ウルトラマラソン

ウルトラの記録が飛躍した16個のきっかけ

2025年4月26日

私はウルトラマラソンを走り始めて17年になりますが、この17年の間には「自分ってこんなに走れたんだ!」と驚くような進化をしたことが何度かあります。

今日はこの非連続的な成長について考察することで、皆さんの未開拓な伸びしろを発見する参考にしていただければと思います。

ウルトラに大事な3つの要素

ウルトラのパフォーマンスは大まかにいうと以下の3つの要素の組み合わせによって左右されると思います。

  • 肉体的な能力や技術(心肺機能、筋持久力、ランニングフォームなど)
  • 精神的な能力(我慢強さ、冷静さ、経験による自信など)
  • 知的な能力(補給方法、ペース配分、荷物の最適化など)

このうち、最も簡単に短時間で飛躍のチャンスがあるのが3つめの『知的な能力』に関することだと思います。
例えば、これまで誤った補給をしていた人が補給方法を変えるだけで嘘のように楽に走れるようになることは珍しくありません。

逆に最も地道な努力が必要なのは1つめの『肉体的な能力』ではないかと思います。
練習の負荷を高めていくには自己管理能力、モチベーション、適切なケアなど多くのことが求められるからです。
一方で(すでにプロレベルの練習を実行している人を除いて)最も大きな伸びしろがあるのも、この『肉体的な能力』といえるでしょう。

2つめの『精神的な能力』に関しては「1回100kmを完走したら、自信ができて次回はより楽に走れるようになる」というように、1回の強烈な経験で瞬時に向上することもあります。
一方で「苦しい場面でいつも心が折れてしまう」と悩んでいる人がなかなか解消できないように、成長させる方法が捉えにくいという難しさも特徴といえそうです(私はメンタルリハーサルにその答えがあると感じていますが)。

2013年24時間走世界選手権。定量的なエネルギー補給を意識し始めたころ。

私が経験してきた飛躍のきっかけ

ここで、過去に私が「これは非連続的な成長(飛躍)だ!」と個人的に直感した過去の経験・行動の変化を箇条書きで列挙してみます。

肉体的な能力に関すること

  • 糖質制限の食事をして脂質代謝を向上させたこと
  • 食事による脂質代謝の向上とあわせて、空腹状態での練習を習慣化したこと
  • 食事において自分にあっていない食品を避けるようになったこと(遅延型フードアレルギーの検査)
  • ジョギングに「ゆっくり楽に」だけでなく「楽に速く」という練習も取り入れるようにしたこと。とりわけ、40~60kmのような長い距離でも「楽に速く」を実践するようになったこと
  • 月間走行距離を重視する練習をしたこと(練習の非連続的な変化)。
    今思えば故障リスクもありますが、それまで200kmくらいだったときに一気に1か月だけ500km走ったり、350~400kmくらいだったときに1000km走ったりしたときは、その後に大きな変化を感じました。1000kmの後には友人には「見た目も変わった」と言われました。
    安全のため、今これをお客様に推奨することはしませんが、事実として練習負荷を非連続的なレベルで向上させ、かつ十分にリカバリーができれば大きな成長を実感することがあります。
  • 起伏の多いコースでの練習をとりいれたこと(起伏を走ることで、何よりウルトラのコースに多い起伏そのものに強くなりました。また、飛躍といえるレベルではありませんが平地の能力も向上しました)
  • 日常の練習で意識的にフォーム改善を心掛けるようになったこと。その時々の自分にあったランニングキュー(動作を意識する言葉。例えば「バネのように地面を下に押す」「接地時に股関節の外旋位をキープする」など)を試しながら動作を変えていくのは個人的に役立ちました。
  • ランニング仲間に恵まれたこと(大学時代のサークル仲間の存在なくして今の私はありえないでしょう。良い影響を与えてくれる仲間・環境ほど大きな力はありません)

精神的な能力に関すること

  • 過去最高の距離を練習や大会によって走った経験が自信となったこと。
    2~4日連続でロング走をする練習も役立ちました。
  • メンタルリハーサルによってレースでどう考え、振る舞うかを繰り返し脳に刷り込むこと

知的な能力に関すること

  • 定量的なエネルギー補給をするようになったこと(必要なエネルギー摂取量を計算して、それに基づいた補給をする)
  • 塩分補給が上達したこと。初心者の頃は塩分不足だったので、経口補水パウダーを使用して塩分摂取量を上げたら一気に吐き気などが減少してパフォーマンスもアップ。
    次第に塩分が濃すぎる問題も柔軟に対処できるようになり、より安定感が高まった
  • 水分が臨機応変に過不足なく補えるようになったこと
  • 発汗量が多くなる場面で体を外から冷やす方法を学んだこと(水をかける、氷を手に持つなど)
  • 日焼け止め(アグレッシブデザイン)、皮膚保護クリーム(プロテクトJ1)を使用して不要なストレスを減らすようになったこと
  • 脂質代謝の向上にともない、当日の朝食抜きで走れるようになったこと(胃腸トラブルが激減し、お腹もスッキリした状態で走れてパフォーマンスアップ。レース中にトイレ(大)に行く回数も減った(24時間走でも0回に))

2024年宮古島ウルトラトラックレース(24時間走)。初めて補給から小麦を断つことを実験する。

飛躍を手にするためのマインドセット

さて、上記の箇条書きの中に皆さんが興味を持ったものはあったでしょうか?

「やってみたい」「どうなるんだろう?」という好奇心は大事なエネルギーですので、ぜひ深堀りして具体的なアクションへつなげて欲しいと思います。

私は去年、12年ぶりに24時間走の自己ベスト(264km)を更新できましたが、その根本にあったのは

  • 好奇心をもって実験感覚で楽しむこと
  • 自分の可能性を信じること
  • 好きなことを貪欲にもっと楽しみたいと思うこと

という気持ちだったと思います。

私にとってランニングは、最初は「ちょっと面白そう」「気になる」くらいの気持ちでした。ランニングのために大好きな糖質を制限するなんて考えられませんでした。

しかし、「自分はちょっとランニングに興味がある」という気持ちに正直に日々を繰り返していくうちに、情熱が少しずつ育っていきました。そして、情熱が育つほどに、その対象は面白く、自分の一部のようになってきます。

なので、皆さんは私と同じレベルで頑張る必要はもちろんありませんし、今のご自身の関心にヒットすることから一歩を踏み出してみて欲しいと思います。

ランニングは向社会的で生涯にわたって人生を豊かにする趣味です。

ぜひこれからも、大事にその情熱を育てていってくださいね。

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