トレーニング・練習

2回に分けて走るか、まとめて走るか? 2部練習の効果と活用法

マラソンのトレーニングにおいて、1日に2回にわけてトレーニングをすることを2部練習と呼ぶことがあります。

この記事ではこの2部練習について、どのような効果があって、私がどんなタイミングで使っているのかをまとめようと思います。

2部練習のメリット

筋肉や関節への負荷が少なくなり、より長時間あるいは質の高い練習をできるようになる

例えば同じ40kmを走るとき、1日で走るより4日にわけて走る方が楽ですね。

これは、回数をわけて走ることで損傷した部位を修復したり、エネルギーを補給する回復時間が得られることが大きな理由です。

また、疲弊して集中力が低下した状態で走る時間帯も短くなるため、悪い動作によるダメージを軽減できることももう1つの理由です。

同様に1日の練習でも同じ距離を走るなら2回にわけた方が筋肉へのダメージや故障リスクは軽減されます。

筋肉や関節へのダメージが減れば、より長い時間トレーニングできたり、質の高いトレーニングの比率を高めることができ、心肺機能や持久力を強化しやすくなると考えられます。

集中力が高い状態で練習できるので、技術練習の質が上がりやすい

先述しましたが2部練習では体を回復させる時間があるため、精神的にリフレッシュした状態で運動できる時間が増えます。

これはランニングフォームを磨くような技術的要素の大きい練習ではより大きなメリットとなります。

動きづくり・ドリルなどは走る前にする方が多いと思います。

これは、ドリルで学んだことを本練習のランニングに活かすという意味もありますが、ドリルのような「新しい動きを学ぶ・定着させる。脳に新しい神経回路を構築する」ためには高度な集中力を要するからでもあります。

練習の頻度(回数)が増えるので、練習することが習慣化されやすい

「物事を習慣化するにあたっては、実施時間よりも実施頻度の方が大事である」
ということがわかってきています。

例えば、ある人が資格勉強を習慣化したいと思っているとします。

1週間に3時間勉強時間をとれるとして『1日1時間を3日』と『1日30分を6日』では後者の方が習慣化されて継続しやすいことがわかっています。
(つまり1回あたりの継続時間はそれほど重要ではない)

ランニングを習慣化するのも同様で、練習の頻度を増やすほどトレーニングをサボりにくくなります。

これは、故障明けやオフシーズンからの復帰でしばらく走らない生活に慣れてしまった方にとっては役立つ行動変容の方法かと思います。

2部練習をする際の注意点・デメリット

脂質代謝を上げる練習としては1回にまとめた方が良い

フルマラソンやウルトラマラソンのような長時間の競技では、ガス欠(筋肉中のエネルギーであるグリコーゲンが少なくなり、脚が重だるくなる現象)を防ぐために脂質代謝(体脂肪をエネルギーとして活用する能力)を高めることが重要です。

脂質代謝は筋肉のグリコーゲン濃度が低い状態で走ることで、より効率的に鍛えられることがわかっています。

2部練習にすると、途中で食事によってエネルギー補給ができてしまうので、脂質代謝を強化するためのストレスを体にかけにくくなってしまいます。

つまり、同じ20kmを走るなら
10km→食事→10km
20km一気に走る
では、後者の方が脂質代謝的には良いトレーニングということになります。

よって、脂質代謝にも重きをおいている方は、2部練習とそうでない日をの練習を上手くアレンジすることが求められます。

例えば

2部練習の日はスピード練習と技術練習をメインに

1回だけの練習の日はゆっくり長時間のジョギング

という感じです。

2回の練習それぞれの負荷が軽すぎると成長スイッチが入らない

2部練習がきちんと機能するためには、2回の練習それぞれが「体が成長するためのスイッチが入るくらいにはストレスである(負荷が高い)」という前提条件があります。

例えば、1日1回で10km走ることで体力を維持できている人が5km×2と2回に分けて練習するようになって、トレーニング負荷が軽くなりすぎて逆に体力が低下してしまうことがあります。

この人にとっては5kmでは体がストレスと感じないので、強くなるための適応(更にいうと、現状の体力を維持するための化学反応でさえ)が起きないのです。

2部練習を導入するときは、きちんと体にとって良いストレスをかけられているのか、自分の走力の推移やトレーニング日誌による疲労感の推移をみてメニューを修正していくことが求められます。

2部練習の特徴をまとめると

同じ距離を走る場合を考えたとき、2部練習は1回でまとめて走るのと比べて以下のようになりやすいといえます。

  • 筋肉や関節へのダメージ:低下
  • 故障リスク:低下
  • 集中力できる練習時間:向上
  • 習慣化のしやすさ:向上
  • 脂肪活用能力、筋グリコーゲン貯蔵能力:低下
  • 有酸素運動の合計時間に左右されやすい能力(心臓の肥大、毛細血管の発達):同じ

私が2部練習を取り入れるとき

以上の特徴を踏まえて私があえて2部練習をするのはどんなタイミングかをまとめます。

故障からの復帰やオフシーズンからの移行などブランク明け

この時期は2部練習にした方が安全かつ早く体力を戻しやすくなると実感しています。

久々に走ることになるので、ランニングのある生活を思い出す(習慣化)という意味でも2部練習にして頻度を高めるのは良いと思います。

ブランク明けの2部練習ではランニングだけでなくクロストレーニングとしてスピンバイクをこいだり、ウォーキングを入れることもあります。

クロストレーニング混ぜることで、衰えた肉体でも故障リスクをおさえつつ有酸素運動の時間を増やすことができます。

こちらの記事は私が3か月のブランクの後、4週間の練習で走力をフルマラソン換算で3時間43分→2時間45分と復活させたときのことをまとめました。

関連記事
ブランク明けのランニング再開|低下した体力を安全かつ早く復活させる方法

この記事ではランニングを久々に再開しようという方向けにブランク明けのトレーニングのポイントについて紹介していきます。 ひとくちにブランクといっても、その長さは数週間~数年と幅広いことと思います。 また ...

続きを見る

夏の暑い時期

夏はどうしても暑くて集中力が切れやすいので、頑張って走りこみたいというときは早朝と夜の2部練習にしています。

2回にわければ「のどの渇き」という夏特有の集中力の低下も減らせますし、涼しい時間帯を選びやすくなるというメリットもあります。

本気で走り込むとき

体の状態がよく、モチベーションが高く、月間600~1000kmくらいのレベルで本気で走り込むときも2部練習を活用することがあります。

このときはたいてい2部練習の合間に昼寝を挟むことで、1日4回成長ホルモンを出すようにします。
(①朝練②昼寝③夕方練④就寝の4回)

私の場合、1日1回の練習に限定していると、どうしても月間走行距離(正確には有酸素運動の合計時間を意識しています)をあまり伸ばすことができません。

距離は全てではありませんが、距離が大事になるタイミングというのが私の場合、シーズンのどこかであります。

そういうタイミングでは2部練習を導入することで、有酸素運動の時間を稼ぐようにしています。


以上が私の2部練習に関する考えでした。
ぜひみなさんも2部練習の特徴を踏まえて、適したタイミングがあれば試してみてください。

-トレーニング・練習

© 2024 小谷修平のランニング講座 Powered by AFFINGER5