小谷のブログ

世界選手権を辞退した私が、ギリシャで気づいたこと

2026年4月18日

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

今日は少し昔の話をしたいと思います。

2017年7月、24時間走世界選手権が北アイルランドのベルファストで開催されました。

私はその大会に日本代表選手として出走する予定だったのですが、1か月前に出場を辞退することになりました。

当時は起業して1年くらいでまだ経営的に不安定で、かつ私も28歳とまだまだ事業主としての経験も知識も不足していました。

そのため、色々と大変な時期で精神的にまいってしまい、世界選手権を走るために十分なトレーニングを積めなかったことが理由でした。

世界選手権の辞退で傷心していた私は「なんとか復活したい」とランナーとしての成長のきっかけを求めていました。

幸運にも世界選手権の2か月後、ギリシャの地でそのきっかけをつかむことができました。


9月に開催されたスパルタスロン(246km)に私はパーソナルコーチとしてある選手のサポートとして帯同していました。

その年は石川佳彦選手(世界選手権で優勝)もスパルタスロンに出場していました。
大会中に彼と話す機会があり、そこで彼が糖質制限をしてから調子が良くなったという話題になりました。

24時間走の世界選手権で優勝し、2か月後のスパルタスロンでも23時間20分の走りをした彼が、スポーツ栄養学の常識(マラソンランナーはレース中も日常も十分な糖質を摂取すること)に反することをして、成果を上げていることに私は目を向けることになりました。

実はそれ以前は「石川選手ももっと糖質を摂れば記録が伸びるはず」とそれまでの自分が信じた物差しでしか考えることができませんでした。

しかし、世界選手権辞退でショックを受け「何でも良いからヒントが欲しい」という感情になっていたそのときの私は、ようやく素直に起きている事実に目を向けることができたのです。

そして、「結果がどうなるかは分からないけど、中立的な視点で糖質制限について検証してみよう」と自分でも試してみることにしました。

私はそれ以前にも我流で糖質制限をしたことがあり、そのときは3週間で挫折してしまいました(力がわかず、練習が全然できなかったので)。

そのときの反省を踏まえ、今度は関連書籍を読み漁って自分なりに理解を深めてからトライすることにしました。

最初は練習しても「4km走っただけで折り返して家に帰りたくなる」くらい体が動きませんでした。

しかし、徐々に日常での「飢え」が軽減され、ランニングも「走り出しは重いけど、30~40分くらい経ったらスイッチが切り替わったように体が動き出す」という経験をするようになりました。

徐々に走れる距離が増え、それまでの日常だった20kmくらいのジョギングが無理なくできるようになり、糖質制限をしながらスピード練習もできるようになりました。

また、糖質制限をすることで、それまでは当たり前にしていたロング走でのエネルギー補給もしないようになりました。空腹ランニングの始まりです。

普通の食事をしていたころは30~40kmくらい走ればハンガーノックになっていた私が、50km、60kmをエネルギー補給無しで走れるようになりました。

空腹で走れる距離がどんどん伸びていくのが楽しくて、「今日は何キロに挑戦しよう?!」とモチベーションも上がりました。


また驚くことに、空腹ランニングで走る60km走は以前より失速が少ないのです。

それ以前なら補給していても27kmくらいから脚が徐々に重くなり同じ努力度で走っているとペースダウンしている自分がいました。

序盤が5:00/kmで走れていたなら、それが25~30kmのあたりで5:10~5:15/kmくらいに自然に落ちる感覚です。

しかし、空腹ランニングの60km走ではその27km前後の壁がなく、60kmを通じてほとんどイーブンペースか、落ちても40km過ぎにプラス5~8秒くらいと全然走りが違いました。

また、補給食を胃に詰め込む必要が無いので、吐き気や胃腸の苦しさが無く快適に走れるというのも嬉しい発見でした。

ウルトラマラソンの「食べなきゃ潰れる」というプレッシャーは案外大きいものだと実感しました。

なぜこんなにもパフォーマンスが変わるのだろう?

同時期に読んでいた書籍『The Art and Science of Low Carbohydrate Performance』にその答えが書かれていました。私はこう理解しました。

糖質制限をすることで体脂肪をエネルギーにするスピードが向上する。そして、その能力への影響の大きさは才能(個人差)よりも食事の方が圧倒的に大きい。

書籍のデータでは、普通の食事をしている人の1時間あたりの脂質の酸化速度は平均28g。対して糖質制限の人は平均90g。

脂質は1gあたり9kcalなので、生み出せるエネルギーの違いは普通の食事=252kcal、糖質制限=810kcal。

体重60kgの人のペースに変換したら(糖質を全く使わず、脂肪だけで走る場合の速度)、時速4.2kmと時速13.5kmの違いになる。

この脂肪だけで生み出せるエネルギーの違いがレース後半の失速をどれだけ抑えられるかに効いてくる!

つまり、糖質制限で脂質代謝が一気に向上した私は、失速するタイミングも遅くなるし、失速してもその程度が抑えられるということになります。

まさに私が空腹60km走で体感したことと一致しました。

「凄いことに気づいたかもしれない!」と私は胸が躍りました。

当時は糖質制限に懐疑的な声も多く、私自身も半信半疑のまま走り続けていました。

それでも、体が変わっていく実感が確かにあったので、結果が出るまで続けることができました。

糖質制限を始めて約1年後、神宮外苑24時間走で255km(2018年世界10位)、当時のセカンドベストの記録を出しました。

世界選手権辞退から始まった私の冒険は、こうして1つのハッピーエンドで終われたのでした。


今の私は糖質制限はしていません。子供が生まれて家族との食事をより自由にしたくなったことや、遅延型フードアレルギーで乳製品やナッツが問題になったこともあり、自分の体質や状況にあわせて柔軟に方法を変えてきたからです。

ただ、「脂質代謝は実は凄い」という学びは私の中にずっと残っていて、トレーニング計画や食事法・サプリにはその哲学が反映され続けています。

今現在の取り組みとしては

  • トレーニングは基本的に空腹ランニング
  • 毎日18時間くらいの絶食時間をとる間欠的ファスティング
  • 脂質代謝に重要な成分の意識的な摂取(Catalyst Cardio Performance)

がそれにあたります。

以前は「小谷さんみたいに糖質制限までは自分にはできない」と言っていたお客様も、上記のような簡易的なアプローチなら実行でき、成果を上げている方が続々と生まれています。

「自分も変わってみたい」そう感じた方は、ぜひできることから少しずつ試してみてください。

間欠的ファスティング(まずは普段より絶食時間を1~2時間増やしてみるところから)でも、空腹ランニングでも、何か一つから始めるだけで、体の変化に気づく瞬間が来るかもしれません。

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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