ウルトラマラソン

ウルトラマラソンの練習方法【井上選手対談その2】

2015年7月15日

ウルトラマラソンの練習方法

24時間走世界選手権優勝、台湾1周1100kmレース優勝という成績を持つ井上真悟選手。
今回は井上氏にウルトラマラソンの魅力、練習方法、大会攻略方法などについて伺いました。

第2部のメインテーマはウルトラマラソンの練習方法についてです(全4部)。
ウルトラマラソンの魅力【井上選手対談その1】
ウルトラマラソンの練習方法【井上選手対談その2】
ウルトラマラソン大会攻略方法【井上選手対談その3】
疲労回復・裸足ラン・トレーニング本【井上選手対談その4】

ウルトラマラソンの練習方法について伺いたいと思います。
フルマラソンを完走した方がウルトラマラソンにシフトする場合、練習にはどのような違いが出てきますか?
基本的には同じ考え方で良いと思います。
フルの場合でもまず最初に土台となる体力をつくり、余裕が出来たらちょっと速いペースの練習で土台をスピードに活かしていくという考え方が基本になっていくと思います。

フルマラソンを完走してこれからウルトラマラソンを目指す方も基本的にはこの考え方をベースにして良いと思います。

トレーニングはある程度の段階になると一つ一つの相乗効果を狙うと良いでしょう。
例えばジョギングできる時間が40分、1時間、2時間と増えていったとしましょう。
そうなったら10kmだけいつもよりちょっと速いペースで走る練習とか、坂道をダッシュする練習とか、2kmくらいをハイペースで走る練習とかも取り入れると、普通のジョギング2時間がすごく楽に感じられるようになったりします。

ウルトラマラソンの場合だと2kmを速く走るスピードの練習というよりは10kmの速く走る練習を15kmに伸ばすとか、ジョギングそのもののペースを上げるとか土台の部分の比重を多めにすると結果に繋がりやすいのかなと思います。

土台の比重を増やすとは、つまりジョギングの距離を伸ばすとか、スピード練習にしても短いインターバル走よりも長めのペース走に重きを置くというイメージでしょうか?
そうですね。
少し細かく分析して、トレーニングは何を狙っていくと一番結果がでるかというところを考えると良いでしょう。

長いジョギングをすると毛細血管が発達し酸素の運搬能力が高まります。
長い時間のランニングで筋肉のエネルギーが枯渇すると、グリコーゲンの貯蔵量を増やす事が出来ます。
一方でスピード練習や坂道練習は心肺機能の向上に役立ちます。

ウルトラマラソンの場合だと心肺機能が必要ない訳ではないですが、グリコーゲン貯蔵量ですとか毛細血管を発達させることの方がレースに活かせるのではないかと思います。

なるほど。
当然レベルにもよってくるとは思いますが、多くの人にとっては100kmは長いのでその距離を後半もあまり失速せずに走りきれるための練習をした方が結果に結びつきやすいということですね。
そうですね。
あと、逆に初めて100kmに挑戦する方は気をつけなければいけないんですが、すごく最大酸素摂取量(酸素を取り込む能力)が高い人はオーバーペースになりやすいんじゃないかなと思うんですね。

経験があれば心肺機能に余裕があっても、とばさずにペースをコントロールできると思うんですけど、初めての人は分からないので前半速く入りすぎて後半もたないケースもありますね。
経験豊かな年配の方というのは最大酸素摂取量は高くないのですが、きちんとペースをコントロールできるので完走率も高いと思うんですよ。

なるほど。
何か100kmを完走するのに目安となる数値はありますか?
例えばフルマラソンのタイムではどれくらいとか。
そうですね、さきほどサハラ砂漠マラソンはフルを5時間完走で挑戦できると言いましたが、100kmの国内レースだと全ての大会が制限時間がゆるいわけではないので、フルマラソンだと4時間半もっと厳しめにいうと4時間をきれたら十分100kmマラソンにシフトしても良いと思います。

昔どこかの情報でフルマラソンの3倍のタイムが100kmに近いと聞いた事があります。
フルマラソン4時間なら4×3=12時間で、制限時間の厳しめな13時間の大会でも余裕があるという計算になりますね。
フルマラソンのタイムの目安は分かりましたが、他に月間走行距離に関する目安などはありますか?
ウルトラマラソンを楽しくしっかり完走を狙うために僕がすすめているのは月間300kmくらいですね。
これくらい走っておくと練習の過程でもウルトラに必要なメンタル等も鍛えられると思います。

その300kmというのは1回できれば良いでしょうか?
それとも何ヶ月もコンスタントにこなしたい練習量なのでしょうか?
そうですね、ウルトラを初めてされる方にとっては2ヶ月くらいそれが続けられると良いんじゃないかなと思います。
ただ、月間走行距離って多くの方がトレーニングの目安にされると思うんですが、結構1ヶ月をくくりとするのって漠然としていると思うんですね。

僕はもうちょっと細かく見て1週間毎の比較をした方が良いと思います。
さっきは月間走行距離だったので300kmと言いましたが、もし本気で100kmをきちんと完走したいと思うのであれば、毎週でなくて良いので7日間で100km合計で走るというのにチャレンジして欲しいですね。
なんでかというと、ウルトラマラソンはフルマラソン以上に不確定要素が多くて日常で経験しないような炎症や内蔵疲労を起こす可能性があります。

未知の距離を走るからこそ未知のアクシデントが起こると思うんですね。
1週間という中で頑張って100kmを走るとある程度100kmという距離へのイメージができてきます。
多少追い込む事で自分の弱点に早く気付く事もできるかと思います。

僕なんかは内蔵が弱いので、それに早く気付けて、体幹トレーニングや胃腸薬を使わないといけないなと対策が打てるわけです。
ウルトラマラソンの対策として課題を見つけるためにも、毎週やる必要はないので1週だけでも7日で100kmにチャレンジすると良いと思います。

確かにそうですね。
分からない事から来る失敗というのはどうしてもありますから、練習の段階でできるだけでもそれを減らしておくというのは大事ですよね。
私も結構練習の段階で本番に似た苦しさとかを味わっておきたいタイプなので、その辺の方針は似ていますね。

ところで体幹トレーニングと内蔵の関係というのは初めて聞いたんですが、どういったことなのでしょう?
ランニングって身体が上下動するので、すごく内蔵も揺れると思うんですよ。
特に肋骨から骨盤にかけては背骨以外に骨がないじゃないですか。
つまり、筋肉を引き締めておかないと内蔵を固定できないんです。
だから身体の内側のインナーマッスルをしっかり鍛えておかないとブレやすくなってしまいます。
その揺れが内蔵へのダメージに繋がります。

ウルトラマラソンは食べながら行うスポーツですので、内蔵を守るという意味でも体幹トレーニングは非常に効果的だと思います。
もちろん、しっかりしたフォームで走るという意味でも体幹トレーニングは大事なのですが。

なるほど、私も体幹トレーニングは重視しているのですが、内蔵のケアという観点はありませんでした。
面白いですね!

第3部『ウルトラマラソンの大会攻略方法』へ続く

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