トレーニング・練習

心拍ゾーン3は非効率? コーチたちの意見が分かれるジョグペースの話

2026年3月21日

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

あなたは、普段のジョギングはどれくらいの強度で走っていますか?

普段の練習の一番多くを占めているであろうジョギング。
実はそのジョギングもペースによって効果が変わってくるということをご存じでしょうか?

今日はジョギングの中でも速い方のペースである「心拍ゾーン3」の練習について深掘りしていきたいと思います。

私も使用しているランニングウォッチのメーカー(Polar)の説明によると、心拍ゾーン3(モデレート)は最大心拍数の70〜80%に相当する、ややきついと感じる有酸素運動の領域です。

会話は可能ですが、長続きはしない程度の中強度で、主に心肺機能の強化や持久力の向上、血液循環の改善に効果的とされています。

※メーカーの種類によって多少、ゾーン3の計算方法が異なりますが、概ね同じくらいと考えて良いでしょう

「楽に走れるペース」が1か月半で底上げされた話

この心拍ゾーン3が私のトレーニングで果たす役割について、最初に気づいたのは2012年の神宮外苑24時間チャレンジに向けたトレーニングをしていたときでした。

それ以前の私はウルトラの練習といったら走り込み、走行距離のみを重視していて、ゾーン2でもっぱら走っていました。

しかし、2012年の神宮外苑に向けて私は最後の1か月半くらいは日常のジョギングを「ゆっくり楽に」から「楽に速く」という感覚へシフトしてみました。

すると、最初は楽に走ると5:00/kmくらいだったジョギングが、1か月半経つと4:45/kmが普通という感覚に変わったのでした。

最初は動きにぎこちなさや力みを感じていた4:45/kmですが、繰り返し走っているうちにその動作に体が慣れてきたのです。

この「楽に走れるペースの底上げ」は大きな効果を生み、24時間走の自己ベストがその1年で228km→256kmと大幅に向上し、夢みていた日本代表に内定することができたのでした。

夢をつかみ2013年の世界選手権へ(後列、左3人目が私)

ゾーン3を巡る論争

一方で、このゾーン3のトレーニングの効率性については、さまざまな意見があります。

代表的なものが『ポラライズドトレーニング』という考え方です。

これはノルウェーの研究者スティーブン・サイラー博士らが提唱したもので、トレーニング強度を「低強度(ゾーン1〜2)」と「高強度(ゾーン4〜5)」の二極に集中させ、中間の強度をなるべく避けるという方法論です。

総トレーニング量のおよそ80%を低強度、20%を高強度に配分するのが基本的な考え方で、エリートアスリートの分析に基づいています。

この考え方においてゾーン3は、「疲れるわりに効果が中途半端」として敬遠されます。
ゾーン2と比べてボリュームをこなしにくく疲れも残りやすい一方、LT値などに十分な刺激が得られるほど強度が高くもない。

こうした理由から、ゾーン3は中途半端なトレーニングであり、「ジャンクマイル」と呼ばれることすらあります。

ゾーン3を重視する立場

一方で、ゾーン3に違った見方をしている人たちもいます。

一部のランナー(特にサブ3くらいのレベルの高い層)の中では、高速ジョグといわれる速いジョグは人気があります。

このレベルのランナーの中には、逆におそすぎるジョグ(LSDなど)は非効率と考える方もいます。(もちろん全員がそう考えている訳では無く、サブ3ランナーでもLSDやスロージョグを重視している人はいます)

また、著名なウルトラマラソンコーチであるJASON KOOPは著書『Training Essentials for Ultrarunning』の中で、心拍ゾーン3の練習を「Steady State Run(SSR)」と呼んでウルトラマラソンのトレーニングで重視しています。

その内容を要約すると、

「SSRとは乳酸閾値(LT)を超えない範囲で、通常の有酸素ペースより速い強度を維持するトレーニングです。

より多くの乳酸を生成しそれを処理することで、より強い有酸素エンジンの発達に重要な役割を果たします。1回のワークアウトで合計30分〜2時間を目安に行います」

とされています。

私個人の考えと使い方

私個人としても、心拍ゾーン3はウルトラマラソンのベースであるレースペースの向上(楽に走れるジョギングのペースの底上げ)につながる重要なトレーニングと考えています。

トレーニングの推移でいうと、ウルトラの大会の1か月〜1か月半くらい前まではゾーン2のボリュームを重視し、それ以後はゾーン3の比率を少し増やしてジョグペースを向上させていくイメージです。

ずっとゾーン2の練習だけしているときよりも、最後の仕上げにゾーン3を入れたときの方が、レースペースを上げられて結果もついてくることが多かったです。

ただし、一点注意があります。

ゾーン3はそれなりに負荷が高く、ゾーン2の基礎がしっかりできていないと安定して継続するのが難しく(途中で疲労が気になってくる)、それが週間走行距離の低下という形で現れて走力向上に思うようにつながらないことがあります。

心拍ゾーン2でしっかりボリュームを増やして基礎を築き、その上にもう少し質の高い基礎を重ねる、という順序が大切です。

フルマラソンの文脈においては、サブ3クラスの実力者に高速ジョグが人気であることからも、基礎のしっかりした人がゾーン3の恩恵を受けやすいのかなと直感しています。

サブ3クラスで、市民ランナーのため時間が制限されているケースなどではLSDでは負荷が少なすぎる&時間効率が悪いとなってしまうのかもしれません。

直感的にはフルを3:15切るくらいのレベルからゾーン3を試す価値がより大きくなってくるように感じています。

ウルトラマラソン目標であれば、レベルに関係なく大会直前にゾーン3を導入するのは価値があると考えています。

ゾーン3とリカバリー

心拍ゾーン3は主観的にはそんなにキツイものではありませんが、肉体においては

  • 体の炎症レベルが上がる
  • 活性酸素系ダメージが増える

ことが分かっています。

十分な睡眠はもちろん、栄養面においては抗酸化・抗炎症系の成分をより意識的に摂取してリカバリーを促すことが大切になってくるでしょう。

Catalyst Recoveryに含まれる水素、ビタミン群は抗酸化・抗炎症の作用が知られており、栄養面のサポートにおすすめです。

ゾーン3をはじめ、負荷の高い練習のケアにおすすめのCatalyst Recovery

一言にジョギングといっても、そのペースには幅があり、効果にも違いがあります。
ぜひその違いを理解して、トレーニング計画に意図的な変化を加えてみてください。

まだゾーン3であまり走ったことが無いという方は、試しに何度か走ってみることもおすすめです。
マンネリを予防でき、刺激が変化するので何か手ごたえをつかめるかもしれませんよ。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

-トレーニング・練習