こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。
この記事では、ウルトラマラソンや24時間走について、なぜハマる人がいるのか、その魅力について書いてみたいと思います。
私は今、『Rising Sun 24』というプロジェクトを立ち上げています。
Rising Sun 24は、2025年10月18-19日に開催される24時間走世界選手権の日本代表選手を応援しながら、一緒に挑戦を楽しもうというプロジェクトです。
プロジェクトの詳細はこちらの特設ページをご覧ください。
Rising Sun 24をご覧の方々の中には、すでにウルトラや時間走を経験している方から、まだ走り始めたばかりという方まで幅広くいらっしゃると思います(中には「自分は走っていないけど友人を応援したい」という方もいらっしゃるでしょう)。
皆で24時間走世界選手権の応援を楽しむためには、競技への理解に関するギャップを埋めていく必要があると私は感じています。
そこで、今日は「なぜ、一見すると過酷なウルトラマラソンが面白いのか?」について、私なりの考えをシェアしていきたいと思います。
24時間走の魅力について、一般の方にもスッと分かりやすいようにお伝えするためには、24時間走の『特徴・差異性』についてお話しするよりも、まずは『普遍性・共通性』に注目する方が良いのかなと直感しています。
24時間走にハマる人は、実は野球とか、チェスとか、絵画などの創作活動とか、一般的に広まっている他の趣味と同じように熱中している。そう私は捉えています。
では、熱中しやすい趣味の共通項とは何なのか? そのヒントはM.チクセントミハイが著書『フロー体験 喜びの現象学』で語っています。

M.チクセントミハイは、心理学の分野で世界的に知られる権威です。
彼は「人はどんなときに最も幸福を感じるのか?」という問いに取り組み、何千人もの人々へのインタビューを通じて研究を重ねました。
その結果、人が最も幸せを感じているのは、集中して何かに没頭している「フロー状態」にあるときだと明らかにしました。
フローの例として、ロッククライマーが絶壁に挑んでいるとき、音楽家が作曲しているとき、チェスプレイヤーが好敵手と対局しているときなどがあります。
スポーツ、文芸、創造的な活動など分野は様々ですが、これらの活動に没頭している人たちは、多くの共通した感覚を持っていたそうです(例えば、時間があっという間に感じられ、「自分という感覚」が消滅するなど)。
書籍の中で、ある若いバスケットボール選手がフロー状態の心境をこう語っています。
僕らのような年頃の小僧っこはいろんなことを考えるものですよね。…でもバスケットをしているときは心の中はそのことでいっぱいなんです。―――バスケットボールだけ。…すべてが次々と続いてくるんです。
私はこのコメントを読んで、競技中の自分と重なるような気がして、共感を覚えて、何だか胸が熱くなるような気持ちでした。
バスケットボールとウルトラマラソン、全然違うところもあるのだけど、人を熱中させる共通点というか、類似する経験は確かにあるのだと。
チクセントミハイは、このようなフロー状態になりやすい条件(書籍の見出しでは『楽しさの要素』という説明をしている)として、以下の9つを上げています。
- 明確な目標がある
何を達成しようとしているのかがはっきりしている。 - 即時的なフィードバックがある
行動に対してすぐに結果が返ってくるため、修正や調整がしやすい。 - 挑戦とスキルのバランスが取れている
自分の能力の少し上のレベルの課題に取り組んでいるときに、フローが起こりやすい。 - 集中が深まっている
雑念が入らず、目の前の活動に完全に注意が向いている。 - 行為と意識の融合
「自分がやっている」という意識が薄れ、行為そのものになっているような感覚。 - 自己意識の消失
自分を客観視する意識が消え、不安や評価への意識がなくなる。 - 時間感覚の変化
時間があっという間に過ぎたり、逆にゆっくり感じたりする。 - 活動そのものに価値があると感じている(内発的動機)
報酬の有無にかかわらず、その活動をすること自体が喜びである。 - 自分のコントロール感がある
状況や課題を自分でコントロールできているという感覚がある。
そして、人類の歴史的に長く続いてきたスポーツなどの余暇活動は、上記の9つの要素が多く満たされるようなルールがあり、そのため人々が没頭して愛し続けてきたのだと分析しています。
私が24時間走で経験していることを9つのフローの条件と照らし合わせてみると、やはり全て合致しています。
そう考えると、24時間走はフローに入りやすいスポーツという意味で他のメジャースポーツと一緒ですし、当然フルマラソンやトラック競技とも同じです。
多くの市民ランナーの方は、最初は健康の手段としてランニングを始めているのではないでしょうか。
そして、その中の一部の人が「前よりも走れるようになった」と成長を喜んだり、「今日は昨日よりも速いタイムで走ってみよう!」と挑戦を楽しんだりします。
その結果、大会に出て、ハーフ→フルマラソンのように長い距離に挑戦していきます。(健康の手段から競技自体が目的に)
フルマラソンを完走した後に、「もっと速くフルマラソンを走りたい」とだけ思うのではなく、「もっと長い距離を走れるようになりたい」と思った人たちがウルトラマラソンランナーになっていきます。
ただ距離だけみて「ウルトラは過酷」と思ったり、競技人口をみて「ウルトラは変わっている」と思ったりすることもあると思いますが、根源的なところでは人がフローを求めるという共通の傾向に導かれているのではないでしょうか。
さて、24時間走・ウルトラマラソンの魅力は多少なりとも汲み取っていただけたでしょうか。
この記事を通じて、少しでも私たちの間での相互理解が深まり、より良い共感性をもってランニングライフを一緒に楽しんで行ければ良いなと思っています。
それでは、引き続きRising Sun 24の応援も何卒よろしくお願いします!
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