フルマラソン

1回でも効果を生む、大会を意識したフルマラソンの距離走|タイム別ガイド付き

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

今日は1~2回の実施でも効果のあるコスパの良い練習『大会を意識した距離走』についてご紹介します。
(1年前にも類似のテーマを扱いましたが、内容を強化して再シェアします)

フルマラソンの大会が近づき「そろそろ30km走とかしないといけないかな」とプレッシャーを感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

私もフルマラソン対策をする場合は大会前に2回はレースペースに近いペースで25~30kmくらい走る練習は大切にしています。

このような、ある程度速いペースで長い距離を走る練習はとても効果的です。
今日は、この距離走の意義と効果的なやり方について考えたいと思います。

 1~2回でも大きな効果を生む距離走

距離走が効果的な理由は、私たちがレースでぶつかる「壁」のメカニズムと関係しています。

レース中に訪れる「壁」は多くの場合、脳が安全システムとしての機能からブレーキをかけることが原因です。

脳が「このペースのまま残り距離を走ると体が壊れてしまう」と判断すると、走るのを辞めさせようとして「壁(疲労感、体が動かなくなる)」が発生します。

このとき、脳は生存本能として正しく機能しています。

しかし、この安全装置があまりに安全ゾーンを広めに(余裕をもって)作動するようになっていると、記録を目指したいランナー的には困ってしまいます。

まだまだ本当はゴールまで行けるほど肉体的にも余裕があるのに強制的にストップがかかってしまうからです。

では、この脳の安全システムの作動をより適切にして、より高いポテンシャルを発揮できるようになるためには、どうしたら良いのでしょうか?

それは、脳に「この経験は前にもしたことがあるから大丈夫だ」と思わせることです。

そして、それはフルマラソンにおいては「レースペースに近いペースで25~30kmのようにある程度長い距離を走る」という練習を事前にしておくことで実現ができます。

ここで大切なのは「レースに近い状況」を再現することです。

42kmをゆっくりすぎるジョグで走っても、レースで感じる負荷を体験できないため、この練習で狙える効果は得にくくなります。

逆に、レースよりかなり速いペースで10km走っても、レース後半の粘りに必要な経験は得られません。

レースに近いペース感覚で、ある程度の距離を走ることが大切になります。

これが距離走が効果的であるという理由です。

このような特徴があるゆえに実践的な距離走はその実施回数がたった1~2回だけでも大会本番では大きな効果を生む可能性があります。

(対して、一般的な練習=ジョグやインターバル走などは何度も繰り返さなければ大きな違いを生むことができません)

実力別・効果的な距離走のやり方

さて、距離走へのモチベーションが上がったところで、その距離走をどのように走るのかということを考えましょう。

以下は目標タイム別におすすめの練習ペースを私なりに考えた表です。

目標タイム 練習ペース(/km) 距離
3:00 レースペース+15秒程度 25-30km
3:30 レースペース+10-15秒 25-30km
4:00 レースペース+5-10秒 25-30km
4:30 レースペース+0-5秒 25-30km

実力者ほどフルマラソンを主観的に高い強度で走っているため、練習ではゆとりをもたせてOKです。

一方で、ゆっくりペースの方ほど実際のレースペースに近い練習でも問題ありません。

練習を終えたときの感覚ですが「苦しかったけど頑張りぬいた」「余裕をもって終えられた」のどちらでも意味があると私は考えています。

前者であれば、レースに類似したストレスを脳が一度体験したことでレース本番で「壁」が発生しにくくなるといえます。

後者であれば、「練習でここまでは余裕で走れた」という自信が「壁」を起こしにくくしてくれるでしょう。

距離走がどのようなパフォーマンスで終わっても、その良い面に目を向けましょう。

それが心理的な効果となってパフォーマンスを更に高め、練習へのモチベーションにもつながっていきます。

実践のヒント

1. レベルによって負荷が大きく変わることを理解しましょう

この練習の目的は「レースに近い経験をすること」です。
そのため、実力によってこの練習の負荷は大きく変わります。

サブ3レベルの方にとっては、25~30kmを練習ペースで走っても1時間50分~2時間15分程度で、レースペースより15秒ほど遅いため比較的余裕を持って走れるでしょう。

この練習で疲れても、翌週の練習リズムを大きく崩すことなく、フィットネスの向上を継続できます。

一方、サブ4:30レベルの方にとっては、25~30kmをレースペースに近いペースで走ると2時間40分~3時間15分程度かかり、相当な負荷になります。

一般的な傾向として、実力の高い人ほどフルマラソンのゴール後も元気であることが多いですが、同様のことがこの練習でも起こります。

練習で感じた疲労感に応じて、翌週はしっかりとリカバリーに努めることが大切です。

結果として翌週の練習負荷が下がり、フィットネスの向上という観点では効率が良くないかもしれません。

フィットネス向上のためには、メリハリをつけながらもある程度連続性のある練習が求められるため、1回でダメージが大きすぎる練習は非効率になってしまうからです。

しかし、この実践的な練習の経験によって得るものは非常に大きいと考えています。

逆に、サブ3レベルの方は実践経験ももちろん重要ですが、どちらかというとフィットネスの向上に重きを置いた練習計画を組むことが個人的にはおすすめです(つまり、負荷の高すぎる練習は控えめにして、連続性を意識する)。

このように、同じ「25~30kmの距離走」でも、レベルによって練習の位置づけや、その後の回復期間が大きく異なることを理解した上で、無理のない範囲で実施しましょう。

2. レース本番のシミュレーションとして活用する

距離走をレース本番のシミュレーションとして活用することで、さらに効果を高めることができます。

レースを意識した朝食(内容、時刻)を摂ったり、レース本番と同じタイミングで補給をすることで、当日の不安を減らし自信を持ってスタートラインに立てるようになります。

補給のノウハウについてはこちらの記事で解説していますのでご参照ください。

フルマラソンのスタート前とレース中の補給|よくある失敗の予防と記録向上の方法

フルマラソンの大会で準備したいおすすめ補給食、サプリメントをまとめました。この記事を読むことで「練習で鍛え上げた実力を100%発揮する」ことに役立ちます。大会での快走を目指すランナーの方はぜひご覧ください。

続きを見る

3. 実施のハードルを下げる工夫

この練習は負荷が高いので実施するハードルが高いのも事実です。
私もモチベーションが高まっていないと、つい後回しにしたくなってしまいます。

ハーフや30kmの大会を活用したり(ハーフの場合は距離が25kmに満たないですが、厳密にこだわる必要はありません)、練習会や友人と走るなど、自分に合った実行のしやすい方法を見つけると良いでしょう。

まとめ

今日の重要ポイントをまとめます:

  • 距離走は1~2回でも大きな効果を生む(脳の安全システムへの働きかけ)
  • レースに近いペース・距離で走ることが重要(遅すぎても速すぎてもダメ)
  • 実力によって適したペースが異なる(表を参考に)
  • レベルによって負荷が大きく変わるので、回復を考慮した計画を
  • 大会や練習会を活用し、実行しやすい方法を見つける

この距離走をしておけば、大会本番でもより自信をもってスタートラインに立てることでしょう。

負荷の高い練習ですが、やり抜けば大きな価値があると思います。

フルマラソンに向けて意欲のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

-フルマラソン