ウルトラマラソン

夏のウルトラマラソン|暑さ対策と補給の注意点

この記事では夏や暑い日のウルトラマラソン(あるいはロング練習)を走るにあたって私が考えていることを整理していこうと思います。
特に補給と暑さ対策に関することがメインです。

最大注意は脱水症状と低ナトリウム血症

低ナトリウム血症とは。症状と発生のメカニズム。

最も注意していることは脱水症状と低ナトリウム血症です。

低ナトリウム血症とは塩分不足のこと。

暑い日は発汗量が増えるので汗と一緒に塩分が体外に排出されて塩分不足になりやすくなります。

暑いウルトラで失敗した人のエピソードを聞くと、90%以上が水分補給と塩分(より厳密には電解質)補給が上手くいかなかったケースです。
*電解質:塩分(ナトリウム)以外にもカリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど血液中に溶けている微量な物質のこと

低ナトリウム血症の症状

  • 運動能力の障害 ← 脚が重くなる、体が動かなくなるという感覚とも
  • 手足のむくみ ← これが意外とヒントになって塩分不足に気づいたという人も
  • めまい
  • 嘔気、嘔吐
  • 頭痛
  • 意識が遠のく
  • 怒りっぽくなる、混乱する
  • けいれん
  • 尿が出なくなる
  • 眠気 ← 徹夜を含む超ロングで眠気に悩んでいる人が実は低ナトリウム血症が原因ということもある

低ナトリウム血症になるメカニズムはこうです。

  1. 暑さ+運動で体が熱くなると体温を下げるために汗をかく
  2. 汗と一緒に体内の塩分が排出される
  3. 飲み物+食べ物で十分な量の塩分が補給できないと体内の塩分が減り、低ナトリウム血症となる

よって、エイドでの給水を真水ではなくスポーツドリンクにしたり、塩分の豊富な食べ物を摂取することが大切です。

低ナトリウム血症の予防には経口補水パウダーがおすすめ

私個人としては塩分補給に干し梅や経口補水パウダー(ダブルエイドエブリサポート)という商品を愛用しています。
こちらの動画で紹介しています。




電解質パウダーを使うときは気づかないうちに飲む頻度が減ってしまうという人もいます。

そういう人はこちらの記事で紹介したように「一定濃度で作って、のどの渇きに応じて飲む」という方法だと低ナトリウム血症のリスクを軽減できます。

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ちなみに「塩分補給に良いですよ!」とうたったサプリは色々ありますが、実は成分を見てみると塩分量が少ない商品もあります。

塩分補給の目安は汗1Lに対して2.3~3.4gと考えられていますが、おそらく多くの人は不足傾向にあります。

こちらの記事で実際の喪失量と認識のギャップがあったというエピソードを紹介していますのでご参考にどうぞ。

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*上記記事でも紹介していますが、サプリを使わないなら
「干し梅のような塩辛いもの+100%オレンジ(orトマト)ジュース」
の組み合わせがおすすめです。

水をかぶると低ナトリウム血症のリスクを軽減できる

塩分補給をする以外にも、塩分排出を少なくすることも役立ちます。

塩分が体外に出てしまうのは
気温+運動の発熱で体温が上がる→汗で体温を下げようとする→塩分排出
というのが原因でした。

よって「外から水をかける」ことで自分の汗に頼らずに体温を下げることも役立ちます。

エイドで水をかぶれるときは首、腕、脚などを濡らすと楽になります。
(脚を濡らすときにシューズまで濡らしてマメが出来ないように注意)

また氷などを手に持ったり、首筋や額にあてることも効果的です。

エネルギー補給の失敗リスクを軽減する

こちらの記事でも書きましたが、暑い大会では内臓の機能が低下して

「エネルギー補給ができずガス欠になってしまう」
「下痢、腹痛に悩まされる」

ということが起きやすくなります。

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よって

  • いかに内臓の機能低下を抑えるか
  • 胃腸障害を予防しながら食べ続けられるか

が勝負になってきます。

まずは暑さに限らず一般的な胃腸障害対策を徹底する

まず暑い時期に限らず一般的な胃腸障害対策は役に立つので実行します。
こちらの記事でまとめています。

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あと、こちらの電子書籍(pdf)ではより詳細にまとめています。

『ウルトラマラソン胃腸障害対策ガイド~吐き気や胃のムカムカを予防して食べ続けるための13のヒント~』

体を冷やす、無理のないペース、冷たいものを意識

上記の一般的な対策を徹底したうえで、暑い時期のレースでは

  • 水をかぶったり、氷を持ったりして体を外から冷やす
  • 自制心を働かせて無理のないペースで走る
  • (お腹をこわさない程度に)冷たいものを食べる、飲む
  • 固形物だけでなく、ドリンクからのエネルギー補給の比率を高める(100%オレンジジュースは電解質の観点でも良い)

を意識しています。

食べるものとしては、栄養成分がうんぬんというよりは、そのときどきで自分が「食べたい」と主観的に思えるものを優先しています。

これは精神的なリフレッシュ効果の恩恵が大きいと実感しているからです。
(栄養機能が優れていると言われているサプリよりも、これ食べたら元気出るというものを選んでいます)

例えば夏のLSDでコンビニによったときはアイス、そうめん、冷やし中華とかを私は好んで選んでいましたね。

ウェアは涼しさ重視(サポートタイツは暑さに注意)

ランニングのウェアは涼しいと主観的に感じるものを優先しています。
個人的にはノースフェイスのフライトシリーズが好きです。

私はタイツはそもそも使っていないのですが、人によっては「タイツのサポートがないと不安だから」という理由で多少暑さを我慢してもタイツを使う方もいらっしゃいます。

納得した上でなら良いと思いますが、意外と涼しさ重視でタイツでない方が暑い時期は快適というケースもありますので、練習などで試してみることをおすすめしています。

日焼止めやサングラス、帽子で日差し対策をする

日焼けをすると、それだけで疲れてしまいます。

これは日焼けによって活性酸素という物質が生じ、それが細胞にダメージを与えるから(そして、そのダメージから修復する反応が必要だから)と考えられています。

よって、日焼のダメージを減らすために日焼け止め、帽子、サングラスなどあると良いでしょう。

ウルトラやLSDなら日焼止めは落ちにくいスポーツ用が良いでしょう。

私は過去に『アグレッシブデザイン』『AthleteX(アスリートエックス)』を使ったことがあります。
どちらも24時間~でもしっかり機能してくれたのでおすすめです。

サングラスは視覚効果なのか、つけただけで涼しくなったように個人的には感じます。
そして、その感覚が練習を集中するのに思った以上に効果がありました。

練習の段階で暑さ慣れをしておく

人の体は暑さに慣れるために約2週間ほど時間がかかります。

暑くなり始めた最初の時期は、暑さにやられて少し走っただけでバテてしまうこともあるでしょう。

ただ、暑い環境でも少しずつ体を動かすことで暑熱順化という反応が起こります。

汗が出やすくなって体温をより効率的に下げやすくなったり、体の表面付近の血管が発達したり(熱を発散しやすくなる)という適応が進んでいきます。

私は暑くなってきたら「最初の2週間は暑さに慣れるための準備期間」と思うようにしています。
「今こうして暑い中頑張ることで、これからの夏が走れるようになるぞ」とポジティブにとらえています。

暑さに慣れてきたら涼しい時間帯を選んで質の高い練習を継続した方が良いと思いますが、大会が暑さ勝負でもあるなら事前に体を慣らしておく意識を持つようにすると良いと思います。

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