小谷のブログ

糖質制限とウルトラマラソン|継続13か月目の報告書

2018年11月18日

先日走った神宮外苑24時間走は255km(3位)と大満足な結果でした。
13回目にして24時間走を最も楽に走りきることができたので、そのために何をしてきたかをこれからブログにまとめていきます。
今回は普段の食事=糖質制限についてです。

私は2017年の10月から(ウルトラ)マラソンのパフォーマンスアップのために糖質制限の食事を続けてきました。

普通は「なぜ糖質制限でウルトラが速くなるのか?」と思われることでしょう。

理論的にはウルトラを走り続けるための膨大なエネルギーを糖質(体内の貯蔵量が少ない)でなく、脂肪(貯蔵量十分)由来に大きくシフトできるからです。
根拠としている論文はこちら。
Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners

ちなみにこの「糖質制限に適応したランナーなら」という前提条件が従来の研究でほとんどされていないのが新しさのポイントです。

実践者的にはスパルタスロン優勝、24時間走世界チャンピオンの石川佳彦選手がいます。
先日こちらの記事でも紹介しましたが、石川選手は糖質制限によって「脂肪を使えるようになった感覚」が自信につながっているそうです。

脂肪を使える自信がスパルタスロン優勝に繋がった

石川選手の影響で私は2017年10月から中立的な立場で糖質制限にチャレンジしました。
継続3か月目までの経緯をまとめたブログがこちらです。

糖質制限をウルトラマラソンに活かせるか?|3ヶ月間で起きた変化の報告

  • 1か月目
    食生活として慣れて、足は重いが月間200kmくらいの練習は消化できた。
  • 2か月目
    スピード練習ができるようになった。
  • 3か月目
    朝食抜き50km無補給練習ができるように→普通の食事をしていたころは考えられない
    月間500kmの練習も消化できるほど適応が進んだ
    ただし、大会で結果は残せていないので諸手を挙げて賛成とは言いにくい

という感じでした。

適応が進んでからも私の中であった課題は
「日常での糖質制限の仕方は慣れてきたけど、レース中の補給はどうしたら良いの?」
ということでした。

補給が少なすぎては台湾の24時間走のように失敗してしまいます。
多すぎては胃腸障害のリスクが高まり、糖質制限の恩恵を享受できません。
↓補給が少なすぎて失敗したときの報告書

台北24時間走の学び|糖質補給はどこまで減らせるのか?

台湾での失敗後、6日間走や練習、川越の12時間走を経験して糖質補給の適量を模索。
そして先日の神宮外苑24時間走で1つの参考値にたどり着きました。

1時間あたり30~35gの糖質補給です。
(30歳男性、体重54kg)

この量で多すぎず、少なすぎずという感覚でした。

  • レース中の低血糖やガス欠感覚がない
    (ガス欠感はありませんが、それとは別の筋疲労で当然脚は重くなっていきました。
    それでも楽に走って200km以降も5:50/kmくらいは出ていたので私の実力としては十分に動いていたと判断しています。)
  • 胃腸障害が全くなく、内臓的な問題、気持ち悪さなどが生じなかった。
    これ、200km超級のウルトラやっている人ならその凄さがわかると思います。
    もちろん胃薬とかも不要です。
  • レース後は異常な食欲はなく、普通に脂っこいものをおいしく食べられて、内臓疲労もずっと少ないです。
    例年のレース後は体が食べ物を欲している感覚はあるが、いざ口に運ぶと食べられないんです。
    そして異常な食欲が1週間くらい続きます。

普通の食事をしていたころの私は24時間走で250km超を目指していたころは60~70g/hrの糖質補給を目指して人一倍食べていました。
(実際には途中で気持ち悪くなってそこまで補給が継続できません)
その補給でも成果は出ていましたが、食べることの苦しさもありました。

なにせウルトラの補給セミナーをすると経験者から必ずされる質問といえば
「食べることの重要性はわかっています。
知りたいのはどうしたら内臓トラブルなく食べ続けられるのかということです」
というものだからです。

みなさん内臓トラブルなく食べ続けられるように食べ物の種類、温度、量とタイミングなど試行錯誤しています。

もし仮に昔の私が「今の私がどんな感覚で24時間走を走っていたのか」を知ったら、「こんな相手に勝つの無理じゃん」と思ったでしょう。
私のそこそこ確信度の高い直観ですが、練習と精神力(心のマネジメント)が同じなら、普通の食事の人は糖質制限に適応した人にはたぶん勝てません。
これは「糖質制限による脂肪利用能力の向上は練習のそれを大きく上回る」ということからも正しそうです。
(『Metabolic characteristics of keto-adapted ultra-endurance runners』の呼吸商のデータを見てみてください、とても練習では達成できないでしょう)

話をまとめに入ります。
中立的立場で始めた(厳密にはやや疑っていた)糖質制限ですが、適応が進むにつれ徐々に賛成に考えがシフトしていきました。
ただ大会中の補給方法がわからず、結果も出せていなかったのであまり強く賛成とは言えない日々が続いていました。

13か月目でそれなりに結果も出せたところで、私のスタンス、仮説をアップデートします。

13か月目の仮説

糖質制限は24時間走(たぶん160km~、競技時間16時間~のウルトラ)のパフォーマンスアップに有効だと思います

有効さの程度も「効いている気がする」レベルの食事法とはわけが違います。
ちょっと大雑把な推測を許していただけるなら、私の肌感覚的には月間走行距離が300kmから700kmになったくらいのインパクトがあります。

今後も私は自分の競技力向上のためにも糖質制限を継続して探求していきたいと思っています。
また24時間走には有効と思いましたが、これが「100kmなら? アイアンマンなら?」という問いにも関心があります。

良き理論はその適用範囲や限界についてよく理解した謙虚なものだと私は思います。
(例えば「糖質制限は誰にとっても良い」というような拡大解釈は危険です。
最近はそういった食事法や栄養素、トレーニング方法の情報が多いことに個人的には抵抗を感じています)

やればやるほど考えることがつきない。
これもウルトラマラソンの魅力だと思います。

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