Rising Sun 24

【Rising Sun 24選手インタビュー】福元翔輝さん|生徒に挑戦する姿を見せたい。フル2時間22分の中学校教員がウルトラ日本代表へ

小谷
今日は、Rising Sun 24の代表選手インタビューとして、福元翔輝(ふくもと しょうき)さんにお話を伺います。

福元さんは29歳の中学校理科教員で、陸上部の顧問も担当。
先生一家のご出身で弟さんも理科の教員だそうです。

フルマラソンの自己ベストは2時間22分40秒(東京マラソン2023)。
今年3月に開催された神宮外苑24時間チャレンジで優勝し日本代表入りを決められました(記録252.104km)。

今日はプロフィールから練習内容、神宮外苑の振り返り、そして世界選手権に向けた展望などを伺いたいと思います。

挑戦と成長を自ら示す中学校教員

小谷
まずは先生というお仕事についてお伺いしたいのですが、教員になろうと思ったきっかけなどはありますか?

福元
中学の頃から意識していたと思います。
うちは先生一家のような家系だったので、自然とその道に進んだ感じです。

特に「教師になれ」と言われたわけではないのですが。
ちなみに弟も理科の教員になり、兄弟そろって同じ道を選びました。

小谷
そうでしたか。
確かに教師とか医者という職業はなんとなく親から子へ引き継がれていく傾向が強いように個人的には思っていました。

理科という教科を選ばれたのは何か理由が?

福元
小さいころから理科は好きでしたね。
身近な「なぜ?」を考えるのが好きで、それを子どもたちにも伝えたいと思ったんです。

小谷
陸上部の指導もされているんですよね?
生徒さんに交じって、ご自身も走ったりすることはあるんですか?

福元
中学生の部活中は指導に専念という感じで、自分が走ることはありませんね。
うちは中高一貫なんで、高校生の合宿に対応するってなったときは一緒に走りますけど。

小谷
部活動の指導って先生によっていろいろな考えがあるのでしょうけど、福元さんはどんな指導をされているのですか?

福元
走りを速くさせようっていうのは全く思っていませんね。
中学生の部活というのは、まずは一人の中学生としての健全な成長というのが大事だと思いますので。

なので、競技的な指導はあまり重視せず、それよりも部活を通して人間的なものが成長して欲しいと考えます。
基本的ですが、挨拶だったり時間を守るっていうところを第一にやっています。

喘息をきっかけに「鍛える」ために陸上を志した中学 高校 時代

小谷
福元さんが陸上を始めたのはどんなきっかけからでしたか?

福元
元々喘息を患っていまして、今も治り切っていなくて吸入薬を持っています。

そのため小学校の頃はあまりスポーツができなかったです。
それで、ちょっと「鍛える」という気持ちで中学の部活で陸上を始めました。

ちゃんと競技者としてやったのは中学から高校までです。
大学に入ってからは勉学の方で時間を取られてしまったり、若干高校までで燃え尽きてしまった感もあったので走っていませんでした。

小谷
高校のときはどれくらいの記録まで行けたんですか?

福元
1500mを中心でやっていましたが、高校3年のときに4分02秒とか。
5000mは確か15分20秒くらいだったと思います。

小谷
そうでしたか。
あれっ? ということは、5000mも当時より今の方が速いですよね?

福元
そうですね。
社会人4年目か5年目のときに14分30秒台を出しています。

小谷
大学のブランクから再開して、社会人になってから更に記録を伸ばせたってことなんですね。
それにしても、福元さんはやはり今回の代表メンバーの中ではスピードがダントツに速いですね。

フルマラソン向けの練習で24時間走にも対応できる

小谷
次に練習についてお聞きしたいと思います。
福元さんの代表的な1週間のメニューはこちらということですね。

月 rest 
火 400m12(80") i=200m(70") 練習会ペーサー
水 1km(3'00)6 r=90"
木 60' jog(4'15/km)
金 1km*6(3'30) i=200m(100") 練習会ペーサー
土 3000m(9'00) or 5000m(15'30)
日 60' jog(4'00/km)

月間走行距離にすると、だいたい400kmくらいとのことでしたね。

福元
そうですね400kmいけば良いかなというところです。

小谷
これまでインタビューしてきた他の代表選手のメニューと比べると、ボリュームとしては少ない印象ですね。

そして、ペースは圧倒的に速い。
だから、運動時間という面でみるとかなり短くまとまっていますね。

ボリュームの少なさを余裕度の向上でカバーしていく

小谷
事前のメッセージの中で福元さんは
『フルマラソンと同様のトレーニングをしながら、5:00/km切りのペースをジョグ感覚にできるように仕上げていく方針』
というお話をしてくださいましたね。

ただ、私からすると福元さんレベルの人が「5:00/kmがジョグ感覚にならない」なんてことがあるのか不思議に拝見しました。

練習の仕方によっては、福元さんでも5:00/kmの余裕度が下がってしまうことがあるのでしょうか?
そもそも、このペースって福元さんにとってはどんな感覚なんでしょう?

福元
一応その5:00/kmというラインとしては、今の日本記録が285kmだったと思うのですが、世界と戦うんだったらそれぐらいっていうのが、ざっくり自分の中でありまして。
※5:00/kmで走ると24時間で288kmになる

私の場合、練習で1回で走る距離とか月間距離が少ないっていうのはもう自分でも分かっているので、いかに心拍を上げないで5:00/kmを走れるかが大事かなと考えています。

そして、練習がジョグばかりだと、たぶん5:00/kmはそんな楽に走れないかなっていうのは僕の中でもあります。

小谷
そうなんですね。ジョグが中心になってしまうと、5:00/kmが「無理してる」訳では全然ないけど、「楽々」では無くなってしまう可能性もあると、そういう感覚ですかね。

福元
そうですね。
先ほどの練習メニューを見ていただいたら分かると思うのですが、私は「ジョグ」っていう感じではそこまで取っていないんです。

小谷
うんうん、60分 jog(4:00~4:15/km)とあるから、決してゆっくりではないですよね。

福元
そうです。jogと書きましたが、実質的にはイージーペースじゃないけど、ちょっとしたペース走というような意識です。

アップとかダウンのときは本当にゆっくり走りますが、そのときはもう6:00/kmとかで、5:00/kmより遅くなっちゃうんです。

小谷
つまり、福元さんにとっては5:00/kmというのは「アップやダウンよりは速くて」「60分jogの日よりは遅い」ちょうどスッポリと空いたペース域になる訳ですね。

そして、普段からそのペースで走っていないから、やはり慣れていないというか、そういう不安もあるのでしょうね。

心拍数をバロメーターにウルトラを走る

小谷
ところで、福元さんは最高心拍数って大体どれくらいですか?

福元
本当に追い込めたときは190くらいです。

小谷
1000m6本のインターバル練のときはどうですか?

福元
最後の方は170~180くらいになりますね。

小谷
4:15/kmのペースだとどれぐらいですか?

福元
140くらいだと思います。
今は暑さとかでちょっと高めにでることもありますが。

小谷
なるほど、では5:00/kmではどうですか?
あまり走っていないから分からないかもしれませんが。

福元
神宮外苑24時間走のとき実は心拍数を主なバロメーターにしてたんすけど、たしか120くらいでした。

小谷
なるほど、たぶん大会の興奮とかで少し心拍数が高めに出ていた可能性はありますが、やはり120くらいだと十二分に余裕がある感じですよね。

個人的には今の心拍数の推移が結構面白く感じました。

心拍数が170とかで走っているときは、当たり前ですが私より福元さんの方が断然速くて。

でも、4:15~5:00/kmのペースでは私の調子の良いときと心拍数がそこまで変わらないんですよね。
私はこの辺りのペースには得意意識を持っている方なのですが、それがこの数値に現れているのかもしれません。

小谷
福元さんは24時間走のペースの組み立て方としては心拍数がベースにあるのですね?

福元
はい、そうですね。神宮外苑では最後まで130を超えることが無いように意識していました。

私は経験がないので色々と調べて、そのときにブログとかの情報で心拍数をバロメーターにというのを拝見したので参考にしました。
実際に試してみて、たしかに余裕度との相関が高いかなと思います。

小谷
なるほど、これはウルトラマラソンを走る他の読者の方にも参考になりそうな情報ですね。

では、次の世界選手権でも心拍数130以下というのを1つの方針にしていくのでしょうか?

福元
そうですね。今はちょうど心拍数を130で抑えながら走れるペースを上げていくことを意識していて、今は4:40/kmくらいでも行けるかなというところに来ているので、そういう視点では神宮のときより状態は上げられているのかなと思います。

2回目の24時間走で代表入り。神宮外苑24時間チャレンジの振返り

小谷
優勝した神宮外苑24時間チャレンジのことを少し伺いたいのですが、疲れが気になり始めたのは何時間目くらいからでしたか?

福元
疲れの程度によるのでちょっとお答えしにくいところもあるのですが、僕は正直、体力的なものでいうと、24時間もった(持続できた)方だと思うんですよね。

でも、18~19時間あたりからアキレス腱の痛みが酷くて、疲れたというより痛みが苦しかったですね。

小谷
そうでしたか。
吐き気とか気持ち悪いとか、そういう系のことは起こらなかったのですか?

福元
はい、事前に色々と情報収集してある程度は対策ができたのだと思います。
最初の24時間走だった弘前では吐き気で失敗してしまいましたが。

小谷
そういった失敗経験から1つ1つ改善して修正していけるのは素晴らしいことだと思います。

補給食はどんなものを食べていましたか?

福元
最初の3~4時間は特に計画などせず「欲しいもの食べよう」という感じで、チョコとかクッキーとかお菓子を食べていましたね。

「24時間もあるんだから、気を張り詰めないように好きなものを食べよう」と最初は思っていました。

5時間くらいで初めて小さいおにぎりを食べました。
そのとき、凄く寒かったのもあると思うんですが、じわっと温まる感じがして、そこからは「これは食べた方が良いものではないか」と思い、1時間ごとにおにぎりを食べるようにしましたね。

あと、エイドで提供されていたコップ一杯分の温かいスープですね。

アキレス腱が痛くなってからは、止まってからの走り出しがとにかく痛かったので、なるべく止まらないで良いようにジェルを中心にしましたね。

小谷
痛くなってくると、止まってから走り出すのがキツイというのは凄く分かります。

福元
はい。なのでもう本当はスープとかを飲みたかったんすけど、それよりかは止まらないことを優先しました。

小谷
お話を聞いていて、お菓子メインからパワーになったおにぎりを中心に変更したり、痛みが出てからはジェルにして止まらない走りにしたり、臨機応変にできていることが凄いなと思いました。

そういう計画を変えるのって、私はちょっと苦手なタイプなんですよ。

世界選手権への意気込み|チームを勢いづけるのが自分の役割

小谷
最後に、世界選手権に向けた目標を教えてください。

福元
まずは「諦めずに戦い抜くこと」というのが第一にあります。

順位という意味では、日本チームがメダル取れるようにとは思っています。

まだ24時間走を2回しか経験していないので分からないのですが、この団体戦で自分に求められている役割というのは「チームを勢いづける」といいますか、多分ちょっと自分が攻めた走りをすることかなと感じています。

チームでは他の皆さんが経験があって、しっかり記録を残してくださると思いますし、実際に荒井さんからは「自分たちが支えるから攻めて大丈夫だよ」みたいな感じで励ましていただいていますし。

だから、自分はその役割を果たせたらなと思っています。

小谷
団体戦に向けて、そのように積極的な考えを持っていてくださって、とても嬉しく、心強く感じました。

団体戦としてみたとき、メダルを狙いに行くならやはり誰か一人は270kmは超えて欲しいと私は分析しています。

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純粋な走力としては日本チームトップの福元さんが前の方を走っているというのは他の選手としては気持ちを切らさない大きなパワーになります。

各選手が自分のチームへの影響(それは最終結果の距離ではなく、プロセスにおいて周囲を鼓舞することも含む)を理解しながら走るからこそ全体の強さにつながる。

そういう意味で、福元さんの役割は本当に重要です。

とはいえ、私たちの煽り(?)は気にしすぎず、マイペースで福元さんご自身が納得のいく走りができるよう応援していますね。

24時間レース中ずっと一緒にいるわけなので、お互い励まし合いながら、より良い記録を出せれば良いですね。

今日はありがとうございました!

福元
ありがとうございました!

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