食事・サプリ・栄養学

ケトン体とマラソン|70kmエネルギー補給無しで走れた理由

2018年1月31日

(2021.7.10追記を文章の最後に入れています)

「1週間とかの短期間の糖質制限でも持久力アップに役立ちますか?」
というような質問をここ数日で何件かいただいています。

回答としては
「短期間ではかえってパフォーマンスが落ちるのでやめた方が良い」
と思います。

私の体験でいうと

  • 慣れてストレスが無くなり軽い運動ならできるまでに3週間くらい
  • 今と同じレベルで走れるようになるには2,3ヶ月くらい

かかりました。

なぜこんな質問が届くようになったのか?

きっかけは1/25に配信したメルマガでこんなことを書いたからです。

  • 朝食抜き(13時間絶食してから)で70kmのジョギングをエネルギー補給なしで行いました
    (電解質と水分は補給しています)
  • 過去の自分と比較してもかなり快調に70kmを通過するイメージがありました
  • 最近の論文によると〇〇というデータがあるので、糖質制限良いかもしれません

70kmを無補給で快調に走るというのは従来の私の理論と肉体では考えにくいことでした。
(70km走れたとしてもペースダウンしボロボロです)

では、なぜこんな練習ができるようになったのか?
糖質制限の食事を継続することで「ケトン体」をエネルギーとして使えるようになったからだと思います。

今日はケトン体について簡単に紹介します。
小谷お得意の手書きの図をご覧ください↓

体を動かすエネルギー源は食べ物から摂取した糖質や脂肪です。

糖質は筋肉と肝臓に蓄えられています。

糖質は細胞内で色々と化学反応を経て形を変えながら最終的には分解されてエネルギーになります

TCA回路(クエン酸回路ともいう)も化学反応の一連の流れと思えばOKです。

脂肪は主に体脂肪として体に大量に蓄えられています。

運動を始めると(=エネルギーの需要が高まると)体脂肪が分解されて血液によってエネルギーが必要な細胞に届けられます。
細胞に届けられた脂肪も糖質と同じように化学反応しながら分解されてエネルギーになります。

この化学反応の一部でβ酸化というプロセスがあるのですが、その処理が大変です(手間がかかる)。

長時間の運動や絶食時では脂肪が上記とは別のルートをたどってエネルギーになることもあります(ケトン体ルート)

脂肪は肝臓の中でケトン体という物質に変換されます。
作られたケトン体は血液でエネルギーが必要な細胞に届けられます。
細胞に入ったら化学反応で形を変えながら分解されてエネルギーになります。

ケトン体の良いところはβ酸化という手間のかかるプロセスがないことです。
ケトン体は脂肪をエネルギーにしやすいように加工した物質だと考えれば良いでしょう

例えるならば脂肪はキャベツ1玉、ケトン体はカットされて1食分ずつ袋に入ったカット野菜です。
肝臓が脂肪をケトン体にするという前処理をしてくれるので、筋肉とかでエネルギーにしやすい。

つまり、脂肪をエネルギーとして使いやすいということになります。
そしてそれは貯蔵量の少ない貴重な糖質を温存することにつながります。

70km走ることで普通はどれくらい糖質を消費するか大雑把に計算してみましょう。

消費エネルギー=体重×距離とすると
53kg×70km=3710kcal
はエネルギーを消費しています。

普通の食事をしているランナーなら50~55%くらいのエネルギーが糖質由来と仮定します。
3710×50%=1855kcal

糖質は1gで4kcalなので
1855÷4=464g

つまり、464gくらいの糖質を消費するはずです。

ただ、体に蓄えられている糖質は肝臓に100g、下半身筋肉で230gくらいです。
合計して330g、そして餓死寸前でも全て使い切れないので計算結果の464gには足りません。
→普通なら走れなくなるor著しいペースダウンが生じ、筋肉も大量に分解が必要となるはずです。

私が普通に無補給で70km走れたのは脂肪の利用が高まった証拠と思われます。
そしてその原因の一番大きい部分は糖質制限を4ヶ月継続していることでしょう。

「脂肪は使えるようになりたいけど、糖質制限まではちょっと・・・」という方もいるでしょう。
食事を楽しみながらケトン体を活用できるようになる方法を私も色々と考えて情報収集しています。

例えばさくら道国際ネイチャーラン(250km)を28時間52分で完走の実績もある千木良さん(お医者様)もその先駆けです。
意図的な絶食時間を利用してケトン体を利用できる体質にする方法を実践しておられます。

その方法は西荻式ダイエットという本で紹介されています。
↑初学者にも分かりやすく具体的に書かれています。
友人ランナーでも試している人多いです。

関連する情報があったらまた随時紹介していきますね。

2021.7.10 追記

この記事を投稿してから3年半が経ちました。

その後も私は糖質制限を継続して24時間走で255kmを快走するという嬉しい経験をすることができました。

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そして、自分がやってきた糖質制限の経験を他の人が活かせるように知識を整理して『脂肪燃焼ランニング』という名前でランナーのお客様に紹介を始めました。

糖質制限に関する関連記事はこちらの『糖質制限タグ』からご覧いただけます。

また、こちらの『超訳脂肪燃焼ランニング』という電子書籍(pdf)でも要点をまとめています。
興味のある方はあわせてご参照ください。

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