今日は成長の頭打ちを打破するヒントを「月間走行距離と10kmのタイムのデータ」から検討してみたいと思います。
私たちはランニングを始めて最初の3~5年くらいの間は比較的簡単に走力を伸ばしていくことができます。
もちろん、走り始めた年齢や、それまでの運動経歴、練習の負荷を順調に高めていけたかなどによって違いはあると思いますが、一般的な市民ランナーの傾向としては
- 記録がどんどん伸びる初心者の時期があり
- それから伸び率が低下しながらもきちんと練習すれば自己ベストが出せる時期があり
- 徐々に自己ベストが難しいと感じる頭打ちの時期に入り
- 現状を維持していくことも困難と感じるようになる
走歴を重ねるにつれて、このように変わっていくと思います。
加齢による影響が出てくることも、生物的に避けることはできません。
では、成長期の若者でもない私たちが一度この頭打ちの段階に入ってしまったとしたら、そこから壁を打ち破る希望を持つことはできないのでしょうか?
もちろん、その答えはNoです。
Holos通信の読者の中には走歴が10年以上で60代に入ってからでも自己ベストを更新したという人もいます。
(ちなみに、そのようなエピソードは『お客様の活躍集』という冊子にまとめています)
では、長い走歴や加齢という影響に負けずに、自分の成長を楽しみ続けるランニングライフを取り戻すにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは一例として、走行距離と心肺機能に関するデータを分析しながら考えてみましょう。
上の表は来週から開催予定の『VO2max向上プロジェクト』の受講生のアンケートから抽出した月間走行距離と10kmタイム(現状の予測タイム)のデータです。
例えば、月間走行距離が150~199kmの人たちのうち、40分~42分29秒の人は21%、42分30秒~44分59秒の人は14%いたということを表しています。
さて、あなたはもし今よりも10kmのタイムを伸ばしたいと考えたとしたら、どのような練習をするでしょうか? 現状の練習のままでは頭打ちしていると感じているなら、今の練習から何かしらの変化をつけると思います。それは、どのような変化でしょうか?
上のデータを見て気づくことは、当たり前かもしれませんが、月間走行距離が多いほど10kmのタイムも速い(心肺機能が高い)傾向にあるということです。
心肺機能を高めようとしたら多くの人が「インターバル走のようなスピード練習をもっと増やさないと」と考えると思います。
心肺機能の向上には呼吸の上がるような練習をすることが大事というのは事実だと思います。しかし、同時に以下のことも考える余地があります。
- 月間走行距離を伸ばしていくことでも心肺機能を高めることができる。
- 上記のデータに基づけば、月間300~399kmまでは練習量を増やしていくメリットが顕著に現れやすい
- 今回のデータでは読み取りにくいかもですが、私の感覚では少なくとも月間走行距離で800kmくらいまでは、走れば走るほど体力は向上します。(もちろん、故障を予防して、きちんと疲労も回復してその練習を継続できるリカバリーの工夫があることが前提条件です)
- 人によっては、スピード練習のやり方を変えるよりも、単純に練習量を増やす方が簡単に心肺機能を高めることができる。
- 上記データで走行距離に対して10kmタイムが遅い方の人は、30分程度のキツいペース走やインターバル走をすることの伸びしろが大きい
さて、上の箇条書きの内容を踏まえて、もう一度、ご自身の10kmタイムを向上させたい場合はどのようなアプローチがあるかを考えてみましょう。
先ほどとは違う結論に至った人もいるのではないでしょうか。
これはあくまで私が個人的に感じている世の中の傾向に対する直感なのですが
月間走行距離が200km未満くらいの方々が心肺機能を高めようとしたとき、走行距離を増やさないでタイムを上げる方法を選びがちなのではないか。
そして、単純に練習量を増やすアプローチを採用すれば簡単に解決できるのに、同じ走行距離でメニューをいじって、その条件下で最適解を見つけようとするから、なかなか頭打ちを打破できないのではないか。
このような選択をしがちな理由の1つは「少ない練習量で記録を出す方が効率的でスマート」という論調があります。
実際にそういうコンテンツは人気がありますし、私の過去のブログのデータをみても効率性と関係する投稿の方がよく読まれています。
私もまた、多くの方と同様に効率性が好きです。しかし同時に、効率的なアプローチしか目に入らなくなったときに、かえってそれが可能性を制限してしまうこともあることを理解しなければいけないと感じました。
また、月間走行距離を増やさないアプローチを選びがちなもう1つの理由は「それを目指さないから達成方法が見つけられず、実現できない」というのもあると思います。
どういうことかというと、現在の自分の生活スタイルや過去の故障経験などから「自分の月間走行距離は200kmくらいが妥当だ」と信じ込んでしまうということです。
「自分は月間200kmくらい走るのが適当なランナーだ」という信念が生まれてしまうと、無意識に人は行動をそのように調整してしまいます。
一方で、もしもこの人がコーチングなどのテクニックを使って「自分は月間300kmくらい走るランナーだ」というセルフイメージができると、今は月間200kmでも、いずれ300kmに近づいていきます。
練習時間を生み出す工夫や故障しないで300km走れるようになる方法を見つけ出すように脳が働き始めるからです。
例えば、今まではデスクでしていた資格試験の勉強をランニング中にオーディオですることを思いついて時間を効率化するかもしれませんし、雨の日も走れることに気づくかもしれません。
このような発見と改善は、より高い目標を掲げ、セルフイメージもそれに合わせていくことで得られるとコーチングの分野では考えられています。
だから、まずは何よりも高い目標を持つことが大切です。
そして、目標を持つためにも自分に希望と自信をもたらしてくれる情報を選んでいくことが成功の秘訣なのではないかと私は考えています。
ps
以下に30-40代と50-60代と2つの年齢グループで分けたデータを載せます。練習を考えるときの参考にご使用ください。