トレーニング・練習

心肺機能が過去最高になった話。心拍ゾーンと練習量の不思議

2026年8月29日

こんにちは。
ランニングショップHolosの小谷です。

「スピード練習はしているけど、なかなか心肺機能が伸びない」
「フルマラソンの記録のために5kmや10kmのスピードが課題だ」
「昔と比べて10kmやハーフのスピードが落ちてきた」

今日のブログはそんな方々のために書きました。

先日、2年前に書いたブログを偶然読み直していました。

『月間走行距離と10kmタイムの関係から練習を考える』と題したその記事では、以下のようなことが書かれていました。


今日は成長の頭打ちを打破するヒントを「月間走行距離と10kmのタイムのデータ」から検討してみたいと思います。

上の表はセミナー受講生のアンケートから抽出した最近の月間走行距離と10kmタイム(現状の予測)のデータです。

例えば、月間走行距離が150~199kmの人たちのうち、40分~42分29秒の人は21%、42分30秒~44分59秒の人は14%いたということを表しています。

さて、もしあなたが今よりも10kmのタイムを伸ばしたいと考えたとしたら、どのような練習をするでしょうか?

現状の練習のままでは頭打ちしていると感じているなら、今の練習から何かしらの変化をつけると思います。それは、どのような変化でしょうか?

上のデータを見て気づくことは、当たり前かもしれませんが、月間走行距離が多いほど10kmのタイムも速い傾向にあるということです。

10kmの記録を高めようとしたら、多くの人が「インターバル走のようなスピード練習をもっと増やさないと」と考えると思います。

心肺機能の向上には呼吸の上がるような練習をすることも大事というのは事実だと思います。
しかし、同時に以下のことも考える余地があります。

  • 月間走行距離を伸ばしていくことでも心肺機能を高めることができる。
  • 上記のデータに基づけば、月間300~399kmまでは練習量を増やしていくメリットが顕著に現れやすい
  • 人によっては、スピード練習のやり方を変えるよりも、単純に練習量を増やす方が簡単に心肺機能を高めることができる。

練習の質も大事だけど、シンプルに練習に投資する時間を増やしてみる方が簡単に記録を伸ばすことができるという内容でした。

こんなことを書くと「いやいや、忙しくてこれ以上練習時間を増やすなんて無理だから」と怒られてしまうかもしれません。
ただ、もう少しだけお付き合いください。

次に、これは今週SNSで投稿したスロージョギングに関するものです。


【心拍ゾーン1|超ゆっくりでも量を走れば速くなる?】
2023年10月、練習に行き詰まりを感じていた私は成長のためのヒントを探していました。

そんなとき、スロージョギングに関する記事が目に留まりました。スロージョギングの華々しい成功談と科学的な効果に関する内容でした。

記事を読んだ私にある疑問が浮かびました。

「ゆっくり走れば速くなると言うけど、実際どれくらい遅くても効果がきちんとあるのだろう?」

興味を持った私は4か月間、心拍ゾーン1を中心に練習してみました。

ゾーン1の練習は、最初は「遅すぎて罪悪感を感じる」ほどでした。
「時間を浪費しているのではないか」と焦りを感じることもあります。

でも、好奇心が勝って続けることができました。

次第に驚くべき変化が現れました。

同じペースをより低い心拍数で走れるようになってきたのです。

ポラールの時計のランニングインデックス(有酸素運動能力の指標)はみるみる上昇し、4か月継続した頃には過去最高を示しました。

とはいえ、心拍ゾーン1は魔法の練習ではないと思っています。

まず練習により多くの時間を投資する必要があります。

生活を効率化し、時には何かを犠牲にすることも求められました。

逆に時間を投資する覚悟さえできれば、ゆっくり走るので疲れは溜まりにくく、練習をより長くしていくこと自体は難しくありませんでした。


この通り、私個人の経験としても量を増やすことで走力を高めることができました。

スポーツ科学的にみても、心肺機能の向上には練習の量が重要な役割を果たすという指摘があります。

私は量が大事と知っていながら、それを実践できず失敗してしまった時期が19年間の中で何度かありました。

例えば、2021~2022年ごろは、初めての子育てに苦心し
「短い時間で効率よく」
「60分の練習内でできるだけ多く走ろう(ペースが上がる)」
というようなことばかり考えていました。

今になって当時のデータを見てみると、心拍数ゾーン3~5の強度の高い練習の割合は高いですが、ランニングインデックス(ポラールの心肺機能の指標)は低迷していました。

だからといって、当時の自分に「育児の時間を減らしてもっと練習時間を増やせ」というのは間違っていると思います。
家庭や仕事、社会的な役割などとのバランスがとれなくなってしまっては本末転倒です。

ただ、努力の方向性に関しては思うことがあります。

妻とのコミュニケーションをもっと上手にして、夫婦円満な形で練習時間をもう少し増やしやすくする努力はできなかったかとか(協力すれば、夫婦ともに使える時間を増やせたと思う)。

家事や仕事など当たり前になっていた習慣を見直して時間を増やす努力は十分だったかとか。

当時の私もそうでしたが、こんな話をすると「時間がないから練習量を増やすなんて無理」と感じる方もいらっしゃると思います。

ここからは私自身の主観的な経験談になりますが、ペースをゆっくりにすることで、むしろ「時間が生まれる」ような感覚を持ったことがあります。

振り返ってみると、ペースの速い練習をしていた頃は、疲労のせいか、無意識のうちに走りに行く時間が遅れたり、思ったより早く切り上げて帰ってきてしまったりすることがありました。
朝練のときに布団の中でズルズルと時間を潰してしまい、練習時間が5分、10分と短くなる。

逆に心拍ゾーン1~2の練習が多いときは、ちょっと時間が生まれそうなときに「急いでこの作業を終わらせて、ちょっとだけでも体を動かそう」と思えるのでした。

なので「時間がない」と感じている方ほど、一度試していただきたいことがあります。

ひとまず騙されたと思って、いつもよりゆっくりペースで走ってみてください。それによって、「もっと走れる余裕」が生まれるかどうかを観察してみるのです。

これは私個人の経験に基づく感覚なので、全ての方に当てはまる保証があるわけではありません。
ただ、もし同じような変化を感じられたなら、それは練習量を増やすための、思いがけない突破口になるかもしれません。

さて、ここまでの内容を踏まえて、改めて考えてみて欲しいことがあります。

もっと走力を高めて記録を目指していくことを楽しみたいと思ったとき、練習の質と量をどう改善していく選択肢があるでしょうか?

もちろん、質と量は「どちらか一方」というような二元論的な話ではなく、トレーニングのプロセスにおいて適切に変えていくことが大切です。

今日のブログはそのバランスのとり方について新しい視点を提供できればと思いながら書かせていただきました。

最後に実践的なアドバイスとして9月からの練習プランの具体例を紹介したいと思います。

目標レースや現状によって最適なプランは変わりますが、今回の内容を踏まえたサンプルとして参考にしていただければと思います。

11~1月頃のフルマラソンを目標に9月から基礎をしっかり作っていくプラン

9月~10月中旬の方針

  • 心拍ゾーン2の下の方を目安にした「とても楽」なジョギングを全練習時間の85~90%で実施
  • 週間の有酸素運動の時間を最重視して量を走る(この6週間くらいで、疲れを溜めこまずに安定的に継続できる週間運動時間をいかに伸ばせるかという視点で練習する)
  • 全練習時間の10~15%は心拍ゾーン4を目安にしたペース走(あるいは、途中で数分レストのジョギングを挟んだクルーズインターバル)をする
  • この時期は、栄養的には糖質の比率を少しだけ減らし、脂質やタンパク質の比率を増やす意識にすると脂質代謝が高まって良い(主食を10~15%減らして、自然な食欲に任せておかずを増やすイメージです)。
    サプリメントは脂質代謝系がこの時期の目的に合致していて相性が良いでしょう(Catalystなら、Catalyst Cardio Performanceがおすすめです)。

→有酸素運動の基礎が身につき、同じペースで走ったときの心拍数が下がっていくはず。
ただし、遅いペースにしか慣れていないため、心拍ゾーン3~5で走ったときの主観的なキツさはかえって上がってしまう可能性あり(10月下旬からのフェーズで克服するのでOK)。

10月下旬~12月の方針

  • 週間走行距離(時間から距離に視点を変える)を維持しながら、マラソンペースや心拍ゾーン4の比率を増やしていく(時間にして低強度=80~85%、中高強度=15~20%を目安に)
  • ジョギングは相変わらず心拍ゾーン2を超えないように(ゾーン2の下の方だけでなく、上の方まで行っても良い)
  • マラソンペースに近いペースで20~25km走のようなフルマラソンに実践的な練習も少しずつ増やしていく

→9月から作った広大な基礎の上にマラソンに専門的な能力を積み上げていく。基礎があることでスピード練習の効果が増し、より速いペースでの余裕度も高まる。失速しにくい強い脚も準備ができている。


以上、9月からの練習方針のサンプルでした。ぜひ来週は、いつもより少しだけ楽なペースで、いつもより少しだけ長く走ってみる。まずはそこから始めてみませんか?

今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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