トレーニング・練習

100km世界記録更新 Sorokin氏に学ぶリカバリーラン

先日100kmの男子世界記録がリトアニアのウルトラランナーSorokin氏によって更新されました(6:05:41)。
Sorokin氏は24時間走でも309.399kmの世界記録保持者です。

Sorokin氏のトレーニングメニューで特徴的だと私が感じていたのは夕方のリカバリーランです。

彼は朝に40kmを4:15/kmくらいで走り、夕方に10kmを4:45/kmくらいで(彼のレベルからしたら)ゆっくりめに走っていることが多かったように思います。

この夕方の10km走、みなさんはどう思われるでしょうか?

「(彼のレベルなら)もっと追い込まないと効果がないのでは?」

「10km走るだけなら疲れるし、走らなくても良いのでは?」

など色々な見方があると思います。

私はとても効率的、科学的なアプローチだと思いました。(ちなみに彼にはきちんと専門のコーチがついているらしいです)

リカバリーランの効果は回復ではなく成長因子を出すこと

リカバリーランについて、Matt Fitzgerald(著名なコーチ、執筆者)は著書『Brain Training for Runners』でこう語っています(小谷が適宜要約、意訳しています)。

(ここでいう)リカバリーランとはハードなトレーニングから24時間以内に行われる、比較的ゆっくりで短いランニングとする。

よく「リカバリーランは血流を高めて疲労物質を除去するので、疲労回復に役立つ」とされるが、実際のところリカバリーには役立たない(疲労回復が目的なら走らずに休んだ方が良い)。

しかし、多くのトップアスリートがリカバリーランを導入している(つまり成果が出ている)。
その理由は、リカバリーラン自体に効率的に強くなれる秘訣があるからだ。

体内にはIL-6(インターロイキン-6)という物質があり、それは疲労感を形成すると同時に体を強くする適応を促す。(つまり、IL-6はトレーニング効果を生み出す物質ということ)

最近の研究でIL-6は筋グリコーゲンが少ない状態や筋細胞がダメージを受けている状態でトレーニングをすると、短時間低強度でも効率的に生成されることがわかってきた。
これはまさにリカバリーランと同じ状況であり、その有効性のメカニズムを示すものだ。

つまり、疲れが残っている状況でのトレーニングは(もちろんやりすぎはダメですが)効率的に成長スイッチを入れることができるということです。

ハードなトレーニング→
リカバリーランで成長をもうひと押し→
しっかり回復して→
ハードなトレーニング

というサイクルはスポーツ科学的に理にかなった方法と言えるでしょう。

(こう書くと「ではトレーニング後に疲労回復しないように栄養補給を怠った方が良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは別のお話で、きちんと栄養補給した方が良いと考えられています。
例外としては脂質代謝を促すために糖質の補給はあえてしないという方法もありますが、今回は考えなくて良いでしょう。)

リカバリーランを意識した実際の私のメニュー

先週の私のメニューはこんな風でした。

水、金、日が強度の高いトレーニングの日という位置づけです。

例えば水曜の夕方に35分のテンポ走(10kmのレースペースくらい)をして、完全に回復しきらない翌朝にリカバリーラン(50分のゆっくりジョグ)を入れることで効率化を狙っています。

(ちなみにS&Cはストレングス&コンディショニングの略でジムに行ってます)

私はリカバリーランは50分を目安にしていますが、20分くらいでも効果はあると思います。

逆に長くし過ぎてポイント練習が継続できなくなるほど疲弊しないように注意します(リカバリーランは成長スイッチをもうひと押しするのが目的なので、長く・速くしすぎず、計画全体の継続性を損なわないことが肝心かと)。

短い時間投資で一つ上のレベルに押し上げてくれるリカバリーラン。
ぜひみなさんもトレーニング計画に組み込んでみてはいかがでしょうか。

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