トレーニング・練習

キロ5分が楽に走れるようになる3つのステップ

2026年10月24日

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

今日は「キロ5分を楽に走れるようになるには?」というテーマを深掘りしていきたいと思います。

私は大学1年生からランニングを始めました。中学、高校と運動部に所属していましたし、若かったのでキロ5分で走ること自体は当時もできました。
(思い返すと、最初は「キロ〇分」という言い方も知らなくて、新鮮さがあったのを懐かしく思い出しました)

ただ、「走れるけど呼吸は上がる(主観的なキツさがある)」という感覚はありましたし、長時間このペースで走り続けることもできませんでした。

それが走歴を重ねるにつれて、主観的なキツさが軽減していき、より長時間キロ5分を維持できるようになりました。

サブ3.5(平均4:58/km)で走れるようになり、今では24時間走の最初の100kmはほぼキロ5分で走り8時間20分で通過するのがスタンダードになりました。

こうして改めて自分とキロ5分の歴史を振り返ってみると「キロ5分を楽にする」には、段階・レベルというものがあるなと気づきました。

①短い時間(400m~1000mくらい)で良いので、キロ5分をリラックスして走れる
②主観的なキツさがあまりなく、ペースをある程度持続できる(10~20kmくらい)
③フルマラソンやウルトラマラソンなどかなり長い時間を持続できる(40km~)

私なりに3つの段階に分けてみたのがこちらです。そして、それぞれの段階において「どんな課題が背景にあるのか」「どんな練習が必要なのか」が変わっていくことにも気づきました。

それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。

①短い時間(400m~1000m)をキロ5分で走ってみて、主観的に楽に感じる

この段階では主に「走り方・ランニングフォーム」の影響が関係しているように思います。

ランニング初心者の多くの方にとってはキロ5分は呼吸の上がるようなペースだと思いますが、(年齢・性別・運動経験にもよりますが)200~400mくらいなら、走れなくもないという方もいらっしゃるかと思います。

そのような方が、走りの意識を変えることで「いつもより楽に走れた」「短距離のような全速力ではなく、リラックスしてキロ5分が出せた」と感じることがあります。
(ただし、この段階では10kmなど持続して走ることはまだできません。それは、後述するような別の課題があるからです)

経験者の方にとっても、この話題が関係ない訳ではありません。いつもと違う意識のフォームで走ることで、時計を見てみたら「いつもの体感よりペースが10秒くらい速い!」なんて感じることはあるかと思います。

キロ5分とフォームの関係について印象深かった話があります。
以前、為末大さんのYoutubeを拝見していたとき「体を前傾して、倒れそうになったら自然と脚が前に出るという感覚で走れるペースがキロ5分くらい(スプリントになると別の要素が必要)」というようなニュアンスのことを話されていた記憶があります。

これは、私も似たような感覚があります。
私は一時期、短距離の選手の走り方を学び、それを長距離のランニングへ活かすという取り組みをしていました。

そのときは、キロ3分台とか速いペースになると「脚が後ろに流れる」という現象が自分の場合はペースのボトルネックになっていたという気づきがありました。
「地面を押した後の脚を早めに戻す意識」「脚を前方で操作する意識」をすることで苦手意識のあったキロ3分台の走りが楽になりました。

逆にペースがゆっくりなら脚を速く前にもってくる意識はそこまで必要なくて、むしろ足を地面に残してしっかり安定して押し切る方が良いかもしれないという感覚もありました。
この分かれ目が私にとってはちょうどキロ5分前後だったのです。

私の主観的な感覚では「前傾して倒れそうになったら自然と(反射的に)脚が出る」というよりも「股関節から太ももを上げる動作をしながら前に倒れこむ」「倒れこみ、股関節で体重を受け止められるように落下する」という感じがキロ5分を楽に走っているときに近いです。

また、肉体面では体幹の安定性と剛性(硬いバネのような着地ができること)が大切になってくると思います。

私はケトルベルトレーニングを最近はよくおすすめしているのですが

  • ケトルベルスイング(両手)
  • ターキッシュ・ゲットアップ
  • シングルレッグルーマニアンデッドリフト

などの種目は効果的だと思います。

②キロ5分を主観的にあまりきつくなく、10~20km程度は持続できる

この段階では筋肉細胞内でエネルギーを生み出すスピードが勝負になってきます。

ここで簡単なシミュレーションをしてみましょう。

例えば体重60kgの人がキロ5分(時速12km)で走るとします。
このとき、1時間あたりの消費カロリーは体重[kg]×距離[km]で近似できるので、60×12=720kcalくらいになります。

糖質は1gあたり4kcalのエネルギーがあります。よって、仮に全てのエネルギーを糖質で走るとしたら、1時間あたり180g(720÷4)の糖質を燃やすことになります。

ここで、自分の体が焼却炉であることをイメージしてみてください。
キロ5分で走っているとき、あなたの体という焼却炉は糖質を毎時180gのペースで燃やしてエネルギーにしています。

当然、ペースが速くなるほど焼却する燃料(糖質や脂肪)の量は増えます。
燃料をどれだけのスピードで燃やせるかは、焼却炉の大きさによります。
キャンプで焚火をするのと、火力発電所のような施設では燃やせるスピードが違うのは明らかですよね。

話をランニングに戻すと、キロ5分を10~20kmほど余裕をもって走れるか否かは、この体内の焼却炉の大きさ次第ということになります。

いくらランニングフォームが効率的でも、焼却炉に余裕が無ければ持続することができません(短時間なら解糖系という焼却炉を使って燃やせますが、いわゆる乳酸が蓄積する持続困難なペースになります)。

では、この焼却炉を大きくするにはどうしたら良いか? これが最も根気のいる作業になりますが、トレーニングを継続していくことになります。

トレーニングのポイントは二つあります。

一つは、ゆっくりで良いのでボリュームをこなすこと。「ボリュームをこなすために、ゆっくり走ること」と言った方がより正しいかもしれません。

週間の有酸素運動の時間を少しずつ増やしていきましょう。オーバートレーニングにならない範囲なら、基本的に「量が多すぎ」で問題になることは無いと思います。

二つめは、ときどき、息の上がる速いペースでの練習も取り入れて、継続していくことです。
心拍ゾーン4くらいで20~40分走る練習を週1回~隔週に1回の頻度が目安です。

「ボリューム」と「時々のポイント練習」この二つを継続し、少しずつ負荷を上げていく。ここに裏技はありません。

③フルマラソンやウルトラマラソンなどかなり長い時間を持続できるようになる

前の段階では焼却炉の大きさが問題でしたが、次の段階になると「燃料自体が足りない」という課題が発生します。いわゆるガス欠です。

ここでも簡単なシミュレーションをしてみましょう。
体重60kgの人がキロ5分で走るとき、1時間あたり720kcalを消費する計算でした。

人のエネルギー源は主に糖質と脂質です(タンパク質はわずかに)。
仮に糖質が70%、脂質が30%の割合で燃料を燃やしていったと仮定しましょう。

このとき、糖質の燃焼ペースは1時間あたり
720kcal×70%÷4=126g
となります。

仮に3時間走るとしたら、燃焼する糖質の量は126×3=378gとなります。

しかし、人の体に蓄えられている糖質の量は肝臓と下半身の筋肉(ランニングのため下半身に限定)で合わせて約330g(※)ほどしかありません。
※体格、トレーニングなどによって実際の量は変わります

つまり、焼却炉の大きさは十分でも、そもそもの燃料が不足するために燃やせない(エネルギーが作れないので失速する)という問題が発生してしまいます。
※実際には燃料が完全に無くなるより前に量(密度)が減ることで失速が始まります

もちろん、フルマラソンやウルトラマラソンで失速してしまう理由はエネルギー不足だけではありません。
エネルギーが十分でも筋疲労でペースを維持できないことは普通にあります。

ただ、様々な経験・情報を統合すると、多くの人にとってエネルギー不足が失速に多少なりとも影響しているというのは間違いが無いと私は考えています。

では、この燃料不足による失速はどのように予防していけば良いのでしょうか?

対策の一つは、補給によって不足分を賄うことです。レース中の補給が重要なのはこれが理由です。

また、ペース配分も大切です。先ほどのシミュレーションでは、エネルギー消費のうち糖質の比率を70%と仮定した場合にガス欠するという話でした。

実力に対して速いペースで走るほど糖質の消費比率が増えます。よって、オーバーペースを控えることで燃料を温存することができます。

補給、ペース管理、カーボローディング(燃料の貯蔵量を高める)などレースに必要なことを体系的に実践できるようになりたい方は著書『フルマラソン栄養完全ガイド』、『ウルトラマラソン栄養完全ガイド』にまとめていますのでぜひご覧ください。

また、日常的な体作りにおいては、糖質への依存度を下げ、脂質を燃料としてスピーディに燃やせるようになることも効果的です。
空腹ランニング、間欠的ファスティング、低糖質食など方法は色々とあります。

普段のトレーニングや食事にこのような工夫を加えることで、更に高いレベルの持久力開発が可能となります。

脂質代謝アップに本気で取り組みたい方のために『オートファジー・ランニング』という8週間の実践型プログラムも開発しました。
すでに50名の方が参加して食生活・トレーニング方法の改善に乗り出しています。いつからでもスタートできますので、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。


さて、今日はキロ5分を楽に走れるようになるためにはというテーマで考察してきました。

まとめると「楽に走る」というのには3段階あり、それぞれにおいて課題と対策が変わってくるということでした。

成長のロードマップとしては

  • まずは動作としてキロ5が楽に感じられるフォームを模索する。これには、実際に走りながら、色々な意識を試して自分で発見していくプロセスが必要です。
    また、体幹の安定性と剛性(硬いバネのような走り)を身につけるための補助トレーニングも役立つでしょう。
  • 次にキロ5分に余裕が持てる「大きな焼却炉」を作っていきましょう。
    地道に長い期間をかけて、ゆっくりペースでたくさん走ること(週間の走行距離を重視)。
    そして、週1回~隔週1回は心拍ゾーン4の20~40分走のようなキツめの練習も取り入れること。
  • 最後にフルマラソンのようなより長時間を維持できるようになるためには「燃料不足」がネックになりやすいことを学びました。
    カーボローディング、ペース配分、レース中の補給で糖質をゴールまで温存するスキルを磨いていきましょう。
    日常においては、トレーニングの質と量を更に高めていく努力を続けながら、更に空腹ランニングなど脂質代謝アップのための工夫をプラスすることで、より高みを目指すことができるでしょう。

キロ5分がより楽に、より長く走れるようになるためのステップがイメージできてきましたか?

ぜひインスピレーションに従って、ワクワクとこの道を歩み始めてください。
素晴らしい体験があなたを待っているはずです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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