私は去年の10月から「糖質制限をウルトラマラソンの記録向上に活かせないか?」というテーマで実験をしています。
今日はこの3ヶ月半で起きた変化について紹介します。
最近初めてブログを見てくれたという方も増えてきているので簡単に背景を書きます。
私(小谷修平)は2011年から24時間走をメインに走っているランナーです。
自己ベストは256km(2012年)
2013,2017年の24時間走の世界選手権の日本代表選手です。
(2017年は諸事情があり欠場しました)
ランナー向けの商品開発・販売などを仕事にしています。
仕事柄多くのランナーのお客様から
「フルマラソンをサブ3.5達成した」
「ウルトラを初完走した」
というような喜びの声が届きます。
そんな声に囲まれる中で「自分自身も新しい挑戦がしたい」という思いが強くなっていきました。
そして今年のゴールデンウィークにハンガリーで開催される6日間走にエントリーしました。
6日間走で814.4kmの日本記録に挑戦する。
そしてそのためにできる限りの準備をする。
これが今の私の楽しみです。
6日間走は初めてなので、正直なところ何が課題になるのか想像もできません。
ただ、想定できる課題の1つに「エネルギー補給」があります。
800km以上走る&6日分の基礎代謝を合わせると膨大なエネルギーが必要です。
この膨大なエネルギーを体内の脂肪+レース中の食事でまかなわないといけません。
24時間走では私は「糖質を人一倍食べる」ということでそれなりの成果を出せました。
しかし6日間となると「脂肪を食べてそれをフル活用できる体にする」のが望ましいと考えました。
(経験上、糖質メインの食事を6日間続けるのはきつそうだと思ったからです)
そこでエネルギー補給という課題を解決するための肉体改造が必要になったのです。
脂肪を使えるようになるための練習や食事法は色々あります。
(空腹状態で走るとか、2日連続でLSDをするとか)
今までの自分から大きく飛躍するために私が挑戦してみようと思ったのが「糖質制限」でした。
糖質制限が良いか否かは意見が分かれていたので「とりあえず試してみよう」というくらいの気持ちで始めたと思います。
私は糖質制限は2回チャレンジしています。
去年の6月に1回目(挫折)、10月から2回目(現在まで継続中)。
6月の1回目のチャレンジは全然走れなくなってしまい挫折しました。
体(とくに脚)が重くて、走りに家を出てもたった5kmくらいで折り返したくなるのです。
「家を出た瞬間にハンガーノック」と当時の自分は語っています。
これでは良い練習ができなくて強くなるどころでは無いと判断してやめました。
このときはパン屋さんやスーパーの惣菜コーナーなどの匂いだけで食欲を抑えるのがきつかったと記憶しています。
ただ、頭はさえていたので、頭脳労働ならできるだろうなと思いました。
1回目の糖質制限チャレンジを終えてから、エネルギーの課題を解決する別の方法を色々模索しました。
しかし、決定打となる答えは見つけられないまま時間が過ぎていきました。
2017年の9月末、糖質制限に再びチャレンジするきっかけがやってきました。
スパルタスロンで日本人記録を更新した石川選手と話をする機会があったのです。
元々彼とは知り合いで、彼が糖質制限をしているということは知っていました。
ただ、改めて実践して結果を出している人と会ってもう一度考えてみました。
「糖質制限をして成功している人がいるのはなぜだろうか?」
「一方で自分みたいに失敗したと思える人もいるのはなぜだろうか?」
「お酒が飲める人と飲めない人がいるように"人による"で片付けられることなんだろうか?」
「自分のやり方が間違っていただけではないのか?」
色々と考えた結果、次は関連書籍などを読み込んでしっかり勉強してから再チャレンジすることにしました。
(そしてこれがとても価値ある選択であったと今は思っています)
10月、糖質制限を始めるとすぐに変化がありました。
まず頭がさえた感じがします。
午後の眠気が無くなり、仕事の生産性が高まります。
そして不思議なことに今回は「走る」こともできるのです。
最初はやはり脚の重さを感じましたが、下旬には15kmくらいの練習ならできるようになってきます。
(この時の状態を記録したブログはこちら)
「なぜ今回は体が適応できたのか」はわかりません。
「糖質の量」だけでなく、良質な脂をとるようにしたなどはありますが、それだけとも思えません。
ともあれ10月は200kmの練習量をこなすことができ、「もしかしたら上手くいくのでは」という期待感が出始めます。
11月になるとスピード練習もできるようになってきました。
月間380kmの練習を消化します。
ここ数年の私は350kmそこらが多かったので、糖質を摂取していた頃と同じくらいの練習がこなせたという感覚です。
この頃から糖質制限賛成派に少しずつ気持ちが動いていきます。
(11月下旬のブログ)
12月には50km程度の練習を朝食抜き・無補給でこなせるようになります。
しかも何も食べない方が調子が良く感じられるなど、以前の自分とは全く違った体質になっていました。
月間520kmの練習を消化するほどまで体力はついてきましたが、一方で問題も生じてきました。
胃がきついのです。
練習量にともない消費エネルギーが増えるのでエネルギー源となる「肉」をたくさん食べるようになってきました。
「お腹がすく」という感覚ではないのですが「肉を食べたい」という欲求が強くなったからです。
すると内臓に負担がかかってきたのか肉を食べ過ぎて翌朝の胃が重いと感じる日がでるようになります。
この「エネルギーのために肉を食べたいけど食べられる量が限られている」という問題は脂肪の摂取量を増やすことで解決しました。
具体的にはバターやクリームチーズをそのまま食べるようにしました。
すると肉を食べたい欲は収まり、内臓の負担感も減ったのです。
これなら今後もっと練習量が増えても胃もたれを起こさずに糖質制限の食事を継続できそうです。
今はちょうど1月を折り返す頃です。
概ね1月は600~650kmくらいの練習量になりそうです。
つい先日の月曜日は空腹状態で走るために18時間絶食してから50kmジョグをしました。
「ちょっと何か食べたいな」と思ってから走り始めましたが、動いているうちに空腹感がなくなりました。
走り終わってシャワーして結局23時間くらい絶食が続いていましたが「お腹すいた!」という感覚はありませんでした。
これだけでウルトラが強くなるほど単純ではないと思いますが、補給できない状態でもある程度の運動強度で走れそうなのは今後の武器になるのではないかと期待が膨らんでいます。
体のだるさなどもなく29歳にして今は人生で最も回復力が高いと感じています。
一方で筋肉の固さやアンバランスが生じてきて筋肉・骨格系はこの間の急激な練習量増加に少しずつ消耗してきているようです。
主観的には元気でまだまだ走れますが、筋肉の適応が追いついていません。
ここのバランスを崩さないように故障に注意しながらやっていくのが次の課題となってきそうです。
今考えると、1回失敗した糖質制限を「自分には合っていない」と安易に捨てずに再チャレンジして良かったと思います。
・偏見を捨てて「成功している人がいる」という事実に素直に目を向けたこと
・勉強して粘り強くトライしたこと
が新しい自分につながったのだと思います。
まだ結果も出していない段階で「糖質制限は凄いよ!」と諸手を挙げて賛成することはしません。
新たな問題に後から気づく可能性もあります。
これからも中立的な立場で自分に起きた変化を報告していきたいと思います。