ウルトラマラソン

ウルトラマラソンの補給方法|失速を予防し長時間走り続けるために

2023年10月19日

この記事ではウルトラマラソンの補給方法についてまとめます。
ウルトラマラソンはレース中の補給が上手にできるか否かで結果が大きく左右されます。
練習の成果を100%発揮できるようにぜひこの記事をお役立てください。

この記事では100kmマラソンをベースに考えていますが、24時間走や250km級のレースでも基本は変わりません。

一番大切なのは優先順位が高い「糖質・水分・電解質」をきちんと摂取すること

あれもこれも摂取しなきゃという不安を乗り越えること

ウルトラマラソンの補給で以前の私がしていた最も大きな失敗は
「あれもこれも摂取をしないと不安になり、重要な栄養素をおろそかにしてしまっていたこと」
でした。

スポーツショップにいくとアミノ酸、クエン酸、色とりどりのジェル...と多くの商品が並んでいます。

それぞれの商品に「マラソン完走に必須!」なんてポップに書かれていると、どれも必要そうな気がしてきました。

そして、成分の働き方や使うべきタイミングもあまり考えず、「サプリをケチって本番で失敗したくない」という気持ちで多くの商品を使っていました。

しかし、ウルトラマラソン経験者の多くが語るように、レースの後半などでは内臓も疲れてきて、サプリやエイドの食事をするのも大変です。

その結果、あまり重要でないサプリを飲むために、本当は重要なエネルギー補給などがおろそかになり、苦しい走りになってしまうこともありました

長時間走りながら食べ物を消化吸収するのは体にとって大変な負担です。

ウルトラの補給で大事なのは優先順位をきちんとつけて、大事でないものは摂取しないという勇気を持つことだと思います

糖質・水分・電解質。それで100点満点中の80点は確保できる

では何が優先順位の高い栄養素なのか?
それは、糖質、水分、電解質の3つだと私は考えています。

▼優先順位の高い栄養素

  • 糖質(ジェルやおにぎりなどの炭水化物の多い食品に含まれる。糖質+食物繊維=炭水化物)
  • 水分
  • 電解質(塩分補給のようなもの。厳密にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リンなどの汗に溶けている成分のことをまとめて電解質といいます)

これは過去に実施したセミナーで経験豊富なウルトラランナー達が語った声を集計することからわかりました。

例えば、アミノ酸なら効果を感じる人もいれば感じない人もいます。
しかし、エネルギー補給無しや水分補給無しで走り続けられる人はいません。

補給しないとほぼ必ず欠乏症状が出て、かつリタイアや大幅なペースダウンにつながる要素。
それが糖質・水分・電解質の3つです

まずはこの3つをきちんと摂取して、余力があれば下記で紹介するプラスαの成分を使うことをお勧めします

糖質補給の方法

糖質が不足するとどんな問題が生じるか

糖質が不足するといわゆる
・ガス欠(筋肉中のエネルギーが枯渇した状態)
・低血糖(血液中の糖質が減った状態)
に陥ります。

ガス欠は脚が重くて体が思うように動かせない状態(「脚が売り切れた」という感覚)。

低血糖は「集中力が切れる」「空腹感」「不安感(「完走できないかも...」というような思いが湧いてくる)」などに通じます。

補給量の目安を知ること。多くの人が糖質不足で苦しい思いをしている。

レース中に摂取すべき糖質の量は下記の条件によって変わってきます。

  • レースの距離、高低差によるハードさ
  • 体重(体の重い人ほどエネルギーが必要)
  • 脂肪活用能力(エネルギー源として糖質への依存度が少なく、体脂肪を使って走れる能力が高いほど糖質補給は少なくて済む)
  • ペース配分(高い心拍数で走るほど糖質は必要になる)

上記のように前提条件で違いがあることを踏まえたうえで、ザックリと目安を紹介すると下記の表が1つの目安となります。

(表の値は私が理論的な計算を基にして独自に算出したものです)

レース中に必要な糖質補給の目安(グラム)体重別・距離別

例えば体重60kgのランナーが100kmを走る場合、レース中に486~561gの糖質を補給するのが、ガス欠によるパフォーマンス低下を防ぐための目安となります。

10kmごとに換算すると、49~56gくらい。

補給食に含まれる糖質の例
・バナナ1本 22g
・ジェル(アスリチューン)26g
・スポーツドリンク1杯 5g

なので、体重60kgのランナーの場合

「10kmごとにスポーツドリンク2杯+バナナ2本」

をゴールまで摂取し続けることが求められます。

この量は多くのランナーにとって
「そんなに食べないといけないの?」
と驚かれる量です。

しかし、私が実施してきたセミナーで上記の表を参考に補給を見直した方の大多数が「以前より断然楽にウルトラを走れるようになった」と語っています。

つまり、実は多くのランナーが糖質の補給不足で苦しい走りを強いられていることが推測されます

補給食のおすすめは、自分がストレスなく「食べやすい」「食べたい」と思えるもの

糖質補給の量の目安がわかったろところで、次に「具体的に何を食べれば良いか?」を考えましょう。

私がウルトラマラソンにおける補給食で大切だと思うのは
内臓疲労のあるようなレース後半でも食べること自体にストレスが少なく、食べる楽しみを感じられるような食品(ジェルもOK)を選ぶこと
です。

ウルトラマラソンあるあるの一つに「準備の段階では食べられると思って用意したものが、実際のレース中では全く食べる気が湧いてこず使えなかった」というものがあります。

どれだけ栄養成分が優れた食品でも食べられなければ意味がありません

私は何度も24時間走の日本人トップ選手の補給食を見てきましたが、人それぞれ食べているものは違います。

ジェルだけの人、逆にジェルはダメで普通の食品が多い人、お菓子だらけの人など。

その多様性を見ていると「糖質補給の正解はコレ」という絶対の補給食はなく、自分がストレス下でも「食べられる」ものを選ぶのが大切なのかなと思います

また、好物は精神的なリフレッシュ効果があります。

疲れは精神面からくるところも大きいので、好きなものを食べるというリフレッシュ効果は過小評価できません。

24時間走世界選手権の日本テント。選手それぞれ補給食はバラバラ。

ウルトラは食べ続けること自体が難しい。胃腸障害の対策が大切。

糖質をしっかり補給するのが大事と頭でわかっていても、実際には吐き気や内臓疲労で食べられないという悩みを抱えるランナーが多いようです。

下記のデータが示すように、ウルトラを完走できなかった人たちのリタイア原因で最も主要なものは「吐き気・嘔吐」です。

100マイルトレイル、リタイアの主な原因とその比率

出典『TRAINING ESSENTIALS FOR ULTRARUNNING』JASON KOOP

しっかり食べてレースの最後まで力強い走りができるようになるための胃腸障害対策はこちらの記事で紹介しています。

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水分・電解質の補給の方法

水分・塩分の状態を表すマトリクスを思い浮かべ、スタートからゴールまで中心に留まり続けるよう補給する

ウルトラマラソンを走っていると、発汗、尿、呼気によって体から水分と電解質(特に重要なのが塩分)が喪失されていきます。

この喪失された分を過不足なく補給することで体の健康状態をキープし、失速を予防することができます。

実践上のアドバイスとしては、走りながら下のマトリクスを頭に思い浮かべると良いでしょう。

頭の中で水分と塩分のマトリクスをイメージし、自分がどの状態にあるのかを体の状態とそれまでにしてきた補給から推測します。

スタートからゴールまで中心にいられるよう心がけ、中心からズレたと感じたら戻るように修正します。

【状態の動き方】

  • 水分を補給するとマトリクスの上方へ
  • 塩分を補給するとマトリクスの右側へ
  • 発汗は左下へ、尿は(左)下へ

【自分がどの状態にいるのか推測する判断材料】

  • 水分過多だとトイレ(小)の量が増える。手がむくみやすい。
  • 水分不足だと唾液の出が悪くなる、トイレ(小)の量も減る。喉が渇く。
    脱水症状(後述)が出て、暑さへの耐性が減る(体温調整の機能が低下する)
  • 塩分過多だと口の中が苦いのどの渇き、塩分の濃いものが飲みたくなくなる(真水が飲みたくなる)
  • 塩分不足は低ナトリウム血症の症状(後述)が起きる

▼脱水の症状

  • めまい
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 筋肉痛
  • 集中力の低下
  • 体温や脈の上昇

▼低ナトリウム血症の症状

  • 運動能力の障害
  • 手足のむくみ
  • めまい
  • 嘔気、嘔吐
  • 頭痛
  • 意識が遠のく
  • 怒りっぽくなる、混乱する
  • けいれん
  • 尿が出なくなる
  • 眠気

下記によくある失敗事例を紹介します。
それを見ながらマトリクスの使い方をイメージしてみてください。

スタートで整列しているときやレース序盤で早くもトイレ(小)に行きたくなってしまう

これは、スタート前に飲みすぎてしまい「水分過多・塩分正常」のゾーンに入ってしまうことでよく起こります。

大会のスタート前は緊張によって唾液が出にくくなるので、それを「のどが渇いている(体が水を欲している)」と勘違いして飲みすぎてしまうことがあります。

この症状で悩んでいる人はスタート前の水分の飲みすぎを減らすようにすると解消すると思います。

スポーツドリンクで塩分が十分と勘違いして低ナトリウム血症になってしまう

一般的なスポーツドリンクは塩分濃度が1.0g/Lくらいです。

しかし、私の経験上(塩分補給の目安にも個人差はありますが)、2.3~2.5g/Lくらいだと発汗とちょうど釣り合うようになり、塩分不足や塩分過多の状態になりにくいと考えています。

よって、水分補給がスポーツドリンクだけで、それで塩分も足りていると勘違いすると、徐々に体の塩分が不足して(マトリクスでいう左側へズレていく)、低ナトリウム血症に陥り苦しい走りとなります。

スポーツドリンクだけでなく、塩分を含む補給食を食べるなどして調整する必要があります。

私は経口補水パウダー(エブリサポートやダブルエイドという商品)を使うことがありますが、これは1包で塩分1gとたっぷりとれるので塩分補給に活用しています。

ただし、経口補水パウダーも考えなく使うと体の塩分が濃くなる(マトリクスの右側へズレていく)失敗も起こりえます。

私の経験では経口補水パウダーなどを使用して、塩分補給の平均濃度が2.7~2.9g/Lが8時間ほど続くと塩分過多の症状が出てくることが多かったです。

まとめると、塩分濃度として2.3~2.5g/Lを目安に給水していき、あとは走りながら異変を感じたら早めに対処する。

そのように心がければ、多少中心からズレても大きく外れることはなく、適切な補給修正をすればリカバリーが可能です。

ウルトラは大会中の気温差もあり。臨機応変な補給を

ウルトラマラソンは早朝スタートし、それから日中を超えるなど、レース中の気温差も大きなスポーツです。

走っているペースも最初は元気でも後半は遅くなるなど、体の発熱量も変化していきます。

よって、発汗量が時々刻々と変化していきますので、それに伴って水分補給と塩分補給の量もダイナミックに変化するものです。

自分の状態の変化を察知する感覚を研ぎ澄まし、環境の変化に臨機応変に対処できる知恵と冷静さをもてるよう、経験を重ねて学んでいきましょう。

上記以外のおすすめのサプリ成分

最後に糖質・水分・電解質以外で私が利用しているおすすめの成分をご紹介します。

上記の糖質・水分・電解質を徹底したうえで、80点を100点満点に近づけるためにご参考にしてください。

カフェイン

カフェインは次のような仕組みでパフォーマンスを高めると考えられています。

  • 脂肪の分解を促進し、エネルギーとして脂肪を利用しやすくする。
    その結果として筋肉のグリコーゲンが温存されてガス欠のタイミングを遅らせる。
  • 運動神経の興奮性を高めてより多くの筋繊維が活動に動員される。
  • 疲労感と関係する神経伝達物質の働きを阻害して、主観的な疲労感が軽減される

カフェインは即効性も高いため、レース当日の使用にはうってつけの成分です。

中にはカフェインで体調を崩してしまう方も(統計によると10%くらい?)いますが、そうでなければ最優先の成分といって良いでしょう。

マラソンにおけるカフェインの効果や活用法はこちらの記事にまとめました。

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上の記事でも紹介していますがカフェインはマンゴー葉エキスと一緒に使うと相乗効果があり、より強力になるということがわかってきています。

それを受けて、カフェインとマンゴー葉エキスをブレンドしたマラソンのレース用サプリを開発しました。

現時点で私がレース用カフェインサプリとして一番欲しいと思う成分の組合せはこれで実現しています。

Catalyst Zone

即効で最高の集中・パフォーマンス状態であるZone(ゾーン)に入れるようにサポート。レースでの使用を想定し、全ての成分を即効性で合格点のものに厳選したエルゴジェニックエイド。カフェインとマンゴー葉エキスの相乗効果で強力覚醒。水素で疲労対策。

続きを見る

ビタミンB群とビタミンC

ビタミンB群は糖質や体脂肪を分解してエネルギーを作り出す化学反応をサポートする働きがあります。

よって、ビタミンB群が不足するとエネルギーをスムーズに作れずパフォーマンスが低下してしまいます。

レース中の喪失量が多く、エイドの食事などでは必要量を摂取できないので私はサプリを使っています。

また、ビタミンCはストレスのある環境では需要量が高くなる栄養素です。
(ストレスに抵抗するためのストレスホルモンの分泌と関係している)

ビタミンCを摂取することで、レース中のストレスに体がきちんと対応できるようになります。

抗酸化物質(当日のパフォーマンスというよりは大会後のダメージ軽減のため)

ウルトラマラソンは筋損傷が多いスポーツです。

筋損傷の原因は衝撃で物理的に壊れるだけでなく、運動中に生じる活性酸素で筋肉の細胞膜が酸化ストレスを受けることも要因になっていることが分かっています。

(酸化ストレスを軽減する抗酸化物質の摂取で筋損傷が軽減することが多くの実験で確認されている)

レース当日に抗酸化物質を多めに摂取するのは当日のパフォーマンスというよりはレース後のダメージを軽減して、練習を早期に再開して実力を向上させていくためです。

活性酸素に関する詳細はこちらの記事で紹介しました。

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抗酸化物質は様々な種類がありますが、私はビタミンC,E、水素を好んで日常でもレース中でも使っています。

具体的にはCatalyst Recoveryを3時間毎に3粒ずつを目安に摂取しています。

Catalyst Recovery

「昔と比べて練習後の疲労がとれにくくなってきた」と感じたことはありませんか? 本商品は水素に加えて、エネルギー産生、組織修復、免疫などに重要なビタミン類を含有。「リカバリーを早くしたい」「いつまでも元気にスポーツをしたい」という方におすすめ。

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まとめ

  • 「あれもこれも摂取しなきゃ」と不安にならず、まずは基本の糖質・水分・電解質を抑えることを優先する
  • 多くのランナーが糖質補給の不足で苦しい思いをしている。
    胃腸障害などで食べ続けることが困難になるケースが多いので、ストレスなく食べられる補給食を用意する。
  • 水分と電解質の補給は発汗量に応じて臨機応変に。マトリクスの中心に留まるようにする。
  • プラスαの成分としてはカフェイン、ビタミンB群、ビタミンC、抗酸化物質がおすすめ。

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