってました)
24時間走で原良和選手が285kmのアジア記録を更新された際も筋トレに手ごたえを感じていると語っていました。
(幸運にも私はその大記録が出された時に同じトラックを走って歴史的瞬間を目撃していました)
もちろん、ウルトラマラソンだけでなく、フルマラソンのトップ選手も実施しています。
著名なランニングコーチであるジャック・ダニエルズ氏は著書『ダニエルズのランニングフォーミュラ』でこう述べています。
「特異性という言葉をそのままに文字通りにとって、自分のトレーニングをランニングだけに限ることはしないでほしい。
(トレーニングに割ける時間が少なければ、その時間をランニングに使うべきかもしれないが)」
*特異性:ある競技種目を上達させるにはその種目の練習が必要ということ(=マラソンなら走る練習が大事)
筋トレを組み合わせる重要性を示す実験
筋トレと運動パフォーマンスの関係を示した面白い実験があります。
被験者を5つのグループに分けます。
各グループにはそれぞれ別々のトレーニングを実施させます。
トレーニング期間ののち、どのグループが垂直飛びのパフォーマンスが向上したかを比較します。
各グループのトレーニングの内容は次のようなものでした。
- 垂直飛びのみ
- 等尺性筋トレ(スクワット)のみ*
- 筋トレ(スクワット)のみ
- 垂直飛びと等尺性筋トレの組み合わせ
- 垂直飛びとスクワットの組み合わせ
*筋肉の長さが変わらないトレーニング。
アイソメトリクスとも呼ばれる。
特異性の原則に従って
「垂直飛びに必要な能力は垂直飛びの練習で高められる」
と考えたら(1)が一番パフォーマンスが上がりそうです。
しかし結果は5>4>1>3>2でした。
これは次のことを意味しています。
- 適切に筋トレを組み合わせることで垂直飛びのパフォーマンスが上がる
- 不適切な筋トレは逆にパフォーマンスを下げる
(2の等尺性筋トレは逆に悪化しています)
等尺性筋トレは何が問題だったのでしょうか?
それを考えるヒントが「つくる・使う」によるトレーニング分類です。
体をつくるトレーニングと上手に使うトレーニング
補助トレーニングの目的を「強い体をつくるため」と「体を上手に使うため」の2つにわけると分かりやすいです。
筋肉に負荷を与えて筋肉を太く強くするのが目的の筋トレは「つくる」トレーニングの代表でしょう。
最近よく耳にするようになったファンクショナルトレーニング(*)は「使う」トレーニングの代表です。
*筋肉を増やすのではなく、今ある筋肉をいかに効率よく使うかのトレーニングと考えてください
「つくる」と「使う」で分類するとこんな感じになります。
横軸を使う、縦軸をつくるの効果とします。
筋トレはつくるトレーニング。
ファンクショナルトレーニングは使うトレーニング。
ちなみにイメージトレーニングも体の使い方が上達するものがあるのでファンクショナルよりに置いてみました。
垂直飛びの実験で問題になったアイソメトリクスですが、実は体の使い方が悪化するという意見があります。
これはアイソメトリクスの動きが現実のスポーツでの動きとかけ離れているからです。
体が安定した状態でトレーニングできるマシントレーニング(ジムなどにあるもの)も動きを悪化させる可能性を指摘されています。
(姿勢を維持するためのインナーマッスルが働かなくて良いというのがスポーツ動作と異なるため)
もちろん、マシントレーニング自体は悪いものではありません。
マシンで強い体をつくればパフォーマンスは上がります(垂直飛びの実験のグループ3に近い)。
しかしマシンだけでは使い方が上達しないので、使うトレーニングも組み合わせる必要があります。
アイソメトリクスも垂直飛びと組み合わせることで垂直飛びだけよりも効果がありましたからね(グループ4>1)。
これはアイソメトリクスで体をつくり、垂直飛びの反復で体を使うことを向上させたからと私は思っています。
つまり、「つくる」と「使う」のバランスをきちんと維持することが大切なのではないでしょうか。
ただ、総合的にみるとスクワット×垂直飛びのグループが一番でしたので、あえてアイソメトリクスで動きを悪化させる必要はないのかと。
フリーウェイトなどで体をつくり、実際のスポーツ動作(走る)をすることで、単に走るだけより強くなれると思います。
あるいは課題が「つくる」より「使う」にある人はファンクショナルトレーニングをしつつランニングが一番でしょう。
もちろん、筋トレ、ファンクショナル、ランニング全てを行うのもOKです。
そこは自分の課題やトレーニングに使える時間に応じてやりましょう。
まとめ
- 補助トレーニングは「つくる」と「使う」の視点で考える
- 動作を悪化させてしまうトレーニングに注意する
- 自分の課題にあわせてアレンジできれば補助トレーニングは効果的
ちなみに私が好きなのはシングルレッグ・スロースクワットです。
片足立ちのため不安定で機能的(「使う」に効果的)です。
スロー+片足のため負荷が高く「つくる」の要素も強いです。
左右1分ずつで2セットくらいやれば結構効くと思います。