小谷のブログ

カーボン入りシューズ、キロ6分では3人に1人が逆効果だった

2026年10月17日

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

今日は「ランニングシューズ」について皆さんとシェアしたいことがあります。

きっかけは、先日SNSでいただいたコメントでした。
フルマラソンに向けて調整中の方からのご質問で、内容をかいつまむと次のようなものです。

以前、トライアスロンの大会でカーボン入りのシューズを履いたところ、カーボン無しのシューズよりも太ももの前の疲労がひどく、走りきれないと感じるほどきつかった。
それ以来、カーボン入りのシューズを履くのが怖くなってしまった。

今回は考え方を一新して、もう一度カーボン入りのシューズで調整してみたい。

小谷さんは練習や大会でどのように使い分けていますか?

ひょっとしたら、同じような経験をされた方もいらっしゃるかもしれません。

実はDMでも、「小谷さんのおすすめのシューズは?」「ウルトラのシューズはどう選べばいいですか?」といった質問をよくいただきます。

シューズに関心をお持ちの方はやはり多いのだなと感じ、たまにはこの話題を取り上げてみようと思いました。

ただ、最初にお伝えしておきますが、私はシューズの専門家ではありません。
あくまで一消費者として、自分に合いそうなシューズを選んで使っているだけです(皆さんと同じ立場です)。

そして、シューズの好みは個人差がとても大きいと感じています。
足の形、体重、走り方、走るペース、走る距離。

これらが違えば、同じシューズでも感じ方は変わってくるはずです。
私にとって最高の一足が、あなたにとっても最高の一足とは限りません。

なので、「このシューズがおすすめです」という一般的なアドバイスは控えるようにしています。

一方で、一人のランナーがどのようにシューズを選び、実際に走ってどう感じているのか、という個人的な見解であれば、何かの参考にはなるかもしれません。

今日はそのようなつもりで読んでいただけたら幸いです。

私のシューズの選び方

大前提はフィット感

私がシューズを選ぶときに何より大事にしているのは、足を入れたときのフィット感(違和感の無さ)です。
これが大前提の条件で、私の場合はこれだけで候補がかなり絞られてしまいます。

ウルトラのように長い距離を走っていると、最初はほんのわずかな違和感でも、何時間も続くうちに大きなストレスになります。
そのせいか、私はフィット感にわりと繊細な方なのかもしれません。

いろいろなシューズを次々に試している方を見かけると「そんなに違和感なくフィットするシューズがたくさんあるのか」と不思議に感じることがあります。これは足の形の違いも影響しているのかもしれません。

直感で選んで、集中的に使う

フィット感の条件をクリアしたうえで実際に走ってみて「これは感触が良い」と直感したシューズを集中的に使う。これが私のスタイルです。

練習用と大会用の使い分けは、あまり意識していません(大会の時は消耗が少ない比較的新しいものを使うようにはしていますが)。

現在はアシックスの「マジックスピード5」を好んで使っています。
その前はナイキの「ズームフライ4〜5」が好きでした。
どちらもカーボンプレート入りのシューズです。

最近は試しにアシックスの「ノヴァブラスト5」(カーボン無し)も購入して使っていますが、正直なところ、全部の練習をマジックスピードで走っても良いと感じています。
(ただ、クッションの寿命からコスパを考えるとノヴァブラストの方が少し良さそうなので、金銭的な理由でこの2つをしばらくは使い続けそうです)

ペースによって好みが変わる

面白いと感じているのは、ペースによってシューズの相対的な好みが変わることです。

マジックスピード5は、私の場合、3:15/kmくらいの流しでも気持ちよく走れますし、5:15/kmくらいのジョグでも気持ちが良いです。ウォームアップの最初の1kmは6:00/kmくらいで走りますが、それでも違和感を覚えることはありません。

ただ、5:30〜6:00/kmくらいのペースでは、ノヴァブラスト5と比べてマジックスピード5の方が良いとはあまり感じず、同じくらいの評価かなという印象です。
それより速いペースになると、マジックスピードの方が好きだと感じます。

同じ人が同じシューズを履いていても、ペースによって評価が変わる。
このことは、カーボンシューズを考えるうえで大事なポイントのように思っています。

カーボンについて感じていること

冒頭のご質問には、次のようなことをお答えしました。

カーボン入りのシューズについて私が思うのは、ペースによって「良い」と感じるか「悪い」と感じるかが、同じ人でも変わるということです。

反発が返ってくるタイミングが、自分のペースに対して早すぎると、ブレーキ気味になってしまう。そういうときは太ももの前が疲れやすかったり、アキレス腱にストレスがかかるように感じたことがあります。
少し大袈裟に言うと、下り坂をブレーキしながら走る感触に近いでしょうか。

逆に、重心が十分に前に進んだちょうど良いタイミングで反発が返ってくると、カーボン無しのシューズよりも楽に速く走れる印象があります。

そして、この反発が返ってくるタイミングは、シューズの特性だけでなく、走り方や体重などによっても変わるのではないかと考えています。

冒頭の方のケースは、バイクパートでの疲労など他の要因も考えられるので断定はできません。
ただ、もしかしたらそのときのペースと、シューズの反発のタイミングが合っていなかったのかもしれない、とも感じました。

改めて調べてみたら、整合する研究があった

ここまでは、あくまで私個人の感覚の話です。

今回この記事を書くにあたって、カーボンシューズ(いわゆる厚底カーボンシューズ)に関する研究を改めて調べてみました。
すると、私の先述のコメントと整合するように感じる研究がいくつかありました。

なお、研究では「ランニングエコノミー」という指標がよく使われます。
同じペースで走るときに、どれだけ少ないエネルギー(酸素)で走れるかを示すもので、燃費のようなものだと考えていただければと思います。

平均では効果あり。ただし個人差が大きい

まず全体像として、17の研究(計281人)をまとめた2025年の分析では、厚底カーボンシューズは従来のシューズと比べてランニングエコノミーを改善し、タイムトライアルの成績も向上させていたと報告されています。効果の大きさは「中程度」とされ、速いペースほど改善が大きい傾向も見られました。

ここまでは、多くの方のイメージ通りかもしれません。

一方で興味深いのが、個人差に注目した研究です。

ハーフマラソン平均59分30秒という世界トップクラスのケニア人選手と、ヨーロッパの市民ランナーを比較したところ、厚底カーボンシューズによるランニングエコノミーの変化には大きなばらつきがありました。

  • ケニア人選手:11.4%の改善から、11.3%の悪化まで
  • 市民ランナー:9.7%の改善から、1.1%の悪化まで

世界トップの選手でさえ、人によっては逆効果になり得るということです。
研究者たちも、シューズの良さは、より個別に考える必要があると結論づけています。

「平均的には効果がある」ことと「自分にとって効果がある」ことは、別の話ということでしょう。

ペースが遅いと、効果が小さくなる

さらに、私の感覚と特に近いと感じたのが、ペースとの関係を調べた研究です。

それまでの研究の多くは、4:37/kmより速いペースで行われていて、2.7〜4.2%のランニングエコノミー改善が報告されていました。

そこで、より遅いペースでも同じ効果があるのかを、ナイキのヴェイパーフライ(Next% 2)を使って調べた研究があります。

結果は次の通りでした。

  • 5:00/kmで約1.4%の改善
  • 6:00/kmで約0.9%の改善

平均すると改善はしているものの、速いペースより効果は小さくなっていました。

そして6:00/kmでは、参加者の3人に1人が、かえってランニングエコノミーが悪化していたそうです。

研究者は、遅いペースでは硬いプレートがエネルギーの節約にならず、むしろプレートを「乗り越える」ために余計なエネルギーが必要になっているのではないか、と推測しています。

また別の研究者は、遅いペースではフォーム(ソールの素材)を十分に押しつぶしきれず、反発の力を活かしきれていない可能性も指摘しています。

これは、私が感じている「反発のタイミングがペースに合わないとブレーキになる」という感覚と、かなり近い話のように感じました。

私自身、5:30〜6:00/kmくらいではマジックスピードとノヴァブラストの差をあまり感じず、速いペースになるほどマジックスピードの良さを感じる。この体感とも整合しているように思います。

自分に合う一足を見つけるために

ここまでの話をまとめると、次のようになります。

  • 厚底カーボンシューズは、平均的にはランニングエコノミーを改善する
  • ただし個人差は大きく、人によっては逆効果になることもある
  • 遅いペースほど効果は小さくなり、合わない人も増える

こうして見ると、「カーボン入りだから良い」「カーボン入りだから怖い」と考えるよりも、「そのシューズが、自分のどのペースで、どう感じるか」を確かめていく方が大切なのかもしれません。

ぜひ今後のシューズ選びでは、他者の評判より「自分視点・自分の直感」を大切にして、実際に使用する際のペースで走ってみてはいかがでしょうか。

なお、私が自分のシューズの好みを直感的に分かるようになったのは、記憶では走歴4~5年目くらいで、それまでに7~8種類くらいは試した気がします。

まだ走歴の浅い方は「これで合っているのか分からない」と感じるかもしれませんが、経験を積めばなんとなく分かるようになると信じて、安心して色々と試してみると良いかと思います。失敗も長期的には良い経験となるでしょう。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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