糖質制限をすると主に糖質を燃料とするような高強度のスピード練習が出来なくなってしまうのではないか(効果が薄まってしまうのではないか)?
という質問をよくされます。
この「糖質制限→スピード練習が出来ない」という仮説から糖質制限をためらう方がいたり、「スピード練習の前夜のみ糖質をとる」などの工夫をされる方がいたりします。
*このスピード練習前だけ糖質をとるという考えのもと作られた方法が「スリープロー」です。
スリープローについてはこちらの記事で書きました。
今日はこの糖質制限とスピード練習の関係について書きたいと思います。
今の私の考えは
「糖質制限に十分に適応したら高強度の練習も問題なくできる。
ただ、適応までの期間はキツくて強度が低下し、パフォーマンスも一時的に下がると思われる。
よって、目標のレースまで十分に時間があり、長期的な戦略がとれるなら、スリープロー的な方法は辞めてスピード練習前夜も糖質制限をした方が良い。」
です。
まず事実として私は糖質制限をしていても普通の食事をしていた頃と同等のレベルでスピード練習をすることができています。
これは他の十分に適応した糖質制限ランナーも同様です。
また『Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners』では「適応者は糖質制限食でも筋肉のグリコーゲンが十分に回復する」ということが示唆されています。
これが正しいとしたら、「糖質制限に慣れた人は筋グリコーゲンを蓄えるために食事で糖質をとる必要はない」といえます。
(スピード練習で使う程度のグリコーゲンは十分に蓄えられているはずなので)
実際に私は先日の神宮外苑24時間走(255km走った)でも前日夜・当日朝も糖質制限食で調子よく走ることができました。
石川佳彦選手もレース前のカーボローディングは不要と考えているようです(実際には遠征先で食事管理が難しく、仕方なく糖質を摂ってしまうこともあるようですが)。
また、下の記事でも書いたように糖質制限で脂肪活用の能力を高めたいなら、できるだけ糖質を摂らない食生活を維持した方が良いと考えられます。
- 適応すればスピード練習はできる
- 糖質を摂らない食事をキープした方が脂肪利用的に良い
この2点から、スリープローや「スピード練習の前夜のみ糖質をとる」というような方法よりも完全に糖質制限を継続した方が良いと私は思います。
ただ、適応するまでの期間はスピード練習の強度が落ちますし、一時的なパフォーマンス低下は起こります。
私の場合は糖質制限スタートから8週間くらい経過した頃に納得のいくスピード練習ができるようになりました。
↓その時の練習心拍数データ(当時のブログから引用)
ウェルビーイングラボさんで取り上げていただいた記事では
「半年くらいあれば糖質制限の適応が進み、一時的に低下した体力も戻すことができると思われる。
目標のレースがある場合は半年くらいまえから準備をした方が良い。
1,2ヶ月前から始めても失敗するリスクがあるので辞めた方が良い。」
と語っています。
→『“糖質制限 × 長距離スポーツ”の教科書』より
話をまとめると
- 十分に糖質制限に慣れればスピード練習前といって糖質を摂取する必要はない(2,3ヶ月あればスピード練習もできるようになるかと)
- 適応までの期間はキツくて一時的に練習強度も低下するが、我慢して糖質制限をキープする(そうした方が適応も早い)
- メインレースに向けて半年くらいかけて準備する(体の適応には時間がかかる。長期的な視点で考える)
私も糖質制限を試して「練習ができない」と悩んで挫折したことがあります。
「自分がやっていることは正しいのか? 自分には体質的にあわないのではないか?」と不安にもなると思います。
成果を焦ってしまうのが糖質制限を失敗してしまう大きな要因です。
心にゆとりをもってコツコツと少しずつ体を適応させていってください。
追伸
紹介したウェルビーイングラボさんでは最近デイブ・スコット氏(偉大なトライアスリート)の糖質制限理論が記事になっています。
良記事だと思ったので、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
『世界の長距離スポーツ理論 by デイブ・スコット』