先日のHolos通信(私のメルマガ)では『故障の予防や早期回復に役立つ食習慣』というテーマを配信しました。
そこでは「第一優先は炎症を助長する悪習を極力減らすこと」「例えば、スナック菓子の食べ過ぎをサプリで帳消しにするのは難しい」というお話をしました。
その後、数名の読者の方から
「減らした方が良いとわかっているのに、ついお酒やジャンクフードに手を伸ばしてしまう」
「意志が弱い私でも、悪い習慣を克服する方法を教えて欲しい」
との声をお寄せいただきました。
そこで今回は習慣的な飲酒やストレス過食を手放すためのヒントについて考えていきたいと思います。
今回は『アルコールアノニマス(AA)』というアルコール依存からの回復を目指す人々を支える世界的な互助組織の知見を参考にしてみたいと思います。
望ましくない食習慣から抜け出したいと感じている方にとって、アルコールや薬物など重い依存症の回復を支える自助グループの考え方や方法論は非常に参考になります。
なぜなら、それらの組織は人間の「やめたいけどやめられない」という行動のメカニズムと、そこからの回復に長年にわたって向き合ってきたからです。
アルコールアノニマス(AA)とは
『アルコールアノニマス(AA)』は、1935年にアメリカで創設された、アルコール依存症者のための自助グループです。「12ステップ」と呼ばれる精神的なプログラムに基づいて、仲間とともに回復を目指しています。
この「12ステップ」は宗教的な色彩もある一方で、「自分の力だけではコントロールし難い衝動と向き合い、他者とのつながりと誠実な自己対話を通じて変化していく」という特徴があります。
ここでは詳細は割愛しますが、私は「人間の変容という点であらゆる分野に応用が効きそうな内容だな」と興味深く感じました。興味のある方はぜひ『AA 12ステップ』などで検索してみてください。
習慣を変える第一歩:「今日一日だけ」やってみる
AAでは「One Day at a Time(その日に専念する)」という合言葉が大切にされています。
「一生やめる」と思うと苦しいですが、「今日だけならやめられるかも」と思えたら、ずっと行動しやすくなります。
ウルトラマラソンで「次のエイドまで頑張る」と区切って考えると上手くいくことが多いのと似ています。
食習慣の改善においては
「今夜だけはお酒をやめてみよう」
「今日だけは食後のデザートは無しにしよう」
そう考えることで行動が変わりやすく、それが積み重なれば新しい習慣となります。
「習慣は行動という票を投じる選挙ゲーム」のようなものです。
良い行動の票が悪い行動の票を上回れば、自然と良い行動ができるようになります。
最初の票を入れるのが最も難しく、票を1回入れれば、2回目はもっと入れやすくなります。
だからこそ、1回目の票を入れることには大きな価値があります。
「今日だけお酒をやめてみよう=1票だけ入れてみよう」という考えは馬鹿馬鹿しいくらい簡単に聞こえますが、実は大きな武器となります。
HALTの法則で「衝動の正体」に気づく
AAでは「HALT」という考え方がよく使われます。これは、次の4つの状態が、衝動的な行動を引き起こしやすいというものです。
- H:Hungry(空腹)
- A:Angry(怒り)
- L:Lonely(孤独)
- T:Tired(疲労、睡眠不足)
たとえば、実際にはお腹が空いていないのにスナック菓子に手が伸びる時、よくよく自分に問いかけてみると、「今日は仕事でイライラしていた」や「ひとりで寂しかった」など、感情が原因だったことに気づくことがあります。
習慣的な飲酒や過食は、不快な気持ちを落ち着けるための手段になっていることが多いとされています。
「飲みたい」「食べたい」と思ったら、その背後にある感情に目を向けてみてください。
誘惑は感情が原因と気づいたら後述するように健全な手段によって解消できるようになります。
自分の感情と行動の「記録」をとってみよう
上記と関連して「いつ・どんな気分のときに」「どんな行動をしていたか」を記録することも有効と考えられています。
記録は、自分自身の行動パターンに気づく手がかりになります。
「こういう時に自分は弱いな」「このパターンを繰り返しているな」と気づければ、望ましくない習慣から抜け出しやすくなります。
環境を変えれば、衝動は減る~ 君子危うきに近寄らず作戦 ~
ここで私から、実生活で特に効果を感じている工夫をご紹介します。
それは「そもそも誘惑に近づかないこと」「誘惑へのアクセスを悪くすること」です。
古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』には、航海中の英雄オデュッセウスがセイレーンを回避する場面が登場します。
セイレーンとは、古代ギリシャ神話に登場する海の怪物で、美しい歌声で航海中の船乗りを魅了し、正気を失わせて座礁・沈没させてしまうと信じられていました。
オデュッセウスはセイレーンの誘惑に打ち勝つために、自らをマストに縛り付け、部下たちの耳には蜜蝋を詰めて歌声を聞こえないようにしたのです。
これは、「誘惑に近づかない」「そもそも抗う必要のない環境をつくる」という、環境コントロールの知恵を象徴しています。
ちなみに私は高校時代、テスト勉強のときは学校のロッカーにゲーム機の電源ケーブルを入れておき、自宅で勉強に専念しやすいようにしていました。今思えば賢かった選択です。
また、このブログは途中でサボって昼寝しないようにコワーキングスペースで執筆しています。
環境コントロールの例:
- お酒を冷蔵庫にストックしない
- お菓子コーナーに不要に近づかない(事前に買い物リストを作るのも良い)
- ジャンクフードの代わりに、ナッツやドライフルーツを常備する
- 不要なスマホ時間を減らすために引き出しの中にしまう
環境の影響は意志の力を超えるとも言われています。
だからこそ、「行動が起きる“前”に、起きにくい状態を作る」ことが、変化の強力な味方になります。
「やめる」だけでなく、「代わりをイメージする」
悪習を避けるコツは「やめる」を考えるだけでなく「代わりに何をする」までセットで考えておくことです。
上記のように不快な感情を紛らわせるためにお酒やジャンクフードを使っていた可能性があるので、新しくどんな方法でその感情を解消していくのかを考えましょう。
数分体を動かす(散歩、筋トレ)、音楽を聴く、創作的な活動、電話する、瞑想、読書、カフェでくつろぐ、などなど。
ストレス時の状況や個人の好みによって色々な選択肢があると思います。
自分にあった健全な感情リセット方法を見つけましょう。
また、見つけた感情リセット方法を事前に「メンタルリハーサル」で繰り返しておくことも効果的だと私は感じています。
例えば、「仕事でトラブルがありストレスを抱えて帰宅したとき、私は15分だけお気に入りの音楽を聴いてすっかり気分が良くなっている。健全な方法で悪い状態をリセットしている私が誇らしい。」
こんなシーンを頭の中でイメージします。
日常的に何度か繰り返していると、いざ本当に同じような状態になったときに「キタキタ! 練習してきた場面だ!」と適切な対応ができる確率がグンと上がることでしょう。
まとめ
- 「今日一日だけやめてみる」と考えて行動しやすくする。
- HALT(空腹、怒り、孤独、疲れ)及び不快な感情に気づくこと。記録が自己理解の助けになる。
- 君子危うきに近寄らず。環境を整えて誘惑を遠ざける。
- 健全なリセット方法を見つけ、メンタルリハーサルで練習しておく。
人には習慣を変えていける力があります。
ぜひご自身の目標へ向かって習慣の力を味方につけてくださいね。
手前味噌ですが、Catalyst Spiritsはアダプトゲンといわれる『ストレスに対する体の抵抗力を高め、様々なストレスにさらされたときに、体内のバランスを整え、本来の機能を維持・回復する働きがあるとされるハーブ』をランナー用にブレンドしたサプリメントです。
衝動の波をコントロールして、より良い自分を築きたいという方におすすめです。