こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。
今週の木曜日、『ウルトラマラソンをより良く走るための座談会』というイベントを開催してきました。
このイベントは書籍『ウルトラマラソン栄養完全ガイド』の読者の方をお招きして、対話しながら練習、補給、トラブル対応など幅広いテーマについて考えていくというものでした。
参加者の印象的だった言葉があります。
「去年の100kmでは12時間半だったのが、今年は10時間まで向上しました」
「去年の100kmでは、70km地点で脚が売切れて、残り30kmが絶望的に感じられましたが、書籍を読んで定量的にエネルギー補給をするようにして今年はガス欠無く走ることができました」
その場にいた全員がエネルギー補給がきちんとできることがウルトラマラソンでもフルマラソンでも大切と意見が一致していて、改めてエネルギー戦略の価値を再認識した気持ちでした。
そこで、今回は「ゴールまでガス欠せず走り続けるためのエネルギー戦略」について再検討していきたいと思います。
エネルギー戦略のポイントは2つあります。
①レース中に適切なエネルギーを補給すること
②普段の練習や食事を通じて「燃費の良い体作り」をすること
①については、
- そもそも、どれくらいのエネルギー補給をする必要があるのか定量的に理解すること
- 特にウルトラの場合、食べ続けるための胃腸コンディショニングを学ぶこと
という2つの課題があります。
これについては、書籍の方で解説していますので、今回は割愛します。
②については、脂質代謝を高める方法ということで、これまでもブログで度々触れてきました。
今回はその一つである空腹ランニングについて、いつもとは少し違った角度からその意味を再確認していきましょう。
まず、トレーニングによって体がどのように強くなるのか。
そのイメージを共有するところから始めましょう。
例えば、10kmのジョギングをしたとします。
すると
- 接地の度に骨や筋肉に物理的な刺激が加わる
- 血管により多くの血流が流れる
- 運動によって細胞のエネルギーが減少する
といった変化が生じます。
これらの変化をサインとして、骨密度が上がる化学反応が生じたり、毛細血管が発達する化学反応が増えたり、細胞にエネルギーを溜めこむ化学反応が活性化したりします。
10kmジョギング
→体内の環境変化が化学反応の方向性を変化させる
→強くなる
というイメージです。
ではここで次のトレーニングを比較してみましょう。
A:10km ジョギング
B:30km ジョギング
C:10km ジョギングを空腹状態で行う
まずAとBを比較すると、Bの方が距離が長いため「細胞がエネルギー枯渇状態にさらされる」という信号がより強くなります。
この信号は
- ミトコンドリア(細胞でエネルギーを生み出す器官であり、これが多いほど速く走れて疲れにくい)を増やす
- 筋グリコーゲンの貯蔵量を増やす(細胞により多くのエネルギーを溜められるようになり、フルマラソンなどの長い種目で失速しにくくなる)
といった化学反応を活性化するスイッチとなることが分かっています。
10kmの練習より30kmの練習の方が効果的であることは、このような違いがあるからと考えられます。
では、AとCを比較するとどうでしょうか?
どちらも同じ10kmなので「接地で骨や筋肉に加わる物理的な刺激」という意味では両者に違いはありません。
しかし、Cの方が「よりエネルギーが少ない状態に細胞がさらされる」という点ではAと違いがあります。
そのため、同じ距離を走ってもトレーニング効果が変わってくる(Cの方がエネルギー面での成長スイッチを押しやすい)という違いがあります。
空腹状態で走ることで、疑似的にロング走のような刺激を体に与えることができるという解釈もできますね。
では、Cの方がAより全てにおいて優れているのかというと、そうでもありません。
例えば10kmをジョギングでなく、全力で走るスピード練習だった場合、空腹ランニングだとタイムが落ちることが珍しくありません。
(特に空腹ランニングに慣れていない人はそうなるでしょう)
すると、
- 速いペースで走ることへの慣れ(神経的な適応など)
- 単位時間あたりで多くのエネルギーを生み出す能力
- 心肺機能への負荷
などはA(空腹でない練習)の方に分があるといえます。
大切なことは、このような「栄養状態の違いを通じて体の化学反応を変えることができる」という意識を持つことではないでしょうか。
実践的なアドバイスとしては「普段の平日のジョグは基本的に空腹ランニングにしてしまう」というのはおすすめです。
平日はなかなか長い時間を練習に割くことは難しいと思います。
空腹ランニングなら短い時間でも効率的に細胞にエネルギー枯渇の信号を送ることができます。
そういう意味では空腹ランニングは忙しい市民ランナーのための時短トレーニングもいえます。
逆にスピード練習については「空腹だと力が出ない」という方は無理せず食事をして、高いパフォーマンスを発揮できる状態でトレーニングするのが良いと思います。
さて、ここまではトレーニングの例を考えましたが、興味深いことに「特定の栄養素を摂取すること自体が細胞への信号となり、体内で何かしらの化学反応の変化を発生させる」ことも分かっています。
例えば、糖質を摂取することでエネルギー源が補充されるだけでなく、筋肉の合成が促進されることが明らかになっています。タンパク質の摂取でも同様の化学反応が活性化されます。
逆に糖質やタンパク質を摂取して筋肉の合成が促進されるとき、オートファジーという細胞の品質を高めるメンテナンスの反応は抑制されてしまいます。
トレーニングによる刺激だけでなく、栄養もそれ自体が細胞にとっての信号であり、化学反応を変えるスイッチになるということですね。
スポーツ栄養学の発展により、様々なスイッチの存在が明らかになってきています。
例えばAMPKというスイッチを押すこと(専門的には、酵素を活性化する)でミトコンドリアが増えたり、体脂肪をエネルギーとして活用する能力が増えるなど持久力に関する能力が向上することが報告されています。
このAMPKは有酸素運動をすれば基本的に活性化しますが、空腹状態で走ることでより効率的に活性化することも明らかになっています。
また
- ブラックジンジャー(Catalyst Cardio Performanceに含有)
- 冬虫夏草(Catalyst Spiritsに含有)
など特定の栄養素を摂取することでも、その活性が高まるとの報告があります。
栄養素の摂取によって、疑似的にトレーニングと同じスイッチを入れるということですね。
Catalystサプリは単に「食事では不足しがちな栄養素を補う」という視点だけでなく「体のスイッチをどう操作するか」という視点を意識して成分を決めています。
さて、今日は私がイベントで「ガス欠せずゴールまで走り切れるためのエネルギー戦略が大切だ」と再認識したところから話が始まりました。
実践してきた方々は
「最後まで脚がもつようになった」
「弱気にならずに集中してゴールできた」
「レース後のダメージも減った」
と語っています。
ぜひ、「試してみたい」と感じた取り組みから始めてみてください。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!